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[東京都1部L]「上手くて強い久我山」再び。國學院久我山は堀越に6発大勝で選手権に大きな弾み

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國學院久我山高の2点目。ゴールの加藤圭裕(8番)とアシストの飯塚弘大(6番)

[9.23 高円宮杯東京1部リーグ第2節 堀越 1-6 國學院久我山高]

 上手いのは大前提。そこにどんなプラスアルファを加えていけるかが、その年の彼らの特徴を形作っていく。大きなイメージはマンチェスター・シティ。1人が2つ以上のポジションをこなしつつ、その状況に応じて個々の最大値を掛け合わせていくことで、チームにとっての総和を大きくしていくことに、今年のチームは取り組んでいる。

 個人とグループの幅を広げつつある中での大きな勝利。23日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2021東京1部リーグ(T1リーグ)第2節で堀越高國學院久我山高が対戦。前半で大量5ゴールを奪った國學院久我山が、6-1という衝撃的な大勝でリーグ前半戦のラストゲームを締め括った。

 試合はいきなり動く。前半4分。國學院久我山のFW小松譲治(3年)が枠内シュートを放つと、いったんはキャッチしたように見えたGKがボールをこぼしてしまう。「譲治がシュートを打ったあとに、『もしかしたらこぼすかな』と思って一応走っておいたら、本当にこぼしてくれたので、そこを詰めた感じでした」というMF加藤圭裕(3年)がきっちりプッシュ。意外な形で國學院久我山が1点をリードした。

 すると、次の得点も今までの定位置だったインサイドハーフではなく、最前線で起用されたナンバー8。19分。中盤アンカーを務めるMF飯塚弘大(3年)のスルーパスに、「センターバックが後ろから来ていたんですけど、その力をうまく利用して前を向けました」と振り返る加藤は巧みに抜け出し、GKとの1対1も冷静にゴール左スミへボールを蹴り込む。公式戦では初めてセンターフォワードを任された加藤は、早くも2ゴールを記録。点差が開く。

 続く主役は、センターフォワードからインサイドハーフにコンバートされたナンバー9。20分。FW安田修都(3年)のパスを加藤がスルー。ディフェンスラインの裏へ飛び出した小松は、「オフサイドかなと思ったので、逆にファーストタッチの力がうまく抜けましたね」と絶妙のコントロールからループ気味のシュートをゴールネットへ流し込み、3点目。さらに小松は23分にも再び安田からパスを受けると、右から豪快なシュートをゴール左スミへグサリ。「自分はゴール前のプレーが課題と言われていたので、決め切ることができて良かったと思います」と話す“新米インサイドハーフ”も3分間で2ゴール。スコアボードに4-0という数字が浮かび上がった。

「相手の運動量に負けていたのもそうですし、1対1のゴール前の対応は完全に自分たちの弱い部分が出てしまったなと思います」とMF山口輝星(3年)も言及した堀越は、4点のビハインドを追い掛ける展開に。40分にはMF古澤希竜(3年)のパスから、山口が強烈なミドルシュートをゴールに突き刺して1点を返したものの、その1分後には國學院久我山も左サイドをドリブルで切り裂いたMF中山織斗(2年)が5点目をゲット。5-1という予想外のスコアで、最初の45分間は終了した。

「後半は少し割り切ったというのもあると思います。選手権で青森山田とやった時の後半じゃないですけど、4失点しても、自分たちがやってきたこと、相手云々というよりもオレたちがどうしたいのかというところをちゃんと出そうと。それが多分次のゲームとか、次の次のゲームとか、それは選手権も含めて、繋がっていくのかなと」とは堀越の佐藤実監督。堀越もねじを巻きなおした後半は、オープンに撃ち合う展開に。

 4分は國學院久我山。10番を背負うドリブラー、安田がエリア内へ潜って打ち切ったシュートは、堀越のGK菅野颯人(3年)が意地のファインセーブ。6分は堀越。MF中村健太(1年)の右CKに、キャプテンのMF宇田川瑛琉(3年)が合わせたボレーは枠の上へ。9分は國學院久我山。左SB飯野広陽(3年)を起点に加藤が繋ぎ、MF山脇舞斗(1年)のフィニッシュはここも菅野がファインセーブ。直後の9分は堀越。MF東舘大翔(2年)が巧みなラストパスを送り、抜け出した山口のループは枠の右へ。お互いにチャンスを作り合う中で、堀越も十分にゴールの可能性を漂わせる。

 ただ、22分に生まれたのは“2点目”ではなく、“6点目”。ゲームを通じて鋭い出足が目立った飯野が、ここも積極的なパスカットから左へ流すと、ドリブルで運んだ中山は丁寧なシュートを右スミのゴールネットへ滑り込ませる。ファイナルスコアは6-1。「普段コーチからは“単発集団”と言われているんですけど、単発ではなくて、流れができればチームとして点が獲れるぞとは感じていた中で、最近は2試合連続で無得点とあまり流れが良くなかったので、うまく立ち上がりに点が獲れたことが良かったですね」と小松も話した國學院久我山が“久我山らしさ”を打ち出しながら、勝ち点3も同時に手に入れる結果となった。

 駿台学園高に敗れ、全国への道を断ち切られたインターハイの準々決勝から、この日のスタメンは5人が入れ替わり、同じポジションに付いていたのもGKの村田新直(3年)、レフティの左SB飯野、中盤アンカーの飯塚といわゆる“専門職”の3人のみだった國學院久我山。前述した加藤と小松のコンバートに加え、右サイドでの縦突破に特徴を持つMF高橋作和(2年)が後半から中盤アンカーに入れば、センターバックはDF馬場翔大(1年)とDF普久原陽平(1年)の1年生コンビが担い、夏前までは中盤起用の多かったキャプテンのMF森次結哉(3年)は右SBでプレーするなど、各々がこの時期になっても新たな可能性を探っている様子が窺える。

 とはいえ、センターフォワード起用に2ゴールという結果で応えた加藤が、「久我山はパスサッカーだと思うので、時には自分で行くことも大事ですけど、どんどん味方を使って、パスワークで相手を崩せたらいいのかなと思います」と口にした通り、それはあくまでもベースとなるスタイルの共通理解があった上でのマイナーチェンジ。人が変わっても、ポジションが変わっても、やるべきこと自体は何ら変わらないという意志が、この時期でのコンバートもスムーズに進ませていることは間違いない。

 1年時の選手権でも全国のピッチに立っている小松の言葉が印象深い。「インターハイを経て、最近は徐々に良いチームになっていっていると思うんですけど、やっぱりまだ例年の久我山というか、“上手い久我山”と思われているはずなので、そこからさらにランクアップして、“上手くて強い久我山”になれるように、しっかりと勝ち切れる力を付けていきたいと思います」。

 まさに2年前、冬の全国16強まで進出したチームが掲げていたのも“上手くて強い久我山”だった。上手いのは大前提。そこに複数のポジションをこなせる多様性や、ゴールを奪い切れる強さを加えていきそうな國學院久我山が、再び東京の覇権を取り戻すべく、選手権予選に向けて鋭い牙を研ぎ始めている。

(取材・文 土屋雅史)

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