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桐生一FW若月大和「自分は『全然、物足りないな』」。“誤審”から大逆転の先輩見て感動し、再確認した“湘南プライド”

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桐生一高の湘南内定FW若月大和は先輩たちの姿に刺激を受け、必死にゴールを目指し続けた

[5.18 高円宮杯プリンスリーグ関東第7節 桐生一高 1-2 帝京高 あずまサッカースタジアム]

「ああいう状況で、チームが一つになって浦和に何もさせないくらいの戦いができる。見ている自分が感動して、この舞台に立っていることを想像した時に、自分は『全然、物足りないな』というのが正直な思いですね」

 桐生一高(群馬)のU-17日本代表FW若月大和(3年)は、来季からの湘南ベルマーレ加入が内定している高速ストライカー。シーズン開幕後も湘南の練習参加を重ね、すでにルヴァン杯・札幌戦で“プロデビュー”も果たしている17歳は、前日17日のJ1第12節、浦和対湘南戦をDAZNで視聴していたという。

 0-2とリードされた湘南は前半31分にMF杉岡大暉がゴールネットを揺らしたが、審判団の“ミスジャッジ”で得点は認められず。心が乱れてもおかしくないようなゲーム展開でも勝利を諦めず、最後まで気迫あふれる戦いを貫いた湘南は3点を奪い返して3-2で逆転勝ちした。

「(スタッフ、サポーターを含めて、)チーム全体であの熱さを持って戦えるチームは、日本全体でも本当に少ないと思う。自分も湘南の選手なので、そこでできる幸せを噛み締めて、“湘南魂”、“湘南プライド”を持って、湘南でも、桐生第一に戻ってきてもやっていきたい」。

 逆境を跳ね返した先輩たちの姿に感動し、“湘南プライド”を再確認した若月はこの日、覚悟を持ってプリンスリーグ関東・帝京高戦に臨んでいた。ファーストプレーで相手ボールホルダーに猛然とプレッシャー。自身がボールを持った際には、多少不利な状況でも強引にDFの前に潜り込んでシュートまで持ち込もうとしていた。

 帝京は彼にボールが入った際に複数のDFで対応。後方から挟み込んでくる選手のチャージも厳しく、若月は簡単にシュートを打たせてもらえなかった。それでも、後半開始直後、スルーパスを引き出した若月はGKをかわしてシュート。だが、この一撃がポストを叩いたことでリズムを崩してしまう。

 後半30分以降、若月は3度もGKと1対1に。いずれも若月の驚異的な脚力によって生み出されたチャンスだった。だが、左サイドからDF2人を置き去りにした後半38分のシーン含めてシュートは全て帝京GK冨田篤弘(3年)に止められてしまう。いずれのシーンも“若月だから”作り出すことができたような決定機だったが、結果は無得点でチームも逆転負け。相手クロスがそのまま入って追いつかれるという不運を跳ね返すため、若月は必死に走り続けたものの、チームを勝たせることはできなかった。

「昨日の(湘南の)試合を見て、今日のこの試合だと本当に周りにもがっかりさせてしまったと思います」と若月は首を振る。「ボールをゴールまで持っていくことに夢中になってしまって、抜いた後の落ち着きというのがいつもよりは確実に無かったかなと思います。きょうのようなミスは『もうしない』という覚悟を絶対に持って。同じことを繰り返すような選手にはなりたくないです」。

 特に前半はボールを受けようとし過ぎて、パスの出し手とタイミングが合わず。田野豪一監督は「やろうとしていることが多すぎて、(他の選手たちと)マッチしていなかった」と指摘する。ただし、各対戦チームの徹底マークをどう攻略していくか、考えながらプレーしていること、貪欲に成長しようとしている姿勢は間違いなくプラスの部分。「一皮むけるためには良い課題。壁を乗り越えてほしい」と期待していた。

 桐生一が全国で飛躍するためには彼の活躍が不可欠。また、若月が湘南やU-17日本代表の一員として世界やJリーグで活躍するためには、もう1ランクレベルアップしなければならない。若月は「自分もあの世界で戦うんだったら、本当に覚悟を決めないといけない。自分には西川潤(桐光学園高、C大阪内定)のような上手さがあるわけではない。ひたむきに、ひたすらガツガツやることで周りも見てくれているので、そういうプレーをこれからも増やして、自分の武器を桐生第一や、湘南の武器にできるように頑張っていきたいです」。チームメートとの連係も高め、現時点ではまだまだ足りないと感じた覚悟、“湘南プライド”をより持って試合へ。そして、どの試合でもゴールを決め、必ずチームを勝たせる。

(取材・文 吉田太郎)
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