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一つのミスの重み実感。欧州でも存在感放つ高校選抜DF角田の糧に

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日本高校選抜の左SB角田涼太朗(前橋育英高→筑波大)。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[3.31 デュッセルドルフ国際ユース大会予選リーグ エバートン 1-1 日本高校選抜]

 これまで日本高校選抜の中で一際存在感を放ってきたDFは一瞬、間を置いてから言葉を絞り出した。「あれは自分のミスです」。0-0の後半15分、日本高校選抜の左SB角田涼太朗(前橋育英高→筑波大)は、攻撃を組み立て直すためにGKへバックパス。これをエバートンFWに狙われてインターセプトされると、対応したGK薄井覇斗(流通経済大柏高→流通経済大)のプレーがファウルと判定され、PKとなった。

 このPKをMFトム・スカリーに決められて0-1。その後、角田は自らのミスを取り戻そうと、鬼気迫るようなプレーを続ける。最終ラインでボール奪取する役割を果たしつつ、味方がボールを奪うとオーバーラップを繰り返す。DFのタイミングを外すドリブルで局面を打開し、左足パスを繰り出すDFにボールも集まっていた。

 21分には、CB生駒仁(鹿児島城西高→横浜FM)の好パスを起点とした攻撃から角田がハイサイドで前を向く。そして、左足パスをPA中央のFW飯島陸(前橋育英高→法政大)の足元へピタリと通す。決定的なシュートはGKに阻まれたものの、アーリークロスを多用するチームの中で角田は左サイドで反撃の中心になり続けていた。

 迎えた後半終了間際、日本高校選抜は右クロスをFW荒木駿太(長崎総科大附高→駒澤大)が頭で折り返す。中央にポジションを取っていた角田には合わなかったものの、その背後でフリーとなっていた右SB後藤田亘輝(前橋育英高→青山学院大)が劇的な同点ゴールを流し込んだ。これは角田の、そしてチームの執念が実ったゴールだった。

 狙いすましたインターセプトや迫力のある攻撃参加など、角田が好プレーを見せていたことは確か。それでも「どれだけいいプレーしても、あの一本あればダメなので」と角田は首を振る。悔やんでも悔やみきれないほどのプレー。それでも、前橋育英のCBとして同校にとって初の日本一へ導いた世代屈指のDFが、ミスを糧とし、それを取り戻すチャンスは十分にある。

 日本高校選抜で角田は当初、CBとして守備の中心となり続けていた。得意としているというFWに背負われてからの守備、カバーリングなどハイレベルなプレーを継続。加えて、大学生との練習試合で左SBとして起用されると、“圧倒的”という言葉が相応しいような動きで左サイドを攻略していた。

 平野直樹監督(履正社高)は今大会、その角田を左SBとして起用。CBとSBとでは守り方の違いがあるというが、スタンダール・リエージュとの初戦では素晴らしいカバーリングで決定的なピンチを阻止し、この日は再三の好守を見せていた生駒ら他のDF陣とともにほとんどチャンスを作らせなかった。そしてCBでもインターセプトからの攻め上がりを見せていたDFは、左SBとしてより自身の攻撃力を表現している。

 それでも、角田は個人として、チームとしてもより一つひとつのプレーにこだわっていかなければならないと感じている。「イージーなミスが多い。トラップひとつにしてもこだわってやらないといけない。特に下が悪いので気を遣ってやらないとせっかくチャンスも台無しになってしまう」。これは平野監督が「一つのトラップ、パスから集中すること」を求めていることにも繋がる部分。この日、それを実感した注目DFは過去から切り替え、残り2日間、目の前の試合に集中して必ずチームの勝利に貢献する。

(取材・文 吉田太郎)
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