beacon

北越と打ち合ってのスコアレスドローも、新潟U-18は“新潟らしさ”と“スペイン流”のハイブリッドに挑戦中

このエントリーをはてなブックマークに追加

試合後に悔しさを滲ませるアルビレックス新潟U-18の選手たち

[9.25 高円宮杯プリンスリーグ北信越第16節 新潟U-18 0-0 北越高 新潟聖籠スポーツセンター]

「前回は北越に負けていたので、みんなで良い準備をして、気合を入れて臨みました。守備では無失点でしたけど、攻撃ではチャンスがなかったわけではないので、あとは決め切る力が自分たちの追わなくてはいけない課題だと思います」(新潟U-18・高橋蒼天)「前半の途中からは全体的に前に行くというところが共有できて、戦い方もハマり始めて、チャンスもあったんですけど。それを決め切れなかったのが課題ですね」(北越高・五十嵐暉)。

 お互いに攻め合ったものの、ゴールは生まれず。25日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープリンスリーグ北信越第16節、アルビレックス新潟U-18(新潟)と北越高(新潟)の“新潟対決”は、双方が何度も決定機を作りながらスコアレスドロー。勝ち点1ずつを分け合う結果となった。

 いきなりのチャンスは5分の新潟U-18。「前半は全体でリスクは負わず、相手の裏を突こうという意図がありました」と10番を背負うMF高橋蒼天(3年)が話した、“相手の裏”へ1本のフィードでFW大矢瑞樹(3年)が飛び出してシュートを放ち、北越もGK内田智也(2年)が好セーブで応酬したものの、まずはホームチームが惜しいシーンを創出する。

 北越の反撃は12分。セットプレーの流れから、キャプテンを務めるMF五十嵐暉(3年)が右クロス。待っていたDF高橋泰輝(1年)のヘディングは「理想通りのボールが来たんですけど、良いところに当たり過ぎてボーンと行っちゃいました」とわずかに枠外へ。さらに24分にはここも五十嵐が右から蹴り込んだCKへ、ニアに再び高橋泰輝が突っ込むも、ヘディングはやはり枠外に。「昨日の練習では泰輝も決めてくれていたんですけど、今日は決めてくれなくて(笑)」と五十嵐も苦笑交じりに言及。先制点は生まれない。

 以降もペースは北越。「『積極的に前掛かりに行って、点を獲りに行こう』という話をして、前からどんどん追って行かせたんですけど、凄く守備のところで頑張って、なおかつそこから攻撃に転じて、というところができていました」と荒瀬陽介監督も口にした通り、FW小林謙心(2年)とFW高橋航輝(1年)の2トップがきっちりプレスに走り、セカンドの回収も含めたボール奪取から素早いアタックを。35分には右SB鈴木洸星(3年)が裏へ落とし、高橋航輝が粘って残したボールを、MF堀野辺空(2年)が枠内シュートまで持ち込むも、ここは新潟U-18のGK高畑優太(3年)がファインセーブ。両者譲らず。前半は0-0で45分間が終了した。

「前半はずっと一緒のテンポでやっていて、ここでスイッチを入れないといけないというところを逃していて、相手が整ってからまた行こうとしているシーンが多かったので、後半はどのタイミングで勝負に行くかは、自分たちでメリハリを付けた中でやろうと話しました」とは新潟U-18を率いる入江徹監督。後半に入ると、ドイスボランチのMF猪股大翔(3年)とMF山本倖生(3年)の配球も冴え始め、掴んだゲームリズム。

 17分。リーグ初出場の左SB大竹優心(1年)が粘って獲得した左CK。猪股のキックにCB丸山嵩大(2年)が飛び込むも、シュートは枠の右へ。直後にも大矢のラストパスから、高橋蒼天は「ちょっとボールは外側だったんですけど、ここは打つしかないと。『入ってくれ』と思って」シュートを打ち切るも、内田がキャッチ。10番は全身で悔しがる。

 31分は新潟U-18に決定機。「踏ん張って、踏ん張って、攻撃に繋げたいという共通認識はチーム全体にあったので、今日はそこに懸けていました」というキャプテンの右SB黒田舜治(3年)の鋭い縦パスを大矢が繋ぐと、途中出場のMF丸山皓己(1年)のシュートはわずかにゴール左へ。39分は北越に決定機。堀野辺が右へ流したボールを、こちらも途中出場のFW林叶磨(2年)がフィニッシュまで持ち込んだが、「自分がどうなっても、自分を犠牲にしてでも守備するのは当たり前だと思ってずっとやっているので、最後にああやって守れて良かったかなと思います」と話す丸山嵩大が懸命に右足を伸ばしてクリア。スコアは動かず。続く0-0の均衡。

 終盤は両チームの選手が相次いで足を攣らせる状況の中、43分には北越3枚目の交代カード、MF佐藤恵太(1年)が決定的なシュートを打ったものの、ここも高畑が意地のファインセーブを見せると、これが両チームにとって最後の枠内シュート。「時間が経つにつれて点が入らないという焦りが出てきて、もっと落ち着いてプレーすれば良いところで急いでしまって、結局チャンスをチャンスにできなかったりというところがあったかなとは思いました」と語ったのは入江監督。竜虎相搏つ好ゲームはスコアレスドローで決着を見た。

 2年ぶりに新潟U-18へ帰ってきた入江監督は、「1年離れてみて、良いところも『あれ、こんな感じだったっけ?』というところもありますけど(笑)、そこはまた新たにダイレクターが変わった中で、クラブとしてもアカデミーも良い方向に進んではいるのかなと思います」と言及している。

 かつては酒井高徳や早川史哉も指導し、阿部航斗や本間至恩、藤田和輝らも教え子に数えられるように、10年以上もこのクラブでアカデミーに携わってきた指揮官だからこそ、スペインの風が吹いている今の流れをポジティブに捉えつつ、もともと積み上げてきたモノとの融合には明確な考えがあるようだ。

「また違った角度からの選手へのアプローチが、もっとしっかりとしたものになっていったら、選手も僕らも含めて今までとまたちょっと違った形で成長していけるんじゃないかなという面で、まだ結果が出るのには時間が掛かるとは思いますけど、これを確立したものにして続けていければ、いろいろな部分が変わってくるのかなと」。

「そこで今までやってきた“新潟らしさ”はありながら、スペイン的な所を意識すると。その中でまた少しずつ変化していくという形にしていかないと、一気にガラッと変えてしまうだけだと、『今までの新潟らしさってどうなの?』となってしまいますし、もちろん良い部分があったからここまで来ているクラブなので、“根っこ”の部分はしっかりやらないといけないなと思いますし、それは大事にしながらもというところを、アカデミーダイレクターの内田(潤)を中心にしながら、考えているところですね」。

 高橋蒼天が興味深い話を教えてくれた。「自分が中学校2年生の頃のジュニアユースの監督が入江さんで、その頃も今でも『オマエは守備が課題だ』と言われてきていますね。3年前ぐらいから入江さんに言われています(笑)」。当然高橋も守備面での成長は遂げてきている中で、おそらくは課題の質と求めるレベルが変化していることは想像できる。ただ、いわゆる“根っこ”の部分を外さないような指導が行われていることが、よくわかるエピソードではないだろうか。

 それぞれの指導者や選手の色を生かしながら、果敢に“新潟らしさ”と“スペイン流”のハイブリッドへトライしている新潟U-18。彼らがこれからどういう過程を経て、どういうチームに進化していくのかが、とにかく楽しみだ。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プリンスリーグ2021特集

TOP