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[東京都2部L]空色のユニフォーム、躍動。東久留米総合は東京朝鮮を2-0で下してリーグ首位に!

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東久留米総合高はMF萩原草汰(20番)が先制ゴール!

[9.5 高円宮杯東京2部リーグ第9節 東久留米総合高 2-0 東京朝鮮高]

 常に“都立の雄”であり続けようと、彼らは社会情勢も含めた難しい状況の中でも、しっかりと前を向いている。「大げさな話ですけど、自分たちの存在意義というか、我々はやっぱり『都立の中で一番でありたい』というところを証明するための最後の場が選手権だと思っていて、関東大会、インターハイと非常に苦しい状況が続いた中で、彼らは決して力がないわけじゃないと僕は思っているので、『今年はなかなか見かけなかったけど、最後はやっぱり久留総がここまで来るんだね』というところを絶対に示したいなと思っています」(東久留米総合高・加藤悠監督)。

 復権を期す空色のユニフォーム、躍動。5日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2021東京2部リーグ(T2リーグ)第9節で東久留米総合高東京朝鮮高が激突。前半は東京朝鮮が押し気味にゲームを進めたものの、後半に2ゴールを挙げた東久留米総合がきっちり勝ち切り、暫定ながらリーグ首位に躍り出た。

 立ち上がりから鋭い動きを見せたのは、「最近負けが続いていたので、最初から全力で行こうと言っていました」とキャプテンのDFク・チャンド(3年)も話した東京朝鮮。前半8分には中盤アンカーのMFキム・ヒョンジョン(1年)が右へ振り分け、DFソン・スンイ(1年)のクロスにFWチャ・ミョンギ(3年)が合わせたヘディングは枠の左へ外れたが、2人の1年生が絡んで決定機を創出。以降もMFキム・サンウォン(3年)やMFパク・ソラ(2年)を中心に、攻勢を続ける。

「最後のアタッキングサードのところが非常に雑というか個人任せで、僕からしても『どうしたんだろう?』と。アイデアは大切にしているんですけど、ちょっと独りよがりなアタックが多かったですね」と加藤監督も話した東久留米総合は、FW宇野穣一郎(3年)やMF池田豪(2年)がミドルシュートを放つも、エリア内へはなかなか侵入できず。キャプテンのGK武田涼佑(3年)も「相手の勢いを受けてしまった所がありました」と言及するなど、守勢に回る時間が長くなる。

 29分も東京朝鮮。右サイドでの崩しから、ソン・スンイが頭で繋ぐと、MFキム・キョンジ(2年)のスライディングシュートはゴール右へ。41分にはキム・サンウォンが蹴った左CKから、チャ・ミョンギがドンピシャのヘッドで叩くも枠の右へ。45+2分にもパク・ソラが左サイドを単騎で切り裂き、上げたクロスはニアのキム・キョンジがわずかに届かなかったものの好トライ。東京朝鮮が押し気味に進めた前半は、スコアレスでハーフタイムに折り返す。

 流れを変えたのは、もう1人のキャプテンの投入だった。後半16分。東久留米総合ベンチはピッチにMF西郷薫(3年)を送り込む。「薫はフィールドのキャプテンで、彼がケガからようやく戻ってきて、30分なら行けると。正直そこを待っていたというところですね。薫をピッチに入れるまで最少失点か0-0であれば流れは来るなと思っていました」(加藤監督)。そして、試合はその2分後に動く。

 18分。右サイドで西郷とMF栗原滉(3年)が関わり、崩した流れからMF岡田壮太(3年)がヒールで蹴り上げたボールが、エリア内へ高く舞い上がると、3列目から走り込んだMF萩原草汰(2年)はいち早く落下地点に到達。「高いボールだったので、強いシュートは無理だなと思って、ファーに山なりのボールを打とうと」浮かせたヘディングが、GKの頭上を破ってゴールネットへ弾み込む。

「苦しい時間帯に点は獲りたいと常に自分では思っていました」という2年生ボランチは、これがAチームでの公式戦初ゴール。「ゴールはみんなで獲った部分もあるんですけど、やっぱり薫があそこに戻ってきてくれたのが大きかったです」と指揮官も認めるフィールドのキャプテン投入も奏功した東久留米総合が、1点のリードを奪う。

「1点獲れたことで相手も出てきてくれたので、それでこっちもボールが動くようになって、カウンターも徐々に出るようになっていきましたね」(武田)。勢いの付いたホームチームの追加点は33分。岡田のパスを受けた宇野は、ゴールまで30メートル近い位置からミドルにトライ。カーブを描きながら最高の軌道を辿ったボールは、ゴールネットを鮮やかに揺らす。

「あそこまで持っていくことはいつもできるんですけど、アレはたまたまだと思います(笑)」と守護神も笑顔で振り返った宇野のゴラッソで、勝負あり。「難しいゲームになるなと思っていた中で、『これは大人になるゲームだね』と飲水タイムやハーフタイムに送り出したので、よく立て直して、結果を手に入れたことは非常に評価できる試合かなと思います」と指揮官も評価を口にした東久留米総合がリーグ3連勝を飾り、暫定首位の座をさらう結果となった。

 東久留米総合は関東大会予選、インターハイ予選とともに初戦で敗退。今シーズンはトーナメントでの勝利がまだない状況だ。「関東もインターハイも1回戦で負けて、自分たちの甘さを早い段階で突き付けられたので、そこからは練習でもケンカするほど熱くなったり、そういう部分を自分たちから出すことができていると思います。特にインターハイで負けてからは『もう負けたくない』というのがあって、周りの人たちからも今年は弱いと思われているので、そこはリーグ戦で1つずつ勝つことで見返していけるのかなというのはあります」と武田。5月までに味わった悔しさを、ポジティブな形でチームの成長に繋げている雰囲気が窺える。

 2年前に選手権予選を勝ち抜き、全国を経験した代のチームも、大会前までは決して優勝候補というわけではなかった。「あのチームは選手権前に駒澤(大高)とやって1-7、成立学園には0-8ぐらいで、2回も大差でやられていて、それでも諦めずにやっていたので、それと比べたら練習試合でも最近は強豪にもしっかりやれていますし、勝ち癖みたいなものはあると思います」(武田)。当時をAチームの一員として経験しているキャプテンの存在も、このグループにとっては大きなアドバンテージだ。

 今年のチームの特徴を問われ、「子供っぽさもあるんですけど明るいチームですし、シーズンの最初が苦しかった分、大人になってきている選手が見られていて、本当に伸びしろがまだまだこの1か月であるなというのは感じているので、そこがこのチームの特徴かなとは思っています」と答えた加藤監督も、少しずつ、少しずつ掴んできた手応えを隠さない。

「彼らの力がなければ、T2リーグでこういう結果は手にできないと思っていますし、選手権はリーグのカテゴリーとか、実力とかではない勝負だと思っているので、そういった考えをしっかり植え付けて、上を狙いたいとは思っています。やっぱり関東大会とインターハイの結果が悔し過ぎましたし、『全国にチャレンジしていきたい』と3年生が思っているはずなので、後押しできればと思っています」。

 空色のユニフォームを纏った“都立の雄”、再び。東久留米総合が挑む今シーズン最大の戦いの幕開けが、いよいよそこまで迫っている。

(取材・文 土屋雅史)

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