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貫いた“静学らしさ“。静岡学園が後半ATの2発で藤枝東を振り切り、“全国ルーキー”初優勝!!

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「2020 ミズノチャンピオンシップU-16」を制した静岡学園高の1年生たち

[12.21 ミズノチャンピオンシップU-16決勝 藤枝東高 1-3 静岡学園高 時之栖うさぎ島G]

 静岡学園が“全国ルーキー初優勝”――。全国9地域のU-16(ルーキー)リーグの上位チームによって争われた「2020 ミズノチャンピオンシップU-16」(旧全国ルーキーリーグ交流大会)は21日、決勝戦を行い、藤枝東高(静岡)と静岡学園高(静岡)が激突。静岡学園が3-1で勝ち、初優勝を果たした。なお、大会MVPは静岡学園の右SB谷岡拓が獲得している。

 静岡の名門校同士の戦いとなった決勝戦は、静岡学園が制した。ともに4-5-1システム。大津高(熊本)、帝京高(東京)、旭川実高(北海道)との“死のグループ”を突破し、準決勝で関西王者の東山高(京都)を破って決勝進出した藤枝東の先発はGK䂖坂地央、右SB桑山響、CB寺田史朗、CB吉川慶二郎、左SB西門希望、アンカー馬場悠生、2シャドーがAチームで先発を務める出水志耀海貝俊輔、右SH中島悠翔、左SH中村朔良、FW井藤璃人だった。

 一方、準決勝で九州1位の東福岡高(福岡)を破るなど今大会4戦全勝で決勝へ進出した静岡学園はGK小林元、右SB谷岡拓、CB黒澤翔太、CB森下蒼大、左SB栗原耕平、ダブルボランチが白井柚希保竹駿斗、トップ下がU-16日本代表MF高橋隆大、右SH近藤安元、左SH望月空、FW寺裏剣の11人が先発した。

 試合は静岡学園がボールをより多く保持しながら押し込む展開。バイタルエリアで前を向いた栗原や寺裏、望月、高橋がドリブルで仕掛け、近藤が左足シュートへ持ち込む。一方の藤枝東も奪ったボールを丁寧に繋ぎ、出水のサイドチェンジなどからともにスピードのある中村、中島の両翼へ展開。カウンターからPAへ抜け出した海貝がシュートへ持ち込むシーンもあった。

 前半は両校無得点。藤枝東は寺田や馬場が相手のドリブルを食い止め、䂖坂のファインセーブもあった。対する静岡学園は今大会、U-16日本代表CB行德瑛が怪我で不在だったものの、代役のCB黒澤がその穴を埋める働き。相手の快足MF中村のスピードに脅威を感じながらも、右SB谷岡が巧みに封じ、セカンドボールを保竹らが回収して攻撃に繋げていた。

 試合は後半3分に動いた。静岡学園は、敵陣のバイタルエリアへ流れたボールを上手く拾った右SB谷岡がそのままゴール方向へドリブル。そして右足シュートをニア下へ打ち込み、先制点を挙げた。

 だが、静岡出身選手に加えてFC東京や神戸、京都といったJクラブアカデミー出身の選手も名を連ねる藤枝東も個々の技術力が高い。10分、DFラインと中盤でゆっくりと攻撃を組み立てると、縦パスを起点にスピードアップ。交代出場MF砂押解世がDFのマークを巧みに外して繋ぐと、左中間の出水が縦に割って入り、DFを引きつけて横パス。これを受けた井藤が右足シュートを叩き込んだ。

 井藤の得点ランキング単独首位へ浮上する一撃で1-1。この後、藤枝東は砂押の中央からの持ち上がりや中村のカットインなどからゴールへ迫り、静岡学園もボールを握りながら攻めて高橋が決定的な左足シュートを放つシーンもあった。ともに譲らず、同点のままアディショナルタイムに突入したライバル対決は、静岡学園が勝ち越す。

 アディショナルタイム2分、静岡学園は左タッチライン際でボールを持った栗原がDFをかわしながらPAへパス。そして、「みんな疲れているというところもあると思ったので、そこは相手も一緒で、攻撃も守備も走って攻撃でチャンスのところがあったら何度も仕掛けて行ったら行けるかなと思っていました」という交代出場MF西井大翔が、ゴール方向へ向かう動きから右足を振り抜く。すると、ブロックしようとした藤枝東DFの守備がファウルの判定。このPKを西井が右足で左隅に決めて2-1とした。

 静岡学園はさらにアディショナルタイム5分、セカンドボールを高橋が前線へ繋ぐ。これを受けた近藤がカットインから左足シュートを左隅に決めて3-1。ベンチまで駆け抜けた近藤や静岡学園のサブ組の選手たちが大喜びする中で試合終了の笛が鳴り響いた。

 静岡学園の高橋は「足止まる時間もあったんですけれども、どうやったら勝てるか考えた時に足下で繋いでトリッキーなことをやれれば、そういうのが勝利に繋がるのはみんなで分かり合っていたので、最後まで貫けたのは良かったかなと思います」と頷く。

 3日間で5試合目。疲れもあり、ドリブルで強引に仕掛けてボールを失うことも少なくなかった。だが、静岡学園は奪われても“静学らしさ”を貫いてドリブル、ショートパスでの崩しにチャレンジ。今年は静岡学園中出身選手たちを中心としたアベレージの高いテクニックと「強い心もあるので“らしさ”を表現できる年代だと思っています」(谷岡)。その世代がすでにAチームで活躍する行德不在の戦いで“日本一”を勝ち取った。

 齊藤興龍コーチは「(静学らしさを貫くということは)関東のルーキー(リーグ)の初戦からずっと言ってきたことだし、それに備える練習試合でもずっと言ってきたことなので達成できたことかなと思いますね」とコメント。今後は注目される中での3年間となるが、「(周囲の評価を上回るためには)倍くらいの努力をしていかないといけない。全ては向上心ですね」と齊藤コーチは求め、川口修監督は「(彼らの)個性を大事にしないといけない。より伸ばせるように育成したい」と語った。

 選手たちも慢心することなく努力を続ける構え。西井は「選手権とかでもしっかりと勝てるように、日々の努力を積み重ねていきたい」と引き締め、谷岡は「目指すのは(選手権での)全国優勝。3個上が優勝しているので、そのサッカーを超えることを目標にしながら全国優勝を目指したいと思っています」と言い切った。精度や強さの部分など、まだまだ課題はある。決勝で熱戦を繰り広げた藤枝東などライバルたちがレベルアップしてくることも間違いないが、それ以上の努力で上回るだけ。2年後、選手権制覇した先輩たちを超えるようなチームとなって、再び頂点を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)

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