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[MOM3587]富山一DF湯川信治(2年)_際立つ強さの秘訣は“元日本1位"のブラジリアン柔術。心と体兼備の新星

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富山一高の2年生DF湯川信治は抜群の強さとメンタリティーを発揮

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.2 高円宮杯プリンスリーグ北信越第17節 富山一高 1-1 富山U-18 富山一高G]

 富山一高の大塚一朗監督はプリンスリーグ開幕戦から起用しているという2年生DFについて、「スピリットは日本人にないような戦う姿勢。みんながああなって欲しい」と語る。そのDF湯川信治(2年=STG出身)が、富山一の中で一際存在感を放ち、試合終了間際には志願して同点PKを決めた。

 対人の強さは特筆モノだ。「対人は武器だと思うので、そこは負けずにどんな相手でもやっていけると思っています」と語るDFは、競り合いでガツンと止める強さを発揮。抜け出そうとする相手選手のランニングコースに入って完璧にブロックしていた。

「開幕戦から出られると思っていなかった」という今季、当初は不安を抱えながらのプレーだったという。だが、試合を重ねながら徐々に球際の強さやキック精度という武器を表現できるようになった。3バックの右サイドで先発したこの日はストライドの大きなドリブルでプレスを剥がして前進し、サイドチェンジも。ヘディングは「まだまだ。身長は自分高い方じゃないので、落下地点に速く入るのも、先跳ぶのも、色々な駆け引きがあって、そこで勝っていかないといけないと思う」と語るが、高い打点から豪快に跳ね返すシーンもあった。

 ポジショニングの甘さなども見られる一方、身体と精神的な強さ、しなやかさを兼ね備えた注目株。そのルーツとなっているのが、小学生時代から中学1年生まで続けていたというブラジリアン柔術だろう。

「ブラジリアン柔術は柔道ができる前の形なので、寝技や投げても良い。フィジカル面では相手に投げられないとか、寝技をさせないとか、体幹とか、その影響で軸がしっかりしているんじゃないかと思っています」と自己分析。湯川はブラジリアン柔術でも、“元日本ランク1位”という実力者だ。

「階級別のランキングがあるんですよ、何キロ級か覚えていないんですけれども、その時の階級のリーグ戦の勝ち点みたいなもので、1度しか負けたことがなくて、それ以外全部勝っていたので、一応日本のランキングで1位みたいな感じでした」。中学1年時までサッカーと両立していたが、怪我したこともあってサッカーに専念。だが、当時二刀流で努力していた効果を現在実感している。

 日本とブラジルにルーツを持つ湯川は身体能力に加え、下級生らしからぬメンタリティーも魅力。この日は0-1の後半アディショナルタイムに味方がPKを獲得すると、「PKもらった瞬間は誰蹴るかなと思っていたんですけれども、『俺、蹴る』と言って、(応援してくれている)仲間の方向見て思い切って蹴りました」。選手権へ向けて練習してきたPKの成果も発揮。中心選手の自覚が出て来ているDFは富一を救う活躍も見せた。

 憧れの選手は元イタリア代表DFファビオ・カンナバーロ。「闘争心や身体張るところだったり、彼もCBでそんなに身長大きくない選手ですけれど、それでも身体デカイ、高いFWにも引かずに自分から行って、競り合いでもポジショニングで相手と戦って優位にプレーしていたので、尊敬しています」。湯川も特別な高さやスピードを持っている訳ではない。それだけに予測や駆け引き、競り合いの強さを全国クラスまで磨くこと。そして、「絶対に優勝するという使命がある」選手権予選を勝ち抜いて、全国舞台で輝く。

(取材・文 吉田太郎)
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