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「欲をかき切る」コバキョーの絶対的信頼感。流経大柏MF小林恭太はどこにいてもとにかく“効きまくる”

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流通経済大柏高が誇る最強のマルチロール、MF小林恭太(14番)は自身のゴールに笑顔

[6.27 プレミアリーグEAST第8節 流通経済大柏高 4-1 横浜FCユース 流経柏G]

 チームの心臓。ダイナモ。気の利く“お母さん”的な役割。この男を形容するフレーズはいくらでも出てくるぐらい、このグループにとってその存在は欠かせない。ゆえに指揮官から寄せられる絶対的な信頼は、自分でも十分感じているという。「エノさん(榎本雅大監督)は結構自分のことをイジったりしてくれるんですけど、そこにも結構『愛を感じるな』って思っています(笑)。でも、渋谷(諒太)が本当に素晴らしいキャプテンで、そこに自分も付いていかないと副キャプテンも成り立っていかないと思うので、渋谷を追い掛けるだけじゃなくて、同じラインに立って、チームを引っ張っていきたいです」。流通経済大柏高(千葉)を支える“コバキョー”こと、MF小林恭太(3年=クラブ・ドラゴンズ柏出身)は、どんな指導者でも真っ先に使いたくなるに違いない。

 ボランチ、サイドハーフ、サイドバック。どこで起用されても、圧倒的に効きまくる。「センターバックはあまりやらないですけど、それ以外は基本的にできるようにというモットーは持っていますし、交代選手がいなかったり、インターハイのような交代枠が少ない中でこそ、そういう所は自分の良い所の1つだと思っているので、臨機応変に対応できればいいと思っています」。常に水準以上の働きを披露できる所が、“コバキョー”の存在価値をより一層高めている。

 横浜FCユース(神奈川)と対峙した、プレミアリーグEAST第8節。この日は左サイドハーフで起用されると、“結果”でチームに貢献してみせる。まずは、ゴール。1-1で迎えた後半18分。右サイドをDF橋本清太郎(3年)が突破してくるのを見て、ポジションを取り直す。

「あそこで『ハシだったら抜けてくれるな』とわかっていましたし、(石川)裕雅もニアで潰れるのが上手いので、自分が待ってああいう所に入っていくというのはイメージできていました」。少しマイナス気味の位置で待ち構えると、橋本の折り返しを右足でシュート。いったんはGKに弾かれたボールを、今度は丁寧にゴールネットへ流し込む。

「最初の一発目で右足でコロコロになっちゃったんですけど(笑)、また自分の所に来て、今度は落ち着いてコースを狙って打てたので、良かったです。自分はこれがプレミア初得点で、今まで結構チャンスを外してきていましたし、“惜しい”で終わっちゃっていたので、そこは嬉しかったです」。満面の笑顔でチームメイトと喜ぶ姿も微笑ましい。

 続いては、アシスト。退場者が出たことで、数的不利となっていた35分。積極的なインターセプトを見せた渋谷から、右サイドでボールを受けると、中央を見据える。エースのFW川畑優翔(3年)へピンポイントクロスを届け、大きな追加点を演出。2人でクロスからのシュート練習を重ねてきたという川畑が「小林もクロスはあまり得意じゃないので、ビックリしました。いつもあんなの来ないのに(笑)」と笑えば、小林も「川畑には『クロスはあそこに入れてこい」とは練習からも言われていたので、正直うまく行くことはあまりなかったんですけど(笑)、今日はうまく行って良かったです!」とこちらも笑顔。1ゴール1アシストの活躍で、4-1の完勝に自らの“結果”をきっちり反映させた。

 自他ともに認める貪欲なタイプ。そこをとにかく突き抜けさせることに舵を切った。「自分は結構『欲をかくな』と言われていて、『だったら、もうやり切った方が絶対いいな』と思ったんです。そういうイメージからインターハイでもゴールが来ているので、これからもやり切っていきたいですね。貪欲にやって、ゴリゴリでもどんな形でもゴールを獲るみたいな感じです。自分が“欲をかけば”、みんなもプレーしやすいかなって。良い雰囲気を自分で作っていけたらと思います」。つまり『欲をかくな』の先にある、『欲をかき切る』まで到達すれば、それは間違いなく最強の個性。小林は欲をかきまくる覚悟を定めたのだ。

 とはいえ、自分の役割をその時々で最適に判断できるのが、この男の大きな強み、流経大柏というチームの中で、試合に出ることの重みは十分に理解している。「やっぱり部員が多いので、1人1人が自覚を持ってやっていると思うんですけど、その中でも自分とか渋谷とか(田口)空我とか、キャプテンや副キャプテンはさらにその上の覚悟を持ってやっていかないといけないと思うので、しっかり伝統を受け継ぎたいですし、自分たちは日本一が目標なので、そういう所でも高みを目指して頑張っていければと思います」。

 今年の流経大柏は、間違いなく強い。そして、その力を発揮する舞台では、どのポジションにいたとしても、『欲をかき切る』コバキョーがいつでも100パーセントでピッチを走り回っている。

(取材・文 土屋雅史)
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