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横浜FMユース破る番狂わせ!尚志が雨中の逆転勝利でプレミア昇格!!

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尚志高が8年ぶりとなるプレミアリーグ昇格を決めた

[12.16 プレミアリーグプレーオフ2回戦 尚志高 2-1 横浜FMユース 広島スタ]
 
 尚志が雨中の逆転勝利でプレミア昇格! 高校年代最高峰のリーグ戦、プレミアリーグ昇格を懸けた高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2018 プレーオフ2回戦が16日に行われ、プリンスリーグ東北優勝の尚志高(福島)とプリンスリーグ関東2位の横浜F・マリノスユース(神奈川)が激突。後半45分にU-17日本代表FW染野唯月(2年)が決めた決勝ヘッドによって尚志が2-1で逆転勝ちし、11年以来となるプレミアリーグ昇格を果たした。

 仲村浩二監督は「マリノスが9割9分勝つと思っていたと思う」と語り、主将のMF大川健(3年)も「誰に聞いても尚志が負けると言う人が絶対に多かったと思います」と認める。尚志は主力の2CBが怪我で、GKは出場停止。エース染野は2日前の1回戦で頭部を負傷して救急車で救急搬送され、出場が危ぶまれていた。そして、対戦相手はJユースカップ優勝チームで公式戦11連勝中の横浜FM。不利な条件が揃っていた。

 だが、「勝って見返したい」(大川)という気持ちを持って戦った尚志が、後半勝負に出て逆転勝ち。試合終了の笛が鳴ると、サブ組の選手たちがピッチへ飛び出し、選手、スタッフが歓喜の抱擁を繰り返していた。

 尚志はゲームプランがハマった。試合開始時は普段の4-4-2システムでスタートさせ、すぐに4-3-3へシフト。「中盤ダブルだと抑えられない」(仲村監督)と考え、前半は3ボランチで臨む策だったが、最初の並びを変えることで相手に警戒心を植え付けようとした。

 試合が始まると守備に重心を置き、相手にボールを支配されても気にしなかった。コンパクトさを維持して横浜FMのコンビネーションや突破に対応。それでも、横浜FMは注目FW津久井匠海(1年)やMF椿直起(3年、トップチーム昇格)がサイドに穴を開けてきていたが、尚志は最後の局面で先にボールを触って得点を許さない。

 横浜FMの椿にチーム一の身体能力を誇る右SB高橋海大(3年)を当てて対応した尚志は、突破力と得点力を兼ね備えた相手のキープレーヤーに十分な仕事をさせなかった。だが、前半28分、横浜FMが先制点を奪う。津久井が強引に中央突破してシュート。これは尚志GK鈴木康洋(3年)が止めたが、こぼれ球を拾ったMF榊原彗悟(3年)が右足ループシュートでゴールネットを揺らした。

 先制された後も前に出てこない尚志に対し、横浜FMはボールを圧倒的に支配。だが、雨中ということもあってか、横浜FMがペースアップしなかったことは尚志にとって幸いだった。仲村監督の「時間が味方してくれるよ」という声がけの通り、最少得点差のまま時間を経過させた尚志は後半開始から染野、MF加瀬直輝(3年)、MF吉田泰授(3年)の攻撃カード3枚を同時投入。布陣を4-4-2に戻して勝負に出た。

 前半から打って変わって前に出る尚志は、高い位置でのボール奪取が増加。染野の高さを活かした攻撃やハイプレスで横浜FMにプレッシャーをかける。迎えた15分、横浜FMは自陣でのボール回しで右サイドからGKへ出したバックパスがズレてオウンゴールに。幸運な形で追いついた尚志はこの後、横浜FMとの攻め合いを演じる。

 尚志は前線で起点となった染野と鋭い飛び出しを見せるMF坂下健将(3年)のコンビからチャンス。対する横浜FMはなかなかギアが上がらなかったが、それでもスルーパスやサイド攻撃から決定機を作り出す。だが、GK鈴木の好守などで凌いだ尚志は38分に“切り札”FW伊藤綾汰(3年)を投入。加瀬や伊藤がドリブルからシュートに持ち込む尚志に流れが傾いていく。

 そして45分、尚志は伊藤のシュートで獲得した左CKを加瀬が右足で入れる。これをニアの染野が打点の高い跳躍から、傷口に近い右側頭部でヘディングシュート。これがゴール右隅を破った。「自分がイメージしていた通りのヘディングシュートだったので理想通りという形でした」という染野の劇的な決勝ヘッド。このリードを守った尚志が番狂わせを演じ切り、プレミア参入を決めた。

 尚志の仲村監督が言い続けてきた「福島にプレミアリーグを」が実現する。11年のプレミアリーグ初参戦時には現日本代表のMF中島翔哉(当時東京Vユース)らが福島でプレー。指揮官は福島の子どもたちが再びトップレベルに触れ合う機会ができたことを喜んだ。そして尚志はセカンドチームのプリンスリーグ東北、サードチームの福島県1部リーグ昇格が決定。より個人、チームの強化をすることもできる。

 負傷者、退場者が出て9人での戦いを強いられたJFAアカデミー福島U-18(東海2/静岡)戦、そして強敵・横浜FM戦を乗り越えてプレミア昇格。次の目標は選手権になる。高橋は「全国制覇、最後のロッカールームを笑って終わることが目標なので、この勝利は自信に繋がると思う」と語り、大川は「(プレーオフの組み合わせが決まった時は)厳しいトーナメントになると思ったけれど、日本一のマリノスとできるというのは本当にワクワクした気持ちもあったし、そこで本当に勝てたので自信になった。選手権で全国制覇するという目標を持ちながらやっていきたい」と力を込めた。

 プレミアリーグ初参戦時の時に課題となったのが選手層の薄さ。それを時間をかけて改善してきた尚志は、主力数人が不在の中でも結果を残した。この武器と自信を持って選手権で日本一に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
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