beacon

[MOM3590]横浜FCユースDF本木紀慶(3年)_右ウイングバックに挑戦中の2番が“嗅覚”でプレミア初ゴール!

このエントリーをはてなブックマークに追加

横浜FCユースはDF本木紀慶(2番)の先制弾に歓喜の輪

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.9 プレミアリーグEAST第14節 浦和ユース 0-1 横浜FCユース 駒場]

 その瞬間。昔ながらの“嗅覚”が戻ってきたという。「僕はもともと小学生までトップをやっていて、そういう意識や感覚は他のディフェンダーやミッドフィルダーの人よりはあると思います。もう『ありがとうございます!』という感じでした(笑)」。

 ゴール前のこぼれ球をきっちり押し込んで、決勝点を挙げたのは右ウイングバック。横浜FCユース(神奈川)の2番。DF本木紀慶(3年=横浜FCジュニアユース出身)のプレミアリーグ初ゴールが、チームに大きな勝ち点3をもたらした。

「楽しみにしていました。延期、延期での試合だったので」と本木も話したように、コロナ禍ということもあって1か月以上も伸びてしまったプレミアリーグの再開。前回の試合からは約3か月、公式戦で考えてもクラブユース選手権以来となる約2か月ぶりのゲームに、チームには少し緊張感が漂っていたという。

「最初はみんな緊張した感じで入ってしまって、公式戦が久しぶりだったということもあって硬かったんですけど、徐々に自分たちの良さであるボールを回すことでリズムができてきました」。そう振り返った右ウイングバックが、引き寄せつつあったリズムの中で重要な仕事を成し遂げる。

 前半22分。左サイドでDF中村琉聖(2年)とのワンツーから、MF前田柊(3年)が鋭いドリブルでエリア内へ潜り込む。「個人のパフォーマンスとしては、普段は人工芝でやっているので、天然芝に慣れないところもあって、立ち上がりにミスが続いてしまったんです」という本木だったが、ここは自身の持ち味を生かすところだと感覚が自身に訴えかける。

「以前のポジションは右サイドバックだったんですけど、チームのフォーメーションが変わってからは前目のウイングバックをやるようになって、クロスとかチャンスがあったらどんどん攻撃参加していこうと決めていました」。前田のシュートは相手のGKに弾かれたが、そのボールは目の前にこぼれてくる。「『前田ありがとう!』みたいな感じでした」。冷静にプッシュ。ゴールネットが揺れる。

「自分は今までアシストの方が多くて、得点というのがあまりなかったので、どう喜んでいいのかもわからなくて(笑)。逆側のゴールに決めたらベンチにウワッーと走って行けたんですけど、反対側のゴールだったので」。すぐさま駆け寄るチームメイトの輪の中に消えた殊勲のスコアラーに、笑顔が弾ける。結果的にこの1点が決勝ゴール。記念すべきプレミアリーグ初得点の喜びは、勝利とともに本木の中へ刻まれた。

 前述したように、夏前からチームのシステム変更に伴い、ポジションが右サイドバックから右ウイングバックに変化した。「前までは絶対にサイドバックの方がいいと思っていたんですけど、意外と攻撃参加することも多くて、攻撃のバリエーションも結構増えているので、今ではウイングバックの方がいいかなと思っています」。

 チームを率いる重田征紀監督も、ポジション変更にこう言及している。「クラセン前ぐらいから彼のプレーエリアをちょっと上げて、その中でチームとして結構彼がキープレーヤーになってきているなという感じはありました。良いものを持っているんですよね。飛び出していくスピード感もあったりするので、彼が点を獲れたのは良かったです」。

 本人に心残りがあるとすれば、この日の中継のヒーローインタビューに呼ばれなかったことぐらい。「今まで受けたことがなかったので、ちょっと準備していました(笑)」。ハキハキと話すことができ、笑顔も爽やかなナイスガイ。次に得点を獲ることがあれば、きっと本人はしっかり準備をして、試合後の“指名”を待っていることだろう。

 ジュニアユースから数えて、横浜FCのアカデミーで過ごすのは6年目のラストイヤー。残された時間を意義のあるものにする決意は、もうとっくに定まっている。「ここからは1日1日を無駄にできないので、次の世代の後輩たちに繋げていくという面でも、自分たちにできることを精一杯やっていきたいと思います」。

 自分に手応えを掴みつつある右ウイングバック。横浜FCユースの右サイドでは、常に本木が全力で上下動を繰り返しながら、虎視眈々と“2点目”と“ヒーローインタビュー”を狙っていく。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プレミアリーグ2021特集

TOP