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[MOM3514]履正社FW廣野大河(3年)_憧れ続けている林大地先輩のように。ここから辿る“ネクストビースト”への一本道

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履正社高のストライカー、FW廣野大河は泥臭く決勝ゴール!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.4 高円宮杯プリンスリーグ関西第8節 履正社 2-1 興國 J-GREEN堺]

 GKとの衝突は免れないようなボールにも、恐れることなく果敢に飛び込むと、目の前にはボールと無人のゴールが広がっていた。「前半から相手はラインが高くて、裏に飛び込んでいこうと意識はしていた中で、相手もそれはわかっていて、何回も対応されていたんですけど、その中でもやり続けることが大事かなと思っていました」。興國高撃破の立役者。決勝点を挙げた履正社高の“ネクストビースト”、FW廣野大河(3年=LEO SC出身)は全身からストライカー感を発散させている。

 前半は決してペースを握れた訳ではない。「前からチェイシングを掛けていたんですけど、なかなか相手がボールを回すのが上手くて、自分たちが後手かなと思っていました」という廣野も守備に奔走。1点をリードされた前半21分には、カウンターからフィニッシュまで持ち込んだものの、軌道はクロスバーの上へ。ただ、チームはMF高橋陸(3年)の同点弾でスコアを振り出しに戻して、ハーフタイムに入る。

 後半はスタートからやり慣れた4-4-2へシフトすると、シンプルなアタックも効果的に、攻撃の回数も増えていく。その中で、廣野は“相棒”にあることを頼んでいた。「僕はいつも基点になるポストプレーとか多いんですけど、それをもう一人の宮路に任せて、裏に飛び出して点を獲ることに集中していました」。2トップを組むFW宮路峻輔(3年)と役割を入れ替え、来たる瞬間に向けて神経を研ぎ澄ませていく。

 42分。MF名願斗哉がディフェンスラインの裏へ、浮き球を落とす。「キーバーの裏への対応が前半からちょっと良くなかったので、それを見逃さずに前向きにしっかり走って」追い付いた廣野は、飛び出した相手GKと交錯しながらも、身体はしっかり前向きに残すと、自分に当たったボールも前向きにこぼれてくる。

 あとは無人のゴールへ流し込むのみ。「この間の金光(大阪)戦もあったんですけど、ああいうのをよく外したりしていて。でも、今週は決めるという部分にこだわってやり続けてきたので、メッチャ緊張しましたけど(笑)、そこは冷静にやれて良かったです」。雄叫びを上げながら、チームメイトの歓喜の輪の中に飛び込んでいく。その時、既に足は攣っていた。

「僕は正直下手なので、興國みたいに足元でどうこうというのはできないですし、それやったらやっぱり走って、守備の所からチームに貢献するということは意識してやっています」。45分に交代で下がったベンチから、必死にピッチを見つめ続けると、アディショナルタイムの5分も潰し切った履正社に、勝利を告げるホイッスルが聞こえてくる。「僕らは1試合に懸けている想いが他とは違うというか、負けなくない想いは日頃から全員が持っているので、そこで自分が泥臭いプレーで決められて良かったです」。ストライカーの仕事を果たした廣野の決勝点で、履正社が粘り強く興國を下した。

 ギラギラした雰囲気は、間違いなく偉大な“先輩”譲り。本人もそのことは強く意識している。「僕はずっと林大地(サガン鳥栖)くんに憧れていて、昨日も試合前に大地くんの動画を見ていたんですけど、それぐらい好きで、あの貪欲さというか、ゴールへの執念が自分に似ている所があるかなと思っていますし、ゴール前では強くて負けない所がカッコいいなと思って、憧れています」。

「僕は正直“代表の試合”にはあまり興味がなかったんですけど、『大地くんが出るかな』と思って、最近はずっと見るようになりました。Jでも活躍している選手たちの中に、自分たちの先輩が入ってやっているというのは、自分もこうなりたいという目標になるので、良い見本です。僕も“ビースト廣野”で(笑)」。五輪代表に臨むU-24日本代表にも選出された林を仰ぎ見つつ、自分の武器も同時に把握しながら、さらなる成長を自らに課している。

 決して熱いだけの男ではない。できることとできないことを正確に認識した上で、“できること”にフォーカスしていこうと決意した。「大概“上手ぶった”時とか、上手くやろうと思った時は失敗するんですよ。だから、常に心の中で『チームのために』ということをずっと思っていて、前線にボールが来た時も上手ぶって、『コイツをかわしてやろう』とかじゃなくて、どれだけ強い相手が来てもしっかり押さえて、味方に預けてゴール前に走ることを徹底したりとか、簡単なプレーの連続でゴールを獲れれば、1試合を通じてのヒーローになれるので、そこは自分の持ち味の出し方だと思います」。

 平野直樹監督も「何回もオフサイドになっていたんだけど、最後まで諦めないゴールに貪欲な所、そういう姿勢がああいう結果に結び付いたんじゃないかな。良い選手だと思う。良く走るし、相手の思うタイミングでビルドアップさせないという。後ろは凄く狙いやすくなるしね。ああいうタイプはなかなか少ないんじゃないかなと思いますし、だからこそ持っておきたい選手ですよね。今日のゴールが自信になればいいのかな」と評価を口に。今やチームにとって欠かせない選手であることは、間違いない。

 決して上手い訳でも、器用な訳でもないが、この男の周囲には常にゴールの香りが漂っている。“ネクストビースト”への一本道。廣野が辿っていく先に待っているものが、おそらくは彼のポテンシャルをさらに引き出していくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
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