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[MOM3156]高崎経済大附高FW関雅宗(2年)_前へ、前へ。“経附のスターリング”はひたすら前へと突き進む

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最前線で奮闘した“経附のスターリング”高崎経済大附高FW関雅宗

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[2.9 群馬県高校新人大会決勝 高崎経済大附高 1-1(PK3-0)前橋商高 敷島公園サッカー・ラグビー場]

 あるいはキャプテンとしてチームを束ねたDF眞壁汰季(2年)。あるいはPK戦で相手の3人目を見事にストップしたGK篠原希紗良(2年)。あるいは途中出場で起死回生の同点弾を叩き出した柴田達輝(1年)。普通であれば彼らの中からMOMを選ぶのが順当かもしれない。ただ、延長後半5分に交替を命じられるまで、ひたすら前へと走り続けた9番のストライカーが、やけに気になった。「自分はあまり技術とかないので、頑張れる所でチームに貢献しようと思っていました」。高崎経済大附高の最前線。関雅宗(2年)のプレースタイルは、見る者に何かを感じさせるようなひたむきさに溢れている。

 やや前橋商高のリズムで推移した新人大会決勝の前半。なかなか攻撃の手数を繰り出せない高崎経済大附の中で、9番の必死に走り回る姿が一際目を惹く。「相手に押し込まれる時間帯が多くなっていた中で、クリアに自分が一発でスピードを生かしていけたらそれが一番いいかなと思っていたので、常に相手の位置を見るようにしていました」。一心不乱にラインの裏を狙いながら、相手ディフェンダーとの駆け引きを繰り返す。

 相手のビルドアップにも全力でプレッシャーを掛け続け、前半33分には相手GKに激しく駆け寄ると、キックはディフェンダーに当たってルーズボールに。最後は間一髪でクリアされたものの、献身的な守備意識を前面に押し出したことで、あわやというシーンを創り掛ける。

 後半28分には二ノ宮慈洋(1年)のフィードに抜け出し、エリア内へ侵入。マーカーともつれて倒れるも、主審のホイッスルは鳴らない。この一連に関しては「アレは審判の方がちゃんとわかっていていたと思います(笑) あそこも転ばないで打ち切れる、相手が突っ込んで来たらかわして入れ替われるようなプレーが理想です」ときっぱり。素直な感想が微笑ましい。

「アレだけハートで頑張る選手だから、最後に攣っていても何とかしてくれるんじゃないかと凄く思いますよね」と田中則久監督も言及した通り、この日は足が攣った後もフルスロットルは変わらず。「昨日もかなりの激闘でキツかったので、1回攣ったんですけど、水分も摂っていたので治って。でも、延長に入って落ちてきちゃって、交替させられたのは悔しかったですね」。延長後半5分に交替でベンチに下がるまで、常に全力で戦う姿勢はチームに勇気をもたらしていたように思う。

 結論から言えば、プレーしていた95分間でシュートはゼロ。途中出場の柴田が延長後半の終了間際に劇的な同点弾を決めたタイミングについては、「なんか服を取りに行っていた後で、あんまり見ていなくて…」と苦笑しながら、「でも、みんなの熱気が凄くて、本当に最高でしたね」とも。優勝を手繰り寄せたPK戦もベンチから見守ることになったが、試合を通して見れば「自分はあまり技術とかないので、頑張れる所でチームに貢献しようと思っていました」という関の奮闘は、間違いなくタイトルを獲得する上で、大事なピースを担っていたと言っていいだろう。

 明らかに一目で武器とわかるスピードは、意外にも高校入学後に身に付けたものだという。「中学までは別にそういうタイプじゃなかったんですけど、高校に入って、1年の夏ぐらいに急に速くなったんです。それまでは全然スピードが売りとかではなかったんですけど、急に夏ぐらいから『アレ?』みたいな(笑)」。自身でも理由はよくわからないようだが、とにかく足が速くなったことは1つの転機になっている。

 よくチェックするのはイングランドのプレミアリーグ。やはり同じ特徴を携えている選手に目が行くそうだ。「ずっとJ SPORTSや『Foot!』を見てきたのでプレミアが好きで、スターリングはよく見ます。あとはマネとかサラーとか、スピード系のウイングの選手は参考にしたりしています」。本人に「じゃあ目指すのは“経附のスターリング”かな?」と水を向けると、「まあ、まあ…」と少し濁したものの、まんざらでもない様子。せっかくなので是非“経附のスターリング”を名乗ってくれることを願いたい。

 今年の全国総体は地元・群馬開催。出場枠も2つに拡大されるため、高崎経済大附史上初の全国出場は現実的に狙うべき大きな目標だ。「まだ新人戦なんですけど、タイトルを1個獲れたことは誇りに思います。でも、まだ僕らがチャンピオンという訳ではないですし、そこは調子に乗らないで、これからも頑張っていきたいです。やっぱりインターハイで全国に出て、もっと注目を浴びて、経附を知ってもらいたいというのはありますね」。

 前へ、前へ。ひたすら頑張れる9番。“経附の『ひたむきな』スターリング”が走れば走るほど、きっとチームは少しずつ、だが、確実に勝利へ近付いていくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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