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指揮官も「凄いな、コイツら」と認める成長。名古屋U-18は3冠逃すもインパクト残すシーズンに

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3冠こそ逃したものの、名古屋グランパスU-18は堂々の2冠、そしてプレミアリーグWEST優勝

[12.15 プレミアリーグファイナル 青森山田高 3-2名古屋U-18 埼玉]

「プレーヤーとしての成長ももちろんありますし、人間的な成長を感じられるシーズンだったと感じています。凄く3年生を中心に、それぞれがリーダーシップを発揮して、下級生を巻き込んで、3冠というところに対して逃げずに、ブレずに自分たちのサッカーを貫き通してここまで来たということは、彼ら自身の成長を本当に……正直、『凄いな、コイツら』という思いで見守っていました」

 名古屋グランパスU-18古賀聡監督は試合後の記者会見で日本クラブユース選手権(U-18)大会、Jユースカップを制し、プレミアリーグファイナルの頂点まであと一歩にまで迫った選手たちを称賛していた。

 今年、シーズン開幕前に掲げた3冠という目標。Jユースカップこそ1度優勝した経験を持つ名古屋U-18だが、クラブユース選手権とプレミアリーグWESTに関しては未到の領域。本人たちはその目標に対して、確固たる自信を持ってチャレンジした訳ではなかった。
 
 実際にプレミアリーグWESTの開幕戦では愛媛U-18に0-2で完敗。危機感を抱くスタートだった。グラウンドリーダーの役割を担うMF田邉光平(3年)は「あの1敗があって、チーム全体が良くなってきたと思います」と振り返る。

 シーズン序盤はなかなか結果が出ずに苦しんだ。それでもクラブユース選手権出場を懸けた東海予選3位決定戦で磐田U-18に逆転勝ち。「ターニングポイントになっている」(田邉)という白星からチームは勝ちながら自信をつけて怒涛の公式戦24連勝(1分を挟む)を記録する。その間、クラブユース選手権、Jユースカップで優勝。G大阪ユースとのプレミアリーグWEST最終節で敗れたものの、Jクラブユース勢として初の3冠に王手を懸けてこのファイナルに臨んでいた。

 田邉は「ずっと負ける気はしなかったですし、きょうも負ける気がしない中で戦っていました」。ファイナルでは前半27分までに0-2とリードされたが、名古屋U-18は全く怯まなかった。青森山田高の強烈なプレッシングを田邉やMF榊原杏太(3年)、MF光田脩人(2年)のドリブル突破やパスワークでいなし、中央から穴を開ける。前半終了間際に榊原のスルーパスからFW村上千歩(3年)が決めると、後半14分には田邉のラストパスを村上が合わせて同点に追いついた。

 だが、同点直後に失点。再び猛攻を繰り出した名古屋U-18だったが、シュートが相手GKの正面を突くなど最後まで追いつくことができなかった。村上は「青森山田さんの方が、最後のところで競り勝ったり、身体を張ったりという部分では自分たちの方が欠けていたと思う」と語り、田邉も「自分たちの上手さという魅力は出せたと思う。あとは決めきるところ。こだわりを持って練習のところからやっていかないといけない」とコメント。素直に敗戦を認めていた。

 それでも、彼らが成し遂げた偉業が色褪せることはない。また、この2冠とファイナル進出が後輩たちの目線を引き上げたことも間違いない。古賀監督は「(タイトルに加え、)連勝もかなり長く、負けなしの試合も続けて、大きな記録を打ち立てることで、クラブの歴史が変わるというか、自分たちがどんなに高い成績を残したとしても後輩たちがきっとそれを追い越そうとして必死にもがいて上り詰めようとしてくるので、そういった意味で凄く大きな財産をクラブに残してくれたと思っています」と感謝した。

 今年、名古屋U-18は「ユース史上最強最高のチーム」を目指してきた。3冠を成し遂げることはできなかったが、指揮官は「最強最高のチャンスはこれからもある」という。3年生でトップチームに昇格するのはこの日サブだったGK三井大輝(3年)と負傷欠場したMF石田凌太郎(3年)の2人だけで、ほとんどの選手が大学進学予定。古賀監督は彼らに対し、「大学で1年生から公式戦で活躍して、1年生、2年生で強化指定でグランパスのトップチームに戻ってくると。それが何人出てくるのかというのが、本当の勝負だと思っていますし、それができれば『最強最高のチーム』であると言えると思っています」と期待した。

 大学進学予定の田邉は「1年目から強化指定されれば、プロというのも見えてくる。自分も1年目からスタメンを奪ってやっていきたい。次の舞台で活躍して戻ってくるのが恩返しになると思いますし、このクラブでまたタイトルにこだわってやっていきたいと思います」と宣言した。今年、攻撃サッカーを貫き、ユースサッカーシーンでインパクトを残す2冠。貪欲に成長を続けてきた彼らは、「最強最高のチームになる」という目標への挑戦を諦めずに続けていく。

(取材・文 吉田太郎)
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