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[MOM3515]鳥栖U-18MF楢原慶輝(2年)_チームで一番走れる男。圧倒的スプリンターは努力を積み上げる“近道”を辿る

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サガン鳥栖U-18で一番走れる男、MF楢原慶輝

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.4 プレミアリーグWEST第9節 G大阪ユース 1-3 鳥栖U-18 OFA万博フットボールセンターB]

「自分はチームで一番走れる自信はありますし、そこは誰にも負けないと思ってやっているので、そこは今日も出せたかなと思います」。さらっと口にした『チームで一番走れる自信』というフレーズは聞き逃せない。なぜなら、彼が在籍しているのは、おそらくこの年代で屈指のハードワーカーばかりが揃うチームだからだ。これがプレミアリーグのデビューシーズンとなるサガン鳥栖U-18(佐賀)で一番走れる男。MF楢原慶輝(2年=サガン鳥栖U-15)の限界は、まだまだ見えてこない。

 前節の大津高戦は1-1のドロー。「前半の給水前に10人というキツい状況になりながら、その中で先制して、数的不利でも勝てそうになりましたけど、最後の最後で追い付かれるという、良いゲームだったし、悔しいゲームでもあったということを経験していた分、今回は絶対勝ちたいという試合でした」と楢原も意気込む一戦は、ガンバ大阪ユースのアウェイに乗り込むナイトゲーム。1週間前に手にした勝ち点1を、生かすも殺すもこの試合次第。楢原は右ウイングの位置で、キックオフを迎える。

 相手陣内に切れ込んでいったかと思えば、自陣深くまで相手を追い掛けて、守備に奔走する。サイドバックのDF戸田峻平(3年)とのバランスも抜群。チームの大きな武器でもあるハードワークを、右サイドの位置で体現し続ける。

「本当に凄いです。ああいうスプリントを、何度も連続で90分出せるというのは彼の特徴ですね。ただ、アジリティが凄く高いので、もっともっと攻撃面で良さを出せるようにしてほしいなと。守備の所は凄く良いんですけど、攻撃の所の仕掛け方やクオリティは彼の課題なので、そこはもっと上げてほしいなと思っていますし、本人ともそういう話はしています」とは田中智宗監督。ただ、この日は後半に“攻撃面”でクオリティを発揮してみせる。

 1-0とリードしていた後半6分。右サイドでボールを持った楢原は、瞬時に選択肢を模索する。「まず前を向いて、パッと仕掛けた時に相手のマッチアップする選手が後ろに下がるのが遅く見えたので、『これは縦に行ったら自分のアジリティで剥がせるな』と」。少し運びながらイメージしたのは、「縦に仕掛けて、右足で振り切る」フィニッシュ。だが、もう一度マーカーを見て、判断を変え直す。

「相手も間に合いそうだったので、そこで上手く中にかわせて打てたのが、ゴールに繋がったと思います。あそこで判断を変えられたのが大きかったです」。少し中央に潜りながら、左足で振り抜いたシュートは、ゴールネットを揺らす。「シュート練習も毎日やってきていたので、それが実ったかなと思います。もちろん格別ですし、嬉しかったです」。念願のプレミア初ゴール。すぐさまベンチに向かって走り出し、チームメイトと歓喜を共有する。

 結果はアウェイで難敵相手に3-1の勝利。楢原はこの90分間に、確かな手応えを感じていた。「もちろん相手は上手かったですけど、『自分たちもできないことはないな』って前半から思っていた部分があって、もちろん球際が激しくなった試合でしたけど、そうなっても『絶対に負けない』という自信は練習から付けてきていたので、その戦いはできたかなと思います」。“その戦い”の中で、鳥栖らしさを体現し続けた8番のパフォーマンスは、際立っていたと言っていいだろう。

 既にU-18のチームメイトも続々と公式戦デビューを果たしているトップチームのイメージも、明確に捉えている。「何年か前だと蹴るというイメージが多かったんですけど、今はどこのチームにも負けないくらいパスを回していて、ポゼッションサッカーができていますし、みんながとにかくスプリントのような走ることも多く出しながら、正確なパスを出せるので、そこは見習いたいです」。そのグループの中に飛び込むことももちろん念頭にはあるが、目の前の為すべきこともしっかりと見つめているようだ。

「代表でも言われるんですけど、17歳までにトップデビューという所で、そこは一番の目標ですし、チームがこういう日本の中でも非常に良い大会に参加しているので、そこで結果を見せることが、年代別の代表に選ばれる一番の近道かなと思います」。

 最短距離を走らなくても、必ず目指すべき場所に辿り着いてきたスプリンター。楢原が1つ1つ着実に積み上げている努力はきっと、彼の立つべきステージをさらに上へと引き上げていく。

(取材・文 土屋雅史)
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