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[関東大会予選]延長後半ラストプレーでMF佐藤が劇的FK弾!関東一が東京タイトル奪還へ前進!

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延長後半アディショナルタイム、関東一高MF佐藤誠也がFK弾を決めて熱戦に決着をつけた

[4.13 関東大会東京都予選2回戦 成立学園高 1-2(延長)関東一高 駒沢2]

 関東一が“サヨナラFK弾”で激闘を制す――。13日、2019年度関東高校サッカー大会東京都予選2回戦が行われ、成立学園高関東一高との注目カードは1-1のまま後半終了。延長後半ラストプレーでMF佐藤誠也(3年)が決勝点となる右足FKを決め、関東一が2-1で競り勝った。関東一は20日の準々決勝で国分寺高と戦う。

 劇的すぎるフィナーレだった。1-1で突入した延長戦後半アディショナルタイム、関東一は敵陣中央、ゴールまで30mほどの位置でFKを獲得する。これを「いつも練習していて、不安なく蹴ることができた」という佐藤が右足で直接狙うと、壁の上を越えたボールはそのままゴール左隅へ。満面の笑みでベンチ方向へ走り出した佐藤とピッチ方向へ飛び出してきたサブ組の選手たちが抱擁し、大きな輪ができた。

 そして試合は再開することなく終了の笛。文字通りの“サヨナラFK弾”によって関東一が大熱戦を制した。小野貴裕監督が「ビックリしました」と驚く佐藤のFK弾。指揮官が「今年の子たちは性格がマジメ」と評する世代が非常に苦しい試合で勝ち切る強さを示した。

 立ち上がりの5分間は関東一が成立学園を自陣に釘付けにする展開だった。高い位置で“関東一らしい”細かなパスワークも出しながら、主導権を握ろうとする。だが、やや攻め急いでのロストが増えると、逆にMF戸田岳滉(2年)とMF金沢歩夢(3年)のダブルボランチがレシーブ役になった成立学園のボール支配率が向上。幅を広く使った攻撃で攻め返す。一進一退となった前半から後半が始まると、成立学園がシュート数を増やして行った。

 鋭いターンで局面を打開するMF中村大輝(3年)のシュートや右SB豊田優磨(3年)のクロスからチャンスが生まれ、15分には注目FW吉長真優(3年)や身体系FW黒部光貴(3年)らの3連続シュートが関東一ゴールを脅かす。

 そして21分、成立学園は左サイドのSB竹谷玲音(3年)を起点とした攻撃からギャップを突いて左サイドを打開。最後は吉長が右足を振り抜くと、GKが弾いたボールを黒部が頭で押し込んだ。

 苦しい展開となった関東一はなかなかシュートまで持ち込むことができずにいたが、1チャンスをものにする。31分、成立学園の選手が治療でピッチの外に出ている時間帯。ここで関東一はショートパスを繋いでゴールを奪い返す。右サイドのMF貝瀬敦(3年)を起点に交代出場のMF宇山輝(2年)、MF笠井佳祐(2年)と繋ぎ、右中間へのスルーパスで俊足MF貝瀬がDFを振り切ってPAへ侵入。そのまま右足シュートをゴール左へ流し込んだ。

 殊勲の貝瀬は「(パスが)自分のステップと合わなかったんですけれども、(上手くボールを流しながら)ダイレクトでしっかり打てたので良かったです」。劣勢を挽回する一撃に「(まだ同点だったので)騒ぎすぎず、でも自分の中ではめっちゃ嬉しかったです」と微笑んだ。

 追いつかれた成立学園だったが、交代出場のMF宇津木優人主将(3年)がボールに多くかかわりながら、後半終盤、延長戦前半と攻撃機会を増やし、決定機も作った。だが、GK出口貴也(3年)やCB田中大生(3年)の好守などで凌いだ関東一は小野監督が「彼らがやれるのは分かっていた」という“切り札”のFW安藤慎之助(2年)や宇山が左サイドからの突破でチャンスを演出。そして安藤が獲得したFKから佐藤の劇的な決勝点が生まれた。

 関東一にとって今大会は“強い関一”の評価を取り戻す大会だ。16年度のインターハイ予選と選手権予選、17年度の関東大会予選とインターハイ予選、選手権予選、そして昨年度の関東大会予選とインターハイ予選と東京のトーナメント戦を続けて制してきた関東一だったが、昨秋の選手権予選初戦で東京実高の前にPK戦で初戦敗退。連覇がストップした。

 貝瀬は「今までずっと入学してから勝ってきていて選手権1回戦で負けて、またこういうところで負けると『関一は弱くなったな』と思われてしまう。もう1回しっかり優勝して、『関一、やっぱり強いな』と思ってもらえるように。しっかりチャンピオンを狙っていきたいです」と語る。

 今年の関東一は飛び抜けたレベルの個が揃っている世代ではない。それでも、選手権予選やなかなか結果の出なかった冬の悔しさをバネにスタートした彼らは東京のタイトル奪還へ向けて意識の高い日常を送ることができているようだ。

 佐藤は「練習からでも少し3年が自分たちで、自分たちでという意識ができてきている。練習でも雰囲気良く、雰囲気良くっていう、上手くいかないことがあってもみんなでしっかり喋っている。チームとしてのレベルは徐々に上がってきていて、チームとしてのレベルを高く保っていければ相手の個のレベルが高いのに対してチームとして補っていけると思う。今年はそういうところを大事にしていきたいです」。チーム力の向上とともに徐々に出てきている結果。チームのレベルを一歩一歩向上させながら、“強い関一”となって自分たちの求めるタイトルを全て獲得する。

(取材・文 吉田太郎)

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