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日本の高校サッカーでチームメイトと切磋琢磨…U-15ナイジェリア代表歴を持つ福知山成美の注目FWオリオラ・サンデー

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U-15ナイジェリア代表歴を持つFWオリオラ・サンデー(1年)

[11.2 選手権予選4回戦 向陽0-2福知山成美 東山]

 京都府の強豪校の多くは南部勢だが、北部勢として2006年に全国高校サッカー選手権大会を経験している福知山成美高が13年ぶりの全国出場を目指して京都大会に挑んでいる。

 今大会は2回戦から登場。3回戦で難敵・久御山高を3-1で破ると、2日に行われた4回戦でも向陽高に2-0で勝利。今夏のインターハイ予選で敗れた相手へのリベンジを果たして、ベスト8へと駒を進めた。

 そんなチームを前線で牽引するのがナイジェリアからやってきたFWオリオラ・サンデー(1年)だ。久御山戦では、パスをつなぎながら攻撃を仕掛けてくる相手からボールを奪った後、長いストライドから繰り出される縦への推進力でカウンターの先鋒役となり、決勝点もアシストするなど勝利に貢献した。

 向陽戦で前半28分に先制点を決めた場面では、敵陣で起点となって味方へボールを落とした流れからゴール前へ入っていき、サイドからの折り返しを振りの早い強烈なシュートで蹴り込んでみせた。ゴール以外でも、向陽の選手たちが二人がかりで挟みにいった場面で相手のチャージを跳ねのけて前へ抜け出すなど、高い身体能力を生かしたダイナミックなプレーで観客を沸かせている。

 サンデーは2003年4月生まれの16歳。来日前の昨年にはU-15ナイジェリア代表候補に選出されたことがある。その時は合宿途中で負傷して代表定着とはならなかったが、高いポテンシャルを持つFWであることは間違いない。

 福知山成美高には国際コースがあり、これまでも海外から留学生を受け入れたり、逆に生徒を海外留学へ送り出したりしている高校だ。昨年もベトナム人留学生がサッカー部でプレーしており、サンデーも留学生として他の生徒たちと一緒に学校生活を送りながら、部活で汗を流している。

 主将のDF大野和希(3年)は「体が強くて、シュートも上手い。なにより勝利に貪欲です。練習試合でも結果にすごくこだわっている」と話しており、足立昌義監督は「前向きにプレーさせることで、最も彼の良さが発揮される。本人は前線から下がってきてボールを受けたがるけれど、それだと相手にとって怖くない。本当に高いレベルへ行きたいのなら、前線で力強いプレーを見せることが評価につながると思います」(足立監督)と起用法を説明している。

 ボランチの川瀬圭宥(3年)も「ボールを受けに来て起点となってくれるのは、すごく助かる。ただ、足元に付けるのもいいけれど、裏へ抜け出したところへもボールを出したい。中盤から配給できる回数がまだ少なく、彼の動き出しを生かし切れていないと思う。中盤のプレー次第で、もっとサンデーの良さを引き出せるはずです」と話すなど、チームとしての改善点も見据える。

 チームに与える影響はゲーム以外にもある。高い身体能力を持つサンデーと一緒に練習することで「身体能力の差は埋めようがない部分がある。じゃあ、日本人はどうやって対抗するんだということを肌で感じることができるし、高いレベルを目指すのなら考えないといけないことを毎日繰り返しできるのは貴重な経験だと思います」(足立監督)と日本人選手たちの刺激になっている。

 ピッチ外でも「ほかの生徒たちは『外国人やから…』といった違和感もなくサンデーを受け入れている。語学の勉強にもなるし、お互いにカタコトの英語や日本語でも積極的にコミュニケーションを取ろうとしていますよ」と普段の様子を説明する。

 また、文化の違いについても「日本人の当たり前が、海外では当たり前じゃない。サンデーは日本のやり方を受け入れようとしているし、周りの生徒や選手たちはサンデーにいろんなことを教えてあげる中で『これは日本や日本人のいいといころなんだ』と再認識することがあるようです」(足立監督)。

 一緒に寮生活をしている川瀬は「びっくりすることは多いです。練習や出発時間に集まるのが最初はかなりルーズだったし、常にテンションが高いというか風呂で大合唱したりしている。でも、時間については僕たちが教えていったし、感情をあんな風に表現できるのはうらやましい部分もある。僕は英語は得意じゃなかったけど、サンデーと話す中で単語が聞き取れるようになってきて、意味も覚えていった。勉強になっています」と話している。

 試合後に、サンデーも取材にも応じてくれた。英語と日本語をミックスさせながら「今日のゲーム、めっちゃ楽しかった。 (自分たちの)チームはストロング。ネクストゲームはimportant。がんばって、must winしたいです。僕のストロングポイントはシュートとスコアリング(得点すること)。日本はカルチャーもvery very goodね。でも時間は早い。遅い、駄目です。ナイジェリアは、遅いでもノープロブレム(笑)」と拙いながらも自分の言葉で伝えようとしていた。

 別れ際に「ゴメンね、日本語まだちょっと大丈夫じゃない」と挨拶してくれたが、試合中にシュートを外したときの叫び声は「くっそー!」だったし、好きな日本食を尋ねたら笑顔で「チャーハン、チキンから揚げ、親子丼」と答えを返すなど、日本には馴染みつつあるようだ。日本の高校サッカーで活躍して、プロへの道を切り開きたいという大志を抱いてやってきた16歳のプレーに注目したい。

(取材・文 雨堤俊祐)
●【特設】高校選手権2019

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