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わずか15分の屈辱。名古屋U-18MF甲田英將はキレキレのその先へ

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名古屋グランパスU-18のドリブラー甲田英將

 わずか15分しか与えられなかった時間は、改めて自分を見直すきっかけになった。「U-18で本当に結果を残して、トップにどれだけアピールできるかが大事になってくると思うので、U-18で自分のプレーをしっかり高めて、またトップに挑めるようにやっていきたいなと思います」。名古屋グランパスU-18(愛知)のドリブラー。甲田英將(2年)は今、自分で引いた明確な基準と向き合っている。

 思わず「キレキレだな」というフレーズが口からこぼれ出てしまう。2021プーマカップ群馬初日。強豪の前橋育英高を相手に、甲田のドリブルは止まらない。さらに1点目の起点となるスルーパスを繰り出せば、杉浦駿吾(中学2年)のアシストから2点目もゲット。「最近やっとキレが戻ってきたなと感じています。後輩たちも引っ張っていかないといけないかなという自覚がありますし、自分のプレーをしっかり出して、チームを勝たせるという所を意識してやっています」。充実の表情に笑顔が灯る。

『チームを勝たせる』という意味で、自分の中でイメージする先輩がいる。榊原杏太(立正大)。2年前のエースであり、クラブユース選手権(U-18)大会とJユースカップの決勝で、ともにチームを日本一に導くゴールを奪ったレフティの姿が、とにかく眩しく映った。

「榊原選手は自分で局面を打開してシュートまで持って行ったりとか、チームを勝たせることが多くて、1年生の時は本当に凄いなと思っていました。なので、自分もああいう選手になりたいなと考えていて、そこを意識していますね」。利き足こそ違えども、プレースタイルには共通項も。甲田の何より強気に仕掛ける姿勢は、榊原のそれと重なる。

 1月末からはトップチームの沖縄キャンプに参加。同じポジションの選手からは大きな刺激を受けたという。「今回のキャンプは前に凄い選手が揃っていて、試合を見ていて学ぶことが多かったですね。自分は縦に行くのが苦手なんですけど、相馬勇紀選手や前田直輝選手の仕掛け方とかいろいろ学べて、良い経験になりました。2人とも優しかったですし、『自信を持って、自分のプレーを出していけば絶対やれるから』と言ってもらえました」。

 だが、現実はそう甘くない。「練習でポゼッションをチーム全体でやる時もあったんですけど、それにも参加できなくて悔しい想いもしましたし、試合には15分だけしか出れなかったんです。2週間キャンプに参加して、15分です」。自分の立ち位置を嫌と言うほど思い知らされ、南国の地を後にした。

 自分の手応えと、昨年から2種登録されていたことで、周囲から受ける期待のギャップ。だからこそ、より感じていることがある。「自分が相手から狙われるような状況になった方が、トップに行った時に厳しいプレッシャーでもプレーできると思うので、注目されて、より狙われて、自分のプレーの質がもっと上がっていけばいいなと思っています。サッカーはポジティブじゃないとダメですから」。プレッシャー上等。きっとそれが自身をより高みに連れていってくれるはずだ。

「チームでは全国優勝できる選手が揃っていると思うので、自分たち3年生が中心となって、下も引き上げて、全体で個の能力を上げていって、“プレミア連覇”という所を狙っていきたいと思います。個人としては、エリートリーグにも参加したいですし、そこで結果を残していけばいろいろな人が注目してくれると思うので、しっかり自分のプレーを出して、いろいろな人からの注目を浴びて、トップに上がれるようにやっていきたいなと思います」。

 玉田圭司永井謙佑。相馬勇紀。彼らと同じ11番の系譜を受け継ぐ、若鯱のドリブラー。かわいい笑顔と裏腹に、獰猛に突き進む甲田の突破がチームの未来を切り拓く。

(取材・文 土屋雅史)

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