beacon

[関東大会予選]山梨は韮崎復権!全員サッカー貫き、“私立3強”撃破で伝統つなぐ!

このエントリーをはてなブックマークに追加

優勝を喜ぶ韮崎高の選手、生徒たち

[5.10 関東高校大会山梨県予選決勝 日本航空高 0-1 韮崎高 中銀スタ]

 韮崎、復権! 2019年度(令和元年度)関東高校サッカー大会山梨県予選決勝が10日に行われ、選手権8強の日本航空高と伝統校・韮崎高が激突。試合終了1分前にMF笹本侑(2年)が決めた決勝点によって、韮崎が1-0で勝ち、5年ぶりの優勝を飾った。優勝した韮崎と準優勝の日本航空は、6月に茨城県で開催される関東大会に出場する。

 インターハイ優勝1回、選手権準優勝5回の伝統校、韮崎が山梨県のタイトルを奪還した。14年度の関東大会予選以来となる県内タイトル獲得。ゲーム主将のMF佐野太亮(3年)が試合後、「ピッチに立っている人も、応援の人も、みんな一つになってできたのが勝因の一つだと思います」と仲間たちに感謝し、DFリーダーのCB内田歩(3年)も「ピッチに出ていた人や点獲った人だけでなく、スタンドやきょうに関しては全校の人たちがいたので、学校で掴み取った勝利だと思う」。選手たちは80分間ともに戦い、勝利したスタンドの控え選手、同級生たちと一緒になって勝ちロコや記念撮影を行っていた。

 公立校の韮崎は準々決勝で昨年のインターハイ日本一・山梨学院高、準決勝で今年の県新人戦優勝校・帝京三高と私立勢の強豪を連破。頂点への最後の関門となった私立勢・日本航空は、DF篠原靖主将(3年)や左WB小田翔太(3年)、DF能口岳斗(3年)と1月の選手権8強メンバーを残す陣容だった。

 今大会、攻撃面に注力してきたという韮崎は、佐野や10番FW石原稜(3年)、ポスト役のFW坂本和也(3年)がボールに絡むシーンを増やそうとするが、連戦の疲れもあって思うような攻撃をすることができない。スピードのある右SB長澤新志(3年)が右サイドを突破するシーンや右MF村松壮(2年)、左MF望月馨太(2年)がシュートへ持ち込むシーンがあったものの、スイーパーの篠原を余らせて守る日本航空ゴールを脅かすには至らない。

 一方の日本航空は左のWB小田とFW高橋剣士朗(2年)、右のWB松野利玖(3年)とFW相馬翠(3年)の両ワイドを多用した攻撃。素材感のある動きを見せるDF井上勇聖(3年)の左足も交えて韮崎DF陣にプレッシャーをかける。

 だが、韮崎は前線からのプレッシングと中盤のプレスバックを徹底。いずれも対人守備で強さを発揮する長澤と左SB萩原大翔(2年)がサイドの攻防で決定的なシーンを作らせない。そして、中央の俊足CB内田と、怪我のCB雨宮修真主将(3年)に代わって先発しているCB清水悠生(3年)が中央で的確に相手の攻撃を跳ね返して見せる。

 派手な攻撃面よりも球際でのファイトや連動した守備面の光る決勝に。後半も“我慢比べ”が続く中、日本航空はセットプレーの数を増やすが、韮崎の集中した守りは崩れず。韮崎は時に懸命なチェックがファウルになるシーンもあったが、仲間のミスを他の選手がカバーしながら、各選手がやるべきハードワークを徹底し続けていた。

 27分、韮崎は笹本、日本航空はFW望月悠汰(3年)を投入して勝負に出る。この後、韮崎は萩原のスルーパスで左サイドを崩したほか、ボランチの位置から精力的な飛び出しを続けていたMF真壁大翔(2年)が2度、3度とPA付近でボールに絡む。一方の日本航空は33分に右クロスのクリアに小田が反応。左足を振り抜いたが、シュートは韮崎GK保坂拓哉(2年)のファインセーブに阻まれた。

 後半終了まで3分を切り、韮崎はFW金丸立樹(3年)も加えて前線を活性化。すると39分に待望の先制点が生まれる。クリアボールを連続で拾っていた韮崎は、右サイドでボールを受けた笹本がフリーでルックアップ。そして、右足でGKとDFの間を狙ったアーリークロスがそのまま逆サイドのゴールネットに吸い込まれた。笹本中心に大喜びの韮崎イレブン。2分間のアディショナルタイムを含めてこの1点を守った韮崎が、山梨制覇を果たした。

 選手権出場34回の伝統校・韮崎が最後に同大会に出場したのは08年度。最近10年は私立勢の台頭によって難しい時代を過ごしている。それでも「伝統を感じられる学校」(今村優貴監督)の選手たちは、結果が出ない中でもひたむきにその伝統をつなぐことを目指してきた。

 自身も韮崎OBの指揮官は「伝統は背負うこのではなく、つなぐもの。(重くて抱えることはできないかもしれないが)横に少し動かせば、動かせる時もある」。先輩たちの背中を見て取り組んできたことを継続してきた。今年は個々が武器を持っている世代。加えて、今村監督は「学校のお陰」と話していたが、文武両道の高校で普段から勉強、サッカーに取り組んできたことが我慢強い選手たちを作り上げ、タイトル獲得をもたらした。

 エースMF名執龍一(3年)や主将の雨宮を怪我で欠いた中、全員で掴み取ったタイトル。選手たちはこの優勝を自信にしつつ、さらに上を目指す意気込みだ。佐野は「伝統は凄くある高校ですけれど、ここ最近(全国大会の)出場回数が伸びていなくて、それを自分たちの代で変えようという気持ちが凄く強い」という。そのためにも、「練習から締めてやらないといけない。きょうは勝ちに浸っても次の練習から意識して、次の試合や関東大会に臨みたいと思います」(内田)。仲間、学校の力を後押しに果たした復権。この日のように学校全体で勝利を喜び、伝統をさらに良い形でつなぐために、また日常から努力を続ける。
 
(取材・文 吉田太郎)

TOP