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この敗戦、“最悪”の状況が「良かったと思えるように」。初芝橋本は選手権での白星、8強以上へ再スタート

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初芝橋本高FW樫村宝主将は気持ちの込もったプレー。チームの雰囲気を変える声がけ、ゴールを誓う

[12.5 スーパープリンスリーグ関西13、14位決定戦 初芝橋本高 0-2 大阪産大附高 J-GREEN堺S5]

“最悪”“どん底”からの再スタートだ。初芝橋本高はスーパープリンスリーグ関西13、14位決定戦に3年生メンバーのみで出場。主軸のCB七星優斗(2年)と右SB植仲一樹(2年)に加え、大学受験でGK藤澤周弥(3年)が不在だったことは確かだが、気持ちの弱さやコミュニケーション不足の面が出て不満の内容、結果で90分間を終えた。

 ガンガン前から行くチームが立ち上がりに緩みが出てしまい、前半は0-2。後半は抜群のスピードを持つ交代出場MF安藤公揮(3年)がインターセプトから決定機を演出したほか、阪中義博監督が「あれはもうちょい良くなってくる」と評する“大器”FW土手開理(3年)が空中戦で相手を圧倒した。

 また、CB尾崎功燿(3年)が高さや対人の強さを示すなど良さも出て、後半は前への迫力もあった。だが、FW樫村宝主将(3年)の右足シュートがクロスバーを叩くなど無得点。個人個人が利己的なプレーをしてしまったことも敗因だった。

 選手権和歌山県予選で3年ぶりに優勝。特に準決勝は和歌山南陵高に3-0、決勝でも樫村や昨夏のインターハイ8強メンバーのMF西淵啓斗(3年)の活躍などで宿敵・近大和歌山高から4ゴールをもぎ取った。

 スーパープリンスリーグ関西や練習試合で結果が出ない中で迎えた和歌山県予選だったが、阪中監督が「予選の入りは悪くない。徐々にようなっていく。いい形で入ったからこれ(優勝)があるんちゃいますか」と振り返ったように、結果が出ない中で自分たちの力を理解し、初戦から必死に戦った選手たちが1試合1試合成長しながら大会を勝ち抜いた。

 だが、この日のチームは以前のような状態に。阪中監督が「どん底」と表現し、樫村も「(阪中監督が指摘するように)“最悪”と僕も思っていた。自分のプレーも、チームとしても“最悪”だと思えて、現状客観的に見ても浮足立っている感じが出ている」と首を振った。強さを示して和歌山王座を奪還。その好結果が油断を生んでしまっていた。

 樫村が求めるのは、悪い雰囲気を自分たちで変えられるチームになることだ。まだまだそれぞれに甘さがあり、発言や態度でチームの雰囲気を悪くしてしまっている部分がある。樫村は「自分の気持ちを一回抑えて行動やプレーをするというのができれば、チームとしてバランスが取れて来るのかなと思います」。その雰囲気の悪さに気づきながらも発言できない選手もいる。

 闇雲に意見するのではなく、チームの一員として問題に本気で向き合い、改善するために意見を出し合って雰囲気を向上させること。がむしゃらとなり、勢いに乗った時の強さ、まとまりの良さは予選でも発揮することができているだけに、樫村は「今、この“最悪”な状況があって良かったと思えるように改善したいと思います」と語った。

 この日も果敢なスライディグタックルを決めるなど泥臭い攻守でチームを引っ張る樫村は1つのゴールの重要性を理解。仲間への声がけを工夫すること、そしてチームの雰囲気を変え、味方の足を動かすようなゴールを自分が求めて行くことを誓っていた。

 阪中監督は厳しい指摘をする一方で「(スーパープリンスリーグ最下位で)どん底のヤツやで、とやらせた方が良い」と前向き。これから這い上がっていくだけだ。昨年、インターハイ8強という結果を残しながら予選敗退した悔しさ、和歌山県勢の9年連続初戦敗退を名門・初橋が止めるという思いもエネルギー。“最悪”から再スタートした初芝橋本が“初橋らしい”勢いのある攻守、まとまりを持って選手権に臨み、必ず勝ち星と目標の8強以上を掴み取る。

(取材・文 吉田太郎)
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