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努力を重ねてきた3年生が存在感を発揮。横浜FCユースはウノゼロ勝利で今季初の連勝達成!

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浦和レッズユースのDF工藤孝太横浜FCユースのFW宮野勇弥が競り合う

[10.9 プレミアリーグEAST第14節 浦和ユース 0-1 横浜FCユース 駒場]

 約2か月ぶり。待ちに待ったクラブユース選手権以来の公式戦は、彼らにとって格好のモチベーションになっていたようだ。「正直良い緊張感、良いテンションで試合に入れたなと。選手たちも久しぶりで『ちょっと緊張している』なんて声もちらほら出ていたんですけど、そんなのも良いモチベーションに変えながらできたんじゃないかなと思っています」(横浜FCユース・重田征紀監督)。

 今シーズンのリーグ10試合目にして、初の連勝達成。9日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第14節、浦和レッズユース(埼玉)と横浜FCユース(神奈川)が対峙したゲームは、前半22分にDF本木紀慶(3年)のゴールで先制した横浜FCユースが、そのまま1-0で勝利。3点のビハインドを引っ繰り返した7月4日の清水エスパルスユース(静岡)戦に続く白星で、連勝を飾る結果となった。

 先に手数を出したのはホームの浦和ユース。前半6分には5月にプロ契約を締結しているDF工藤孝太(3年)のフィードから、こぼれを拾ったMF戸田大翔(3年)がそのままミドルを放ち、横浜FCユースのGK松野凌大(3年)にキャッチされるも好トライ。9分にもキャプテンの左SB大野海翔(3年)がクロスを上げると、前日までU-16日本代表候補合宿に参加しながら、この日もスタメンで起用されたMF早川隼平(1年)が枠を越えるボレーまで。2つのフィニッシュでゴールへの意欲を窺わせる。

 ただ、「最初はみんな緊張した感じで入ってしまって、公式戦が久しぶりだったということもあって硬かったんですけど、徐々に自分たちの良さであるボールを回すことでリズムができてきました」と本木が話したように、横浜FCユースは可変気味のシステムの中で、トップ昇格内定が発表されたDF杉田隼(3年)、キャプテンのDF増田健昇(3年)のCBコンビに、ボランチのMF清川遥(2年)、プレミア初スタメンとなったGKの松野も加えた4枚で丁寧にビルドアップしながら攻撃を組み立てることで、少しずつペースを引き寄せていく。

 すると、スコアが動いたのは22分。左サイドでボールを受けたMF前田柊(3年)は、DF中村琉聖(2年)とのワンツーからエリア内まで侵入してシュート。浦和ユースのGK川崎淳(3年)もよく反応したものの、こぼれに詰めていた本木が押し込んだボールはゴールネットを揺らす。「自分は今までアシストの方が多くて、得点というのがあまりなかったので、どう喜んでいいのかもわからなくて(笑)」と笑顔を見せた本木のプレミア初ゴール。横浜FCユースが1点をリードした。

 この一撃で流れはアウェイチームへ。38分には上がってきたDF池谷銀姿郎(2年)のクロスに、MF山崎太新(3年)が合わせたヘディングは川崎が何とか回避。42分にも左サイドで山崎が3人に囲まれながらも、強引にフィニッシュまで。ここも川崎がファインセーブで凌いだが、前半は得点も含めて横浜FCユースのペースで45分間が推移した。

「前半に『堅く入り過ぎちゃったかな』というのはあって、相手がやりやすいようにサッカーをやらせてしまったので、後半は修正して、『ボールを奪いに行って、良い守備から良い攻撃をしよう』というところと、攻撃の立ち位置はちょっと変えました」とは浦和ユースを率いる池田伸康監督。後半開始からジョーカーのFW高橋悠(3年)を投入し、4-4-2からMF堀内陽太(2年)をアンカー気味に配した4-1-4-1にシフトする。

 後半12分にはスムーズなアタック。高橋が単騎で左サイド深くまで持ち込み、大野のクロスにニアでFW伊澤壮平(3年)がヘディング。このシュートは枠を外れるも、リーグ初勝利を挙げた前節の大宮アルディージャU18(埼玉)戦でも頭で決勝ゴールをマークしたストライカーが得点の匂いを。「全体で良い守備ができたし、前への推進力も出てきましたよね」と指揮官も評価したホームチームが狙う同点ゴール。

 やや押し込まれる展開となった横浜FCユースは、守護神が魅せる。35分。浦和ユースの左FKはエリアすぐ外。右利きの堀内、左利きのMF戸田大翔(3年)がスポットに並びつつ、堀内が左スミギリギリに蹴り込んだキックは、しかし「角度も結構微妙なところで、キッカーも2枚いて難しい状況ではあったんですけど、しっかりボールを見て当てるという感じで、きっちり弾けたかなと思います」と振り返った松野がファインセーブで阻止。失点は許さない。

「後半は苦しい状況が続いたんですけど、キーパーも含めて全員で声を出して無失点で終われたので、また良いスタートを切れたかなと思います」(杉田)「今シーズンはなかなか無失点で勝つということが少なかったので、そこができたのは自分の中で手応えにもなりましたし、自信にもなりました」(松野)。終わってみれば横浜FCユースが1-0と完封勝利。総力戦で勝ち点3を力強く掴み取った。

 横浜FCユースはここに来て、3年生の存在感がより際立っている。この日の主役とも言っていい本木は、チームのシステム変更に伴って右サイドバックから右ウイングバックへ役割もチェンジ。「前までは絶対にサイドバックの方がいいと思っていたんですけど、意外と攻撃参加することも多くて、攻撃のバリエーションも結構増えているので、今ではウイングバックの方がいいかなと思っています」と前向きに新ポジションへ取り組んでいることが、大事なゴールに繋がったのは間違いない。

 ゴールキーパーの松野はケガもあってレギュラーを後輩に奪われながら、地道にトレーニングを積んできた。「矢印がいろいろな所に向いたりとか、サッカーが嫌いになりそうな時期もあったんですけど、やっぱりラスト1年ですし、やるのもやらないのも自分次第だと思って、『やり続けていれば絶対にチャンスは来るから』といろいろな人に言われましたし、自分自身もそう思っていたので、その分だけ今日の試合に懸ける想いはとても強かったです」。プレミア初スタメンでの完封勝利は大いに誇っていい勲章だ。

 ベンチメンバーも大声で選手を鼓舞し続けていた。「あんなに声が出るなんて、今日はどうしたんですかね(笑)。でも、溜まっていたものがずっとあったので、この試合に懸ける想いは本当に凄くあったと思います。彼らの本当の気持ちから出るような声だったので」と重田監督。一際声を張り上げていた3年生のMF青木暦央人は後半アディショナルタイムに登場し、クローザーとして試合をきっちり締めた。

 2012年からアカデミーダイレクターを務めてきた重田監督は、今年の3年生を6年間に渡って見守り続けてきている。「この先では本当に苦しい想いもすると思いますし、自分が培ってきたものを大切にしてほしいという想いもあります。その中で彼らがどう巣立って、活躍していくかというところが大事かなと思っているので、そういう意味では3年生が中心になって、良いモチベーションでチームを引っ張ってくれているなと。当然ここに来ていない3年生もいるんですけど、彼らも練習は一生懸命やりますし、そういうところは凄く良いチームだなと思いますね」。

 残された2か月余りの時間で、さらなる一体感を高めていきそうな雰囲気が、横浜FCユースにはポジティブに漂っている。

(取材・文 土屋雅史)
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