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[プレミアリーグEAST]「大槻さんには感謝しかない」。諦めずに戦った浦和ユースがAT同点弾で市船とドロー

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後半アディショナルタイム、浦和レッズユースのゲーム主将CB白土大貴は執念のPK獲得にガッツポーズ

[4.21 高円宮杯プレミアリーグEAST第3節 市立船橋高 2-2 浦和ユース グラスポ]

 高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグEASTは21日、第3節を行った。市立船橋高(千葉)と1勝1敗の浦和レッズユース(埼玉)との一戦は、後半アディショナルタイムに浦和ユースが追いつき、2-2で引き分けた。

 浦和は21日、ユースチーム監督から暫定的にトップチームの監督を務めていた大槻毅氏のトップチームヘッドコーチ就任と、ユースチーム監督に上野優作新監督が就任することを発表した。同日に開催されたユースチームの市立船橋戦は先制しながらも逆転される苦しい展開。それでも、開幕から暫定的にユースチームの指揮を執っていた石栗建コーチが「(今年のチームは)大槻が作ってきたチームで、戦うというベースは彼が言い続けてきたこと。(きょうは)チームで戦うという雰囲気を全員で出してやっていた」と評したように、諦めずに気持ちを全面に出して戦い抜く“大槻イズム”を発揮した浦和がアウェーで勝ち点1をもぎ取った。

 30度近い気温ということもあってか、前半は互いに前線から相手にプレッシャーをかけるのではなく、しっかりと守りをセットして相手のポゼッション、縦パスに対応する展開だった。なかなか攻撃のテンポの上がらなかったが、その中でよりゴールに迫っていたのは市立船橋の方。攻撃のスイッチを入れた際にはより多くのクロスやシュートまで持ち込み、FW西堂久俊(3年)のドリブルシュートや、右の快足SB畑大雅(2年)のクロスからFW城定幹大(3年)が決定的なヘッドを放つなど浦和ゴールを脅かしていた。

 一方の浦和はボールサイドに人数をかける守備が機能。だが、攻撃については立ち上がりにプッシュした時間帯を除くと、ビルドアップの途中でミスが出るなどPAまでボールを運ぶ回数を増やせていなかった。それでも、前半32分に浦和が先制点を奪う。MF上野夏輝(3年)の右CKから中央のCB遠藤龍河(2年)が先制ヘッド。市立船橋もFW賀澤陽友(2年)のキープ力を活かして反撃したが、浦和がリードしたまま前半を折り返した。

 市立船橋は後半立ち上がり、城定とMF鈴木稀裕(3年)がDFラインと入れ替わる形で決定的なシュート。朝岡隆蔵監督が「後半は中盤で前を向きはじめて、サイドを深く崩せた」と説明する市立船橋は14分、MF大関克弥(3年)の左CKからファーサイドのCB岸本駿朔(3年)が豪快なヘディングシュートを決めて同点に追いつく。

 この後、市立船橋が10番MF井上怜(3年)、浦和も10番MF池高暢希(3年)を投入し、互いに勝ち越しを狙う。せめぎ合う時間が続く中、市立船橋が自分たちに流れを傾ける。縦への鋭い仕掛けを連発していた井上の左足シュートや、左サイドを突破したSB松尾勇佑(3年)のクロスに西堂が飛び込むなど決定機を作り出した市立船橋は31分、縦パスに反応した井上が一気に加速してPAへ侵入。ファウルで止められて獲得したPKを井上が左足で決めて市立船橋が逆転した。

 浦和は石栗コーチが「(悪い流れを)自分たちで受け流して、自分たちの(強みを出せる)流れに持っていければ良かった」と指摘していたが、悪い流れをなかなか変えられなかった浦和は追う展開になった。それでも2失点目の直後に怪我明けの187cmCB大桃伶音(3年)を前線に投入。敵陣で獲得したスローインから“ロングスロワー”遠藤が次々とゴール前にライナー性のボールを放り込む。市立船橋は耐えていたものの、浦和の迫力ある攻撃の前に慌てたクリアが続いてしまい、2次攻撃、3次攻撃を受けてしまっていた。

 そして47分、浦和は交代出場FW二見健太(3年)がPAから決定的なシュート。これは市立船橋DFの身を挺してのクリアに阻まれたが、右ゴールライン際でこぼれ球を拾った大桃が背後からファウルを受けてPKを獲得する。直後、キッカー・池高の右足シュートが決まるも、蹴る前にPAに入った選手がいたという判定で蹴り直し。それでも、池高が“2本目”のキックも決めて浦和が土壇場で引き分けに持ち込んだ。

 逆転されても心折れることなく、戦い抜いた浦和が執念のドロー。逆転勝ちした前節の清水ユース戦に続く貴重な勝ち点獲得だ。池高は「開幕までずっと大槻さんと一緒に積み上げてきて、積み上げてきたものは絶対に出そうということは言ってきていた」と語り、ゲーム主将を務めたCB白土大貴(3年)は「自分たちに戦うことを植え付けてくれたので、大槻さんには感謝しかないですし、これからは監督が(上野)優作さんになる。自分たちは最後の年なので、恩返しというか、大槻さんのためにとか誰かのためにやることが大事かなと思います。このリーグにいるからには強い気持ちで戦わないといけない。自分たちで何とか這い上がっていけたらいいと思っています」と口にした。今後は新体制に移るが、大型MF大城蛍(3年)がルヴァン杯でベンチ入りするなど、ユースの選手たちにとってトップチームが近い存在になっていることも確か。彼らは“浦和ユースらしく”戦う姿勢を表現し続けて結果を残し、上のステージに上がることを目指す。

(取材・文 吉田太郎)
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