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際立つ「他の人が持っていないもの」。昌平DF本間温士がチームに映す規格外の個性

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昌平高の右サイドバック、DF本間温士は規格外の魅力を有する

[7.24 高円宮杯プリンスリーグ関東第5節 前橋育英 0-0 昌平 前橋育英高崎G]

 おそらくは自分でも気付いていない程のポテンシャルが、その身体には詰め込まれている。一言で言えば、規格外。その爆発的なスピードも、半ば無意識にゴールへの最短距離へ走っていってしまうようなドリブルも。「自分は他の人が持っていないものを持っていると思うので、どれだけそのプレーが出せるかというところが大事だと考えています」。テクニックに秀でた選手が揃う昌平高の中でも異質な存在。DF本間温士(3年= FC LAVIDA出身)が走り出したレールの行方は、まだまだいくらでも先へと伸び続けている。

 そのシーンは唐突にやってきた。前橋育英高(群馬)との対戦となった、プリンスリーグ関東第5節の前半32分。自陣の右サイドでボールを受けた本間は、中へとドリブルをスタートすると、そのまま縦方向に加速して相手陣内へ侵入。いったんはコントロールが大きくなり、相手DFにボールを渡してしまったにもかかわらず、それを一瞬のプレスで奪い返し、味方のシュートへ繋げてしまう。

 ドリブルのコース取りも、失ったボールの回収の仕方も、おそらくは敵も味方も想定外。ただ、それが効果的な攻撃へと昇華してしまうところに、この男の不思議な魅力が隠されている。

 右サイドバックを務める本間が、この日対峙したのはU-18日本代表候補のMF笠柳翼(3年)。そのドリブルの切れ味には定評があり、このサイドの主導権争いは試合の展開にも直結するような大事な見せ場だった。

「10番(笠柳)とはマッチアップしながら上手さを感じていて、そこでいっぱいいっぱいになっちゃって、相手のサイドバックの上がりに対応することが遅れてしまいました。10番は逆を取る動きが上手くて、カットインだけじゃなくて縦もありましたし、中に入ったらキックフェイントもあって、シュートのパンチ力もあるので、ゴールを決めさせなかった点は良かったと思いますけど、もっとできたんじゃないかなと思います」

 後半4分にも笠柳とマッチアップ。中央を切りながら、縦へのドリブルに粘り強く対応し、シュートブロックを敢行する。「自分は縦の突破への対応には自信があるので、縦に誘導して自分の狙い通りの守備ができました」。駆け引きで上回ったワンプレーに、その高い能力も垣間見える。

 本格的にサイドバックへトライしたのは、FC LAVIDAに所属していた中学生時代から。「その後も前をやったり、サイドバックをやったりしていましたけど、結局ドリブルで侵入したり、3列目から飛び出したりするので、自分が一番生きるポジションはサイドバックだなと思っています。走力は自分の武器ですし、スピードで仕掛けるプレーを試合で何回出せるかというところで、その回数も増やしていきたいです」。

 本人曰く「50メートルは5秒8か9ですけど、100メートルの方が自信があるかもしれないです」とのこと。瞬時にトップスピードにも乗れるが、距離が長いほどより加速していくタイプ。上下動を厭わないどころか、むしろやればやるほど持ち味が出ることもあって、とにかくサイドを駆け上がれるスピードとメンタルは、より高いステージでプレーするうえでも大いにアドバンテージとなるはずだ。

 理想のサイドバック像は、自分の中でイメージできている。「海外の選手だったらバイエルンのアルフォンソ・デイビスが一番好きな選手で、やっぱりスピードで縦を一発でぶち抜いて、敵を置き去りにするプレーが好きなので、試合前に見て参考にしています。日本人だと山根視来選手(川崎フロンターレ)が好きで、自分と似たタイプではないと思うんですけど、得点力もありますし、『こんなところにサイドバックがいるんだ』というポジション取りをするので、そこは参考にしています」。

 確かにこの日の中央を切り裂いていったドリブルは、アルフォンソ・デイビスのようで、山根視来のようなそれ。あのプレーができる選手は、この年代を広く見てもそういるものではない。

「自分の目標はプロサッカー選手なので、そうなるためにはまだまだ克服しなければいけない課題が多々あって、ビルドアップ1つとってもまだ落ち着きがないというか、周りに助けられている部分があるので、そこはしっかり自分で練習して、周りを見極めてやりたいですし、守備のポジショニングは結構監督から指摘されるので、そこはもう指摘されてからではなく、自分で直していきたいです。今日は比較的良かったと思うので、だんだんと日々成長できるように頑張りたいと思います」。

 もちろんビルドアップも、守備のポジショニングも、そつなくこなせるに越したことはない。だが、彼の「他の人が持っていないもの」はあまりにも特別。昌平でプレーするからこそ、一層際立つ本間の個性は、チームを一段階も二段階も魅力的なものに仕上げている。

(取材・文 土屋雅史)
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