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昌平MF須藤直輝、Jで学んだ目標達成・活躍するためのテーマとドリブルへのこだわり

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注目の10番、昌平高MF須藤直輝の目標は選手権日本一だ。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[2020シーズンへ向けて](※昌平高の協力により、アンケート形式で取材をさせて頂いています)

「チームとしての目標はもちろん選手権で優勝することです。僕が高校サッカー、そして昌平高校を選択した理由はここにあります」。選手権全国8強・昌平高(埼玉)のエースMF須藤直輝(3年、日本高校選抜)にとって、20年シーズンは目標にチャレンジする最後の1年だ。

 須藤は大宮ジュニアユース(現大宮U15)時代の17年にU-15日本代表へ選出。当時から注目されていたドリブラーは憧れの選手権で日本一になるために、ユースチーム(現U18)昇格を断って、台頭中の強豪校・昌平への進学を決断した。入学当初から異質のテクニック、切れ味を披露していた須藤は、1年時ながら10番を背負い、“切り札”としてインターハイ3位。同年の国体に埼玉県選抜の一員として出場して日本一に輝いたが、選手権埼玉県予選は決勝で逆転負けした。

 昨年は1年間スタメンに定着。これまでは突破することに重きを置いているような印象もあったが、厳しい戦いの中でよりゴールへ向かうプレーヤーへと変化した。「ハイレベルな相手と試合をするたびに結果を出すことが一番大事だと学び、よりゴールに近い選択肢をするようにしました。その結果、全国の舞台でも結果を残すことが出来ましたし、自信にも繋がりました」と須藤。自身初の選手権では興國高(大阪)との注目対決で先制ゴールを決め、敗れた青森山田高(青森)との準々決勝でも追撃ゴールをねじ込んだ。

 加えて、自慢のドリブルで魅せるなど、憧れの舞台で活躍。だが、日本一を勝ち取った訳ではない。FW小見洋太(3年)ら主力メンバーの半数近くを残す今年、個人、チームを昨年以上の技術、判断力にまで引き上げて最後の冬を迎えるつもりだ。新シーズンはまず新人戦で連覇。チームは幸先の良いスタートを切ったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で2月から活動中止が続いている。昌平は選手同士が日々意見を言い合いながら成長する集団。昨年からキャプテンマークを巻く須藤は、その時間を増やせないことを悩んでいる。

 ただし、学業も優秀だという須藤はこの時間を勉強に充てながら、個人の成長に繋げる考えだ。「普段チーム練習では出来ない『個人の課題』に向き合った練習ができる事は、凄くいいチャンスだと考えます」とコメント。現在、彼が取り組んでいるのは肉体強化だ。大人数でのトレーニングは控え、換気も十分に行うことを前提とした上で、友人宅の筋トレルームを貸してもらい、アドバイスを受けながらランニングやウェイトトレーニングに励んでいるという。今年、J1広島のキャンプに参加した須藤は、選手権日本一を獲るため、またプロや次のステージで活躍するために必要なものを貪欲に求めている。

 練習参加については「正直、完全に通用した部分はあまりなかったです」と振り返る。だが、通用しなかったのは、向上心の人一倍強い彼にとって良かったのかもしれない。心の中に芽生えたのは『もっとやれる』『もっと成長できる』という思い。「特に、課題だったのは決定力です。どこからでもシュートを狙える選手、両足で狙える選手にならなければならないなと思いました。なぜこのように思ったかと言うと、練習試合をした際、森島(司)選手がハーフラインくらいからのグラウンダーのシュートをサイドネットに突き刺したんです。この時はとても驚きました。シュートが決まっても何も変化なく走って帰っていたので、日常茶飯事なんだろうなと思いました。その瞬間、プロと自分との違いを痛感しました」と言うように、決定力をテーマとして、難易度の高いシュートを当たり前に決めるような選手になることを求めていく。

 また、Jリーグや日本代表、年代別日本代表で活躍する選手たちと接し、目標とする日本代表やプロで活躍するために、必要なことは何かを学んだ。「情報を伝える力、そして聞き入れる力が大事だと思います。なぜなら、そのチームの戦術を理解すると共に自分の立ち位置、役目を確立することが今まで以上に重要になってくるからです。ピッチにたったら年齢は関係ない――。まさしくそうだと思います。しっかり伝え、しっかり受け入れる、そのような力を今から養っていきたいです」。須藤が今年の高校生アタッカーで、最も注目される一人であることは間違いない。小さな身体をハンディキャップで終わらせるのではなく、時に壁にもぶつかりながら、上手くなるため、活躍するために妥協することなく上を目指し、評価を高めてきた。国内トップレベルを知った彼は、変わらぬ姿勢でその壁を超えるためのチャレンジをスタートさせている。

 決定力向上、情報を伝える力、聞き入れる力を身につけること。上を目指すためにやるべきことはあるが、ドリブルへのこだわりは変わらない。「(ドリブルについては)埼玉県内はもちろん、全国でも負けたくないなと思ってます。自信を持って『武器』と言えるようにもっと磨いていきたいです。そして誰にも取られず、強烈に怖いドリブラーになりたいと思います」とさらなるレベルアップを誓った。

 ドリブラーとの対決を楽しんでいるようなふしもある。そして、“ドリブルでは絶対に負けない”というプライドも。興國との選手権初戦は同じ10番の2年生ドリブラー、FW樺山諒乃介(横浜FM内定)との対決にも注目されたが、結果は須藤の先制点によって2-0で勝利した。「彼と僕はドリブラーとしてライバルであり、一種の仲間でもあります。全国で戦った時、僕は完全ホーム、彼は完全にアウェイの中での試合でした。そのプレッシャーの中でプレーするのは相当難しいですし、彼自身完全に本領は発揮出来なかったと思います。なので、また全国の舞台で戦えることを楽しみにしています」。対等の条件でも勝つ。そのこだわりを持って技を磨く。

 目標の選手として名を挙げているのは日本高校選抜でともにプレーしたFW晴山岬(帝京長岡高→町田)だ。「なぜならチームの貢献度の凄さを目の当たりしたからです。高校選抜の遠征の際、あらゆる場面でそれらを感じました。ミーティングや、練習で率先して声を出す姿はとても輝いて見え、本当に“太陽みたい”な人だなと思いました。後輩思いの先輩ですし、自分も岬君みたいにたくさんの人に笑顔を届けられるサッカー選手になりたいなと思いました」。埼玉県勢で最後に選手権を制したのは81年度の武南高。須藤、そしてタレント揃う昌平が、周囲からターゲットにされる中で目標を成し遂げるのは簡単なことではない。それでも、注目エースはピッチの中で輝きを放つのはもちろん、ピッチ外でも周囲に良い影響を与える選手になって、目標を達成する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2020

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