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「選手権に懸ける」。インハイ予選敗退から再び歩み始めた千葉名門2校の戦い、流経大柏が制して冬へ弾み

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後半23分、MF大西悠介の先制点を喜ぶ流通経済大柏高イレブン

[6.30 高円宮杯プレミアリーグEAST第8節 市立船橋高 0-2 流通経済大柏高 グラスポ]

 冬へ向けて再び歩み始めた名門2校の戦いは、流経大柏が制す――。高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ2019EASTは30日、第8節を行い、市立船橋高流通経済大柏高との千葉名門校対決は、MF大西悠介(3年)とU-17日本代表候補CB藤井海和(2年)のゴールによって流経大柏が2-0で勝った。

 代表枠が1に減ったインターハイ千葉県予選で市立船橋は準決勝、流経大柏は決勝で敗れていずれも予選敗退。過去12回のインターハイのうち、計6度の全国制覇(08年度は両校優勝)、3度の準優勝を成し遂げていた両雄が、夏の全国舞台に立つことができなくなった。流経大柏の本田裕一郎監督は両校にとって「踏ん張りどころ」であることを口にしていたが、選手権での千葉のタイトル奪還、日本一を目指す名門2校が、今後へ向けて重要なライバル対決に臨んだ。

 拮抗した前半はホームの市立船橋がチャンスを作る。中盤での激しい攻防の中でMF町田雄亮主将(3年)らがボールを引き寄せた市立船橋は、幾度か狙いとする縦パスを通し、そこからU-18日本代表MF鈴木唯人(3年)やFW賀澤陽友(3年)、MF森英希(3年)が前を向いて前進。特に高いキープ力を発揮していた鈴木が18分、22分とフィニッシュまで持ち込み、U-17日本代表の右SB畑大雅(3年)がスピードに乗った攻撃参加からクロスを入れるシーンもあった。

 37分には右の賀澤から決定的なラストパスが入ったが、流経大柏のU-17日本代表GK松原颯汰が飛び出してキャッチ。42分にはPAへ迫った賀澤がチャンスを迎えるが、FW渡會武蔵(3年)が「インターハイとか負けて勝ち星がない状況の時に、この市船戦は何が何でも勝ちたいと思って挑みました」と語るなど、気合十分の流経大柏はDFが身体を投げ出して阻止する。声でDFラインをリードした藤井を中心に1ボランチの下地陸斗(3年)、CB根本泰志(2年)、右SB田口空我(1年)ら各選手が身体を張る流経大柏は、この日随所で攻撃力を発揮していたSB田村陸(2年)や森山の仕掛けなど、左サイドからの攻撃でゴール前のシーンを作り出そうとする。

 後半、流経大柏は下地、大西、MF八木滉史主将(3年)の中盤3人と、CBの守備連係が機能するなど少しずつ流れを引き寄せる。良い形でのボール奪取から大西や渡會、森山、八木が前を向いて仕掛け。そして、勝負どころとなった後半半ば、球際や走力勝負で勝る流経大柏が先制点を奪った。

 23分、左サイドから攻め直すと森山のパスに反応した田村がエンドラインギリギリから中央へ折り返す。これをニアで交代出場FW橋本清太郎(1年)がわずかに触ると、2列目から走り込んできた大西がダイレクトで右足を振り抜く。市船DFも必死にタックルして足に触れたが、シュートの威力が勝る形でゴール右隅へ。流経大柏がスコアを動かした。

 反撃に出たい市立船橋だが、波多秀吾監督の指摘する「ゲーム体力と個人個人の逞しさ」という課題が出てしまう。勢いに乗った流経大柏の攻撃を何とか凌いでいたが、攻撃に出ることができない。逆に運動量の落ちない流経大柏は35分、左FKをショートで繋ぐサインプレー。左中間で受けた森山は当初の狙いと異なる形でボールを持ったが、迷わず、そのままDFを振り切る形で縦に切れ込む。この折り返しをニアの藤井が左足ダイレクトで決めて2-0とした。

 市立船橋はこの後、選手交代から反撃しようとするが、インターハイ予選決勝の日体大柏高戦で2-0から逆転負けを経験している流経大柏は、ここから集中力の高い攻守。相手を自陣ゴールに近づけず、逆に八木の好パスからチャンスを作り出すなど攻め続けて勝利した。これで17年以降の市立船橋との直接対決は5勝1分。ライバルに勝利した流経大柏が今後へ向けて弾みをつけた。

 流経大柏の本田監督はインターハイ予選敗退後、「オレのコンディションが悪かった。オレの責任だ。申し訳ない。次のプレミアから少しずつ上げて行こう。諦めずにやろう」と選手たちに語ったという。悪夢の敗退、また指揮官の去就についてなどのニュースに動揺した選手もいたかもしれない。切り替えるのは容易ではなかったはずだ。

 だが、藤井は「あれ(決勝での逆転負け)はピッチ内の自分たちが戦っていなかったし、監督は監督のせいと言うけれど、自分たちの責任」と語り、日体大柏戦で負傷欠場の八木の分まで戦っていた渡會も「(予選敗退は)相当悔しかったです。(でも敗戦は)監督ではなく、自分たちでも考えないといけなかったし、人のせいにはできない」。2-0で油断し、戦う姿勢を欠いた自分たちの責任とした。選手たちは言い訳することなく冬へ向けて歩み始めている。

 八木は「自分たちに残されているのはあと、プレミアと選手権しかないので、どう変えてもインターハイは出れないので、それを良い薬にするだけ。負けをどうプラスにしていくかは話していますね」という。選手権で再び千葉を勝ち抜き、2年連続の準優勝を超えて頂点へ。この日、2-0になってから隙のない戦いを見せた流経大柏は、積み重ねながら選手権へ向かう。

 渡會は「(本田監督の)最後の年になっているので、良い結果を出して送り出すのが自分たちに課せられた使命」と力を込め、藤井は「選手権2年連続準優勝で、(本田)監督も今年が最後ということで、ある意味『選手権に懸けろ』という神様からのメッセージなのかなと。選手権獲るためにやっていきたい」と誓った。流経大柏は悪夢のような敗戦も、この日手にした大きな白星も巻き返すための力にする。

(取材・文 吉田太郎)
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