beacon

[プレミアリーグWEST]両雄の火花散る好ゲームは、最強の“1年生”鳥栖U-18がG大阪ユースを撃破!

このエントリーをはてなブックマークに追加

サガン鳥栖U-18は終盤にFW小西春輝がダメ押しゴール!

[7.4 プレミアリーグWEST第9節 G大阪ユース 1-3 鳥栖U-18 OFA万博フットボールセンターB]

 負けたホームチームの森下仁志監督が試合後に語った言葉が、この90分間の持つ意味をよく現している。「あの強度でやれたのがとても嬉しかった。そういうので選手って覚醒していくから。一番良い相手が、一番良いタイミングで来てくれたんだと思いますけどね。これからクラブユースでも、もう一回彼らと当たるかもしれないですし、結局それで選手の成長ってわかってくるから、そういう意味で感じるものは多かったと思います。収穫しかないですよ」。万博の夜に意地を張り合う両雄が、バチバチと火花を散らす好ゲーム。4日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第9節、ガンバ大阪ユース(大阪)とサガン鳥栖U-18(佐賀)の一戦は、3-1と鳥栖U-18がアウェイで見事に勝利。これで4戦無敗となり、上位争いに食い込みつつある。

 試合は立ち上がりから、両チームのやり合う意識が高い。4-3-3のシステムでゲームに入った鳥栖U-18は、長短のパスを織り交ぜながら、右のMF楢原慶輝(2年)、前日にJ1のゲームに出場しながら、この日もスタメン起用となった左のMF福井太智(2年)と、ボールを持てるタイプのウイングを生かす狙いを鮮明に。前半11分にはCBの岡英輝(3年)のフィードから、抜け出した福井のシュートは枠の右へ外れるも、1つフィニッシュを取り切る。

 一方、リーグの得点ランキングトップを走るFW坂本一彩(3年)とFW南野遥海(2年)を生かすべく、ボールを動かしつつ、サイド勝負に持ち込みたいG大阪ユースは、19分に左からMF安達晃大(2年)がクロスを送ると、飛び込んできたのは右SBの脇山陽登(3年)。シュートこそ枠を逸れたが、ダイナミックなアタックを創出すると、27分には相手ビルドアップを奪った南野がそのままシュート。これもわずかに枠の右へ逸れたものの、惜しいシーンを生み出す。

 アグレッシブさが呼び寄せた先制点はアウェイチーム。34分。中盤で前を向いたMF坂井駿也(2年)はそのまま少し運ぶと、「今日のポジションは攻撃的なポジションで、自分もミドルシュートは自信を持ってやっています」という、そのミドルにトライ。枠を捉えたボールはGKもかき出し切れず、ゴールネットへ転がり込む。ここ最近で採用されていた4-4-2のドイスボランチから、この日は4-3-3のインサイドハーフにシフトしたことで、より攻撃に比重を置いていた坂井のプレミア初ゴール。鳥栖U-18が1点をリードして、前半の45分間は経過した。

 後半に入ると、まず輝いたのは鳥栖の右ウイング。6分。外に開いてボールを受けた楢原は、「前に仕掛けるという意識付けは練習から言われてきたし、自分の持ち味でもあります」という縦勝負から、少し中に潜って左足を振り切ると、ボールはゴールネットへ到達する。「シュート練習も毎日やってきていたので、それが実ったかなと思います。もちろん格別ですし、嬉しかったです」という楢原もこれがプレミア初ゴール。2-0。点差が開く。

 青黒のストライカーも黙っていない。14分にはドリブルで、15分には安達と左SB平川拓斗(3年)との連携から、ともに坂本が枠内シュート。どちらも鳥栖のGK大石崇太(3年)の好守に阻まれるも、17分にもCBの野中陸(3年)からパスを引き出した坂本は、右に流れながら対角にシュート。ボールは左ポストを叩きながら、ゴールへ飛び込む。これで坂本は4戦連発となるリーグ8点目。エースの“3度目の正直”で、G大阪ユースも食い下がる。

 21分は鳥栖U-18。楢原の右クロスを、オーバーラップしてきたキャプテンの左SB安藤寿岐(3年)が粘って残すと、福井のシュートはバーの上へ。26分はG大阪ユース。左から野中が入れたアーリークロスに、飛び込んだ南野のヘディングはヒットせず、枠の右へ。「鳥栖もメチャクチャ気合いが入っていて、ここまで3試合やってきた中でも、強度は群を抜いて高かったですね」(森下監督)「強度は高かったですね。その中で選手がタフに戦えたのかなという手応えはあります」(鳥栖U-18・田中智宗監督)。負けたくない両者の想いが、ピッチ上で交錯する。

 試合を決めたのは「いつも『3年生が物足りないぞ』とスタッフから言われているので、悔しい想いをしているでしょうし、(中野)伸哉がいないというのもあると思うんですけど、もっともっと3年生がやらなきゃいけないですよね」と指揮官も言及した、その3年生のストライカー。38分。右サイドから福井が放った強烈なシュートは、G大阪ユースのGK浦山泰吾(3年)が弾き出したものの、こぼれに誰よりも速く反応した途中出場のFW小西春輝(3年)が丁寧に流し込む。

「去年も良かったんですけど、ケガをしてコンディションが上がらない中で、何かきっかけを掴んでくれればなというのは凄く感じていました」(田中監督)という、9番のダメ押しゴールで勝負あり。「相手は上手かったですけど、『自分たちもできないことはないな』って前半から思っていた部分があって、もちろん球際が激しくなった試合でしたけど、そうなっても『絶対に負けない』という自信は練習から付けてきていたので、その戦いはできたかなと思います」と楢原も口にした鳥栖U-18が激しい一戦を3-1で制し、勝ち点3を手にする結果となった。

 印象的だったのは、アウェイチームのベンチサイド。交代で下がった選手も、アップエリアで戦況を見つめる選手も、相手のファールには大声を上げ、味方の惜しいシーンには頭を抱える。2点目を挙げた楢原も、3点目を決めた小西も、ゴール後はベンチへ全力疾走。オレンジ色のビブスを付けた仲間と抱き合い、歓喜を爆発させた。

「今日はメチャクチャ楽しかったです。自分たちは1つになるというのも売りなので、そこは今日の試合でわかる通り、ベンチも1つになっていましたし、去年のクラブユースでもああいう雰囲気を作ってくれたから、優勝という結果も出せたと思います。今日もこっちに来れていないメンバーも寮にいますし、そういう人たちのためにという気持ちを持っているからこそ、ああいう雰囲気に自然となれるので、そういうのもチームの良さなのかなと感じています」。笑顔で坂井が胸を張る。

 開幕戦こそ名古屋グランパスU-18に0-4で大敗したものの、以降はこれで4戦無敗。「本当にガンバさんも力があるチームで、僕らも胸を借りるつもりでという形でしたし、プレミアリーグ“1年生”としては、こうやってナイトゲームで、アウェイで、というのも初めてですし、本当に1つ1つが経験になっているのは凄く感じます」と田中監督。昨年度のクラブユース選手権日本一。最強の“1年生”が、いよいよプレミアの舞台でその確かな実力を発揮し始めている。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プレミアリーグ2021特集

TOP