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「この学年のメンバーでやるサッカーが好きだから」。FC東京U-18MF高橋安里は“みんな”とプレミアのピッチへ

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先制点を挙げてチームメイトと喜ぶFC東京U-18(B)のMF高橋安里(7番)

[9.4 高円宮杯東京1部リーグ第9節 FC東京U-18(B) 2-3 関東一高]

 3年生のこの時期になって、改めて気付いたことがある。「自分は『サッカーが好きだね』ってよく言われるんですけど、サッカーが好きというか、この学年のメンバーでやるサッカーが好きだから、努力もできますし、みんなとピッチに立ちたいから自主練もできるので、今になって仲間の大切さを身に染みて感じています。みんなもたぶんのし上がってきて、プロの世界に来てくれると自分は思っているので、大学の4年間を経て、またこのピッチに戻ってくるためにも、さらに残りの4か月も1回1回の練習で手を抜かずに、みんなとサッカーしたいと思っています」。

 FC東京U-18のナンバー7。MF高橋安里(3年=FC東京U-15むさし出身)はこのチームでボールを追い掛ける意味を、このチームで過ごす日常の意味を、1つずつ噛み締めながらピッチに立っている。

 間違いなく最初の45分間は、圧倒的な主役だった。関東一高と対戦したT1(東京都1部)リーグ第9節。FC東京U-18(B)のキャプテンマークを巻いた高橋は、チーム唯一の3年生として、立ち上がりからフルスロットルでアクセルを踏み込む。

 前半6分には先制点。左サイドを巧みな連携で崩すと、ボランチのレフティMF小川雄輝(2年)から速いクロスが入ってくる。「フォワードに大きな熊田(直紀)がいるので、『そのこぼれ球を狙おうかな』という感じでスルスルとバイタルに入って行ったら、良い感じでボールが来て、ワンタッチでいなしてシュートというイメージはボールが来た時に頭の中に浮かんだので、それを実行できて良かったです」。マーカーを浮き球で外すと、右足で左スミのゴールネットへグサリ。完璧な得点を奪ってみせる。

 前半41分には追加点。「比較的マイナスで受けることは意識していたので、自分と同じイメージを共有できていたのかわからないですけど、翼が自分の欲しいところにくれて、シュートはファーに流し込むことを意識したら、たぶん相手の股下を抜けて入ったと思うので、結果オーライです」。右サイドからFW渡邊翼(1年)が折り返したボールを、右足でゴール左スミへ流し込む。2ゴールとも利き足とは逆の右足でゲット。2点のリードを自らの活躍で引き寄せる。

 だが、後半7分に迎えた決定的なシュートを枠の上へ外すと、ハットトリックを逃した高橋と歩調を合わせるかのように、そこからゲームリズムは一変してしまう。「アレを決めていれば試合展開的にも楽になったと思いますし、あのシュートはだいぶ練習している形で、その成果をこういう舞台で出せなかったのは心の緩みとかいろいろあるはずなので、練習を重ねて確実に自分のモノにできるようにしていきたいです」。

 試合はそこからまさかの逆転負け。「攻守合わせて、100点中60点ぐらいですね。攻撃の部分は、課題に挙げていた“質”の部分が全体を通して今までより良くできていたんですけど、やっぱり守備の時間帯が増えてきた時に、フィジカル面でも劣っている分、走力で補えていなかったところを考えると、納得できない感じです」。厳しめの自己採点を口にしたものの、高橋の個は間違いなくチームをポジティブに牽引していた。

 忘れられない試合がある。7月31日。クラブユース選手権。浦和レッズユースと対峙した準々決勝で、1点を追う後半終盤に高橋はピッチへ解き放たれた。「1,2年でまったくアイツらとプレーできていなくて、もう3年生で最後の全国大会になるかもしれなかったですし、凄く気合も入っていて、どういう立ち位置になろうと全力でやろうと決めていた中で、最後にチャンスをもらったので、もう大げさになっちゃうかもしれないですけど、人生を懸けて、『コイツらと一緒にやるサッカーは最後だ』というぐらいの気持ちで、勝つことだけ考えていました」。

 後半40分に追い付いたものの、最後はPK戦で敗退を突き付けられたゲームから、今後への大きなヒントを得たという。「うまく行かない時って、自分の中に迷いというか、考え過ぎちゃう部分があるんですけど、自分は感覚的なプレーヤーでもあるので、あの試合で『みんなと勝ちたい』という気持ちが前面に出た時に、眠っていた感覚的なプレーがまた甦りつつあったので、数分だったんですけど、アレで“感覚”のキッカケは掴めました」。

 青赤のユニフォームに袖を通す自分に残された時間は、決して長くない。周囲への感謝を胸に、さらなる飛躍を誓う。「現実的な自分の立ち位置が、3年生の中だと唯一プレミアの試合に出ていないという立場なので、こういうTリーグという公式戦でプレーできることに感謝の気持ちを持たないといけないですし、そう考えたらチームを勝利に導くという姿勢が今日は足りなかったですけど、背中で語れるぐらい大きな選手になっていけたらなと思います」。

『この学年のメンバーでやるサッカーが好きだから』。高橋は小平のグラウンドでみんなと一緒に自分を磨き、より成長した自分を披露するプレミアの舞台を虎視眈々と狙っていく。

(取材・文 土屋雅史)

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