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インハイ出場校対決は矢板中央が帝京撃破!強度や走力の基準値をより高めて「その先」へ

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前半23分、矢板中央高はCB島崎勝也が右足PKを決めて2-1

[6.26 高円宮杯プリンスリーグ関東第7節 矢板中央高 3-1 帝京高 矢板中央高東泉G]

 26日、高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2021 関東が約1か月半ぶりに本格再開し、第7節1日目が開催された。矢板中央高(栃木)と帝京高(東京)との高体連勢対決は、矢板中央が3-1で勝利。矢板中央は3勝2分2敗の暫定3位、帝京は1勝4敗の同8位となっている。

 ともに今月、インターハイ予選を突破して全国大会出場を決めている両校。特に矢板中央は23日に栃木県予選決勝を戦ったばかりで、この試合が直近2週間で5試合目となる過酷な日程だった。

 その5試合を苦しみながらも5連勝。高橋健二監督は「正直、(今日は)水曜日が決勝だったので心配だったんですけれども。決勝戦なんて雨の中で難しいゲームだったし、今日は良くやったと思います」。この日は日本高校選抜GK藤井陽登主将(3年)や右SB小出勇翔(3年)に休養を取らせる中、代わりに出場したGK羽渕莉人(3年)と右SB山越結平(3年)が奮闘するなど、層の暑さも示して白星を勝ち取った。

 矢板中央は縦への推進力とセットプレーの強さを活かした攻撃。キックオフ直後からいきなり決定機を作り出す。対する帝京は左SB入江羚介(2年)がゴールライン上でクリアしてこのピンチを凌ぐと、その後はボールを握って攻める時間を増やす。

 だが、矢板中央はハイサイドへの配球から獲得したスローインを得点に結びつける。14分、ゲーム主将・CB島崎勝也(3年)の右ロングスローからファーサイドのMF藤野和哉(3年)がヘディングシュート。こぼれをMF田邉海斗(2年)が右足で押し込み、先制した。

 対して帝京は15分、この日前線でのキープ、抜け出しで目立っていたFW齊藤慈斗(2年)がPKを獲得。日比威監督に指名されたキッカー、GK岸本悠将(3年)が右足で右隅に決め、同点に追いついた。

 だが、“ホーム”の矢板中央が突き放す。23分、左サイドからドリブルで切れ込んだMF唐橋玖生(3年)がPKを獲得。これを島崎が右足で決めて勝ち越すと、39分には再び島崎の左ロングスローからこぼれ球をFW林廉斗(3年)が右足で右隅に沈め、3-1とした。

 帝京は相手セットプレーを良い形で跳ね返すことができずに失点。攻撃面ではボールを支配し、質の高い左の入江、右の島貫琢土(2年)の両SBが高い位置へ張り出して厚みを加えていたが、正確に繋ごうとするあまり、なかなかテンポが上がらない。一方の矢板中央はコンパクトに守り、チャレンジアンドカバーを徹底。特にMF大畑凜生(3年)がインターセプト、跳ね返しの部分で存在感を示し、カウンター攻撃に繋げていた。

 だが後半、帝京はMF押川優希(2年)やMF狩野隆有(3年)がより多くボールに絡む形でパスワークのテンポを上げる。18分には細かなパス交換から左中間のFW伊藤聡太(2年)がスルーパス。これで抜け出した交代出場FW山下凜(2年)がGKをかわすが、左足シュートはポストを叩いてしまう。

 結果的に、この1本が勝敗を左右した。帝京は29分にドリブラーのMF松本琉雅(2年)を送り出し、その松本や山下、交代出場FW福地亮介(3年)の仕掛けなどから立て続けにゴール前のシーンを作り出す。後半はシュート数10対1とほぼ一方的に攻め続ける展開だったが、最後の局面でわずかに動き出しが遅れたり、強引なシュートがブロックされるなど追撃することができない。

 一方、不用意なボールロストの増えた矢板中央は、なかなか前進することができなかった。それでも、ゴール前で“堅守・矢板中央”の本領発揮。アディショナルタイムにはGK羽渕のファインセーブやDFのゴールライン上でのクリアもあり、2点差のまま逃げ切った。

 矢板中央は過去4年間の選手権で4強3回、8強1回。全国上位に続けて食い込んでいる一方で「その先」へ行くことの難しさを実感している。高橋監督は「甘くないのは分かっている」と語るが、「その先」へより意識高く挑戦中だ。

 現在、ピッチに立っているのは、矢板中央の強度や走力の基準値を満たしている選手たちだが、その基準値を全国で勝ち抜くレベルまで引き上げること。加えて、決定力や積極性もより高めなければならないと指揮官は考えている。

 この日、タフな日程でもさすがの堅守と勝負強さを発揮して勝利したものの、チームの評価はまだまだ。大畑は「フィジカル、強度、止める・蹴るの質、決定力はもう一皮二皮剥けないと日本一にはまだほど遠いと思います」と語り、藤井は「サブの選手でも良い選手とか、練習で引っ張ってくれる選手がいる。トップで試合出ている選手とサブの選手が競い合っていければもっと良くなっていくと思うので、高め合っていきたい」と力を込めた。プレミアリーグ初昇格、選手権での日本一、そして16強が最高成績のインターハイでも歴史を変えるため、日常から進化を続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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