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「どんなポジションでもやってやる」。國學院久我山FW小松譲治はどこにいてもゴールを奪う

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FW小松譲治は巧みなトラップからチーム3点目を挙げる

[9.23 高円宮杯東京1部リーグ第2節 堀越 1-6 國學院久我山高]

 ポジションにこだわりはない、このチームで戦うことのできる最後の1年。ポジションにこだわっている時間なんてない。またあの全国の舞台へ戻るために、自分にできることを、与えられた場所で、やるだけだ。

「センターフォワードじゃないポジションが嫌だとはまったく思わなくて、どこのポジションをやっても自分のプレーはそんなに変わらないので、『どんなポジションでもやってやる』という感じてす」。ストライカー気質のインサイドハーフ。國學院久我山高の攻撃を牽引するFW小松譲治(3年=ジェファFC出身)は、どこでプレーしていても、ゴールと勝利のために全力で戦い続ける。

「8月の頭ぐらいからですね。役割として自分がこのチームの中である程度ボールを持てる選手だから、中盤にしたというのは言われています」と話す9番が、見慣れない中盤の中央に立っている。1年時からセンターフォワードで起用されることの多かった小松は、堀越高と対峙したこの日の試合で、インサイドハーフを任されていた。

「いつもだったら立ち上がりでシュートを外したりして、相手に流れを持っていかれて失点する形が多くて、ゼルビア戦もゲーム自体は悪くはなかったのに、そんな感じの展開で0-3と負けてしまったので、今日はフォワードもいつも違って加藤がやっていたんですけど、うまく立ち上がりに点が獲れて良かったです」。前半4分と19分に、公式戦で初めてセンターフォワードでスタメン起用されたMF加藤圭裕(3年)が続けてゴールを奪うと、その後は小松に“順番”が回ってくる。

 20分。FW安田修都(3年)のパスを加藤がスルー。ディフェンスラインとの駆け引きを経て、裏に飛び出した小松へボールが届く。「オフサイドかなと思ったので、逆にファーストタッチの力がうまく抜けましたね」。左足のインサイドでトラップすると、そのままの流れでループ気味のシュートを選択。ボールはゴールネットへ弾み込む。

「実はアレがT1での今季初ゴールだったんですけど、得点自体も関東予選の2回戦で当たった日大三高戦以来でしたし、自分はゴール前のプレーが課題と言われていたので、決め切ることができて良かったと思います」。4月以来となる約5か月ぶりに公式戦でゴールを挙げると、すぐさま次の得点も付いてくる。

 23分。左からMF中山織斗(2年)がサイドを変えたボールは右まで届き、安田はすかさず優しくラストパス。GKと1対1になった小松が右足で振り抜いたボールは、ゴール左スミヘ突き刺さる。「練習試合や紅白戦ではゴールを獲れていたので、そこまで獲れていない感じはなかったですし、決定力が上がったのかどうかはわからないですけど(笑)、2点獲れたので自信には繋がりますね」。6-1という大勝を収めた中で、インサイドハーフで2点を決め切った小松の躍動は、チームにポジティブな推進力を確実にもたらしていた。

 インサイドハーフは性に合っているようだ。「フォワードをやっていた時もちょっと落ちてというプレーが得意だったので、冗談でよく『オレはインサイドハーフもできるよ』とか言っていて、みんなはあてにしてなかったと思いますけど(笑)、自分ではそこもあると思っていましたし、国体やトレセンの活動でも中盤のポジションだったので、自信はあります。自分はボールに触るのが好きですからね」。受けて、捌いて、決める。この一連はセンターフォワードでも、インサイドハーフでも、変わらない。

 忘れられない試合がある。今年のインターハイ予選準々決勝。駿台学園高と対峙した試合のスタメンリストに、小松の名前は見当たらなかった。「『今年は自分が中心にやってやろう』という感じだったので、あの時は本当にメチャメチャ悔しかったですけど、あの経験があって生まれ変わったというか、少し謙虚になったと言ったら言い過ぎかもしれないですけど、自分の考え方が変わって、よりチームのためにという想いが強くなったので、駿台戦にスタメンで出られなかったことは、良い経験になったと思います」。でも、もうあんな想いはしたくない。そのためには結果を出すこと。意識は十分に高まっている。

「今日も自分は暑さとかもあって90分間走り切れなかったんですけど、そういうところでまだまだ甘さがあると思っていますし、インターハイを経て、最近は徐々に良いチームになっていっていると思うんですけど、やっぱりまだ例年の久我山というか、“上手い久我山”と思われているはずなので、そこからさらにランクアップして、“上手くて強い久我山”になれるように、しっかりと勝ち切れる力を付けていきたいと思います」。

 ポジションが変わっても、やはりこの男にはゴールがよく似合う。得点を獲れるインサイドハーフへ。小松の新たな挑戦は、チームに小さくないエネルギーとパワーを注入し続けていくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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