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[関東大会予選]成長過程を見守りたくなるようなポテンシャル。高崎経済大附の注目DF二ノ宮慈洋が纏う期待感

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ポテンシャルは十分。高崎経済大附高のDF二ノ宮慈洋

[5.8 関東高校大会群馬県予選3回戦 市立前橋高 1-0 高崎経済大附高]

 キャプテンとしての責任感と、不甲斐ない自分への悔しさで、端正な顔を歪ませながら言葉を絞り出す。「自分たちがやろうとしているサッカーがあまりできなくて、コーナーでも得点できないし、球際の部分も全然行かないし、後悔の残る試合でした」。市立前橋高に白星を献上し、関東大会予選はベスト16で敗退となった高崎経済大附高。そのチームを牽引するDF二ノ宮慈洋(3年)の力は、まだまだこんなものではない。

 空中戦は無双状態。相手に自陣へ放り込まれたボールも、味方が蹴ったセットプレーのボールも、ほぼ例外なく二ノ宮の頭がそれを捉える。ただ、その次のアクションが自分たちの流れに繋がらない。

「相手のゴール前のフリーキックとかは、チームメイトにも『折り返しを狙え』とは言っていましたし、そこで触れれば1点とかあったんですけど、僕のボールの質ももっと高められると思いますし、みんなももっと準備していれば触れますし、そういう所をもっとやっていきたいです」。結果的には相手のセットプレーで失点を喫し、自分たちのセットプレーは不発。頂点を目指した今年度最初の県大会は、ベスト16で姿を消すことになった。

 県内の強豪校として知られる高崎経済大附で、昨年までもコンスタントに出場機会を得てきた。1年時はフォワードのスーパーサブ的な起用もありつつ、センターバックのレギュラーとして新人戦の県制覇に貢献している。

「勝っている時はセンターバックがちゃんとしているから勝つことができますし、そこがちゃんとしていないとチームとしてやっていけないので、センターバックをやる時は誇りを持ってやっていますし、フォワードをやっている時は『自分がやるんだ』という気持ちでピッチに立っています」。この日もセンターバックで出場しながら、終盤は最前線に上がり、必死にゴールを目指すなど、試合展開によって“二刀流”を使い分けてきた。

 自分の課題もしっかりと見つめている。「身長の高い選手だと足が遅かったり、アジリティが人より劣っていると思われがちなので、日頃からラダーとかステップの練習をしたりして、補えるようにしています。中学校の頃は本当にアジリティがヤバくて、少しは良くなったんですけど、まだまだやっていきたいですね」。トレーニングの効果は、この日の動きを見ても確実にプレーへ反映され始めている。

 中学時代は名門の前橋FCでプレーしていたが、試合にはあまり出場していなかったという。「チームメイトも前橋育英に行く人が多かったですけど、もし自分も行ったとして、また試合に出られないとサッカー人生がそこで終わってしまうと思ったので、高経に行って、そこで努力して試合に出て、いろいろな人に見てもらいたかったですし、あとは勉強もサッカーもどっちも頑張りたかったので、ここに来ました」。2年間を過ごしたこのチームへの思い入れも、もちろん小さくない。

 188センチのサイズと、そのトータルでの能力に周囲の注目も集まる中で、「なんかそういうことも言われたりするんですけど、今はこのチームで試合に勝てないと次もないと考えています。上のステージに行ったらもっと見られると思いますし、自分も多くの人に見られたいですけど、あまり意識してしまうと良くないと思うので、自分の目の前のことを集中してやっていきたいです」と地に足のついた発言も好感が持てる。

 チームはまだインターハイ、選手権ともに全国大会への出場がなく、在学中にその悲願を達成することは二ノ宮にとっても大きな目標になっている。「高経は全国大会出場を目指して頑張っているので、練習から1つ1つ気合の入ったプレーを心掛けていきたいです。あとは、どれだけ自分が高い意識でやれるかが問題だと思うので、残りの1年もしっかりやっていきたいです」。

 ポテンシャルは間違いない。その秘めたる力で、より高いステージへと羽ばたくのか否か。その過程を見守りたくなるような雰囲気を、二ノ宮は確かに纏っている。

(取材・文 土屋雅史)

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