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青森山田MF松木玖生がFC東京内定会見。「自分の決めた道を信じて、やっていくことが大切」

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FC東京加入内定の青森山田高MF松木玖生。右はFC東京・石井豊スカウト部長

 世代屈指のスーパースターが選んだのは、青赤のユニフォーム――。青森山田高(青森)のMF松木玖生(3年)が12日、青森県青森市内の同校で行われたFC東京入団内定記者会見に出席した。会見には松木のほか、FC東京の石井豊スカウト部長、青森山田の黒田剛監督、花田惇校長、松木の両親が出席。松木は「FC東京というチームで、自分の最初のキャリアを始めることができ、大変嬉しく思っております。このチームのためにも日々切磋琢磨して、いち早く試合に出られるように頑張っていきたいと思います。また、高校生活もまだ残っています。プレミアリーグ、選手権という場で自分たちが掲げているサッカーというものに向かい、チームの輪を自分がしっかりまとめて、三冠できるように頑張っていきたいと思います」と堂々とした態度で語っている。

 黒田監督も「本人は『海外でサッカーをやりたい』ということを喋っておりましたので、様々な所で『松木玖生は海外に行くんだ』ということを推測されたところも多少はあったと思います」と語ったように、もともと海外志向が強かった松木は、今年に入ってからフランスやドイツのクラブの練習参加を重ねてきた。

「実際に向こうに行って、トレーニングマッチにも出させていただいて、技術の部分は凄く評価されていた部分でしたし、得点力も通用したと思います。逆に自分のウィークポイントとしては、スプリントの部分が圧倒的に足りないと感じました」。ヨーロッパの基準を自分の肌感覚に刻み込んだ上で、自身が最も成長できる場という視点から熟考する。実際に練習参加したあるクラブからはオファーも届いていたが、最終的には本人の強い意志もあって、まずは国内からのステップアップを決断。FC東京への加入に至った。

「FC東京さんは『海外に行かないことがあったらすぐに連絡をくれ』という状態で待っていてくれたので、そういう形で応えることができたのは良かったと思います。練習参加もしていない中で、社長も強化部長も『絶対欲しい』と言ってくれましたし、石井さんは小澤竜己の時も廣末陸の時もずっと来てくれていた方なので、3回目に来てくれたのも凄くありがたいことですね」(黒田監督)。同校から高卒ルーキーとしてFC東京に加入した2人の先輩にも関わっている石井スカウト部長の存在も、今回の“大物釣り”に関しては欠かせない要因だったようだ。

 その石井スカウト部長は「我々と一緒のリーグでU-18と戦っている状況もありますので、高校1年生の時から彼の情報は常に入れながら見させていただいていました」と説明。高円宮杯プレミアリーグでも青森山田とFC東京U-18は何度も対戦しており、そのU-18のスタッフも含めて松木のプレーは当然チェック済み。本人もFC東京が以前から自身に興味を持っていることは把握しており、熱心に誘ってもらったことも印象に残ったと明かしている。
 
 松木もFC東京に対して、明確なイメージを抱いている。「自分にマッチするチームだなと思ったのが第一印象です。サッカー的に言うと前線に外国人選手がいて、ボランチも守備のところで凄く強度が高いですし、展開力もあって、凄く良いチームだなと思いましたし、このクラブでしっかり結果を残したいです」。とりわけある選手と一緒にプレーすることを、楽しみにしているという。

「長友(佑都)選手は海外でもいろいろな国に挑戦している選手ですし、まずは海外でのプレーに向けてのメンタリティを学びたいです。ピッチではない部分でも凄く努力していると思うので、そういうところを真似していきたいと思います」。国内有数の『世界を知る男』とともにボールを蹴り、会話を交わす日を心待ちにしている。

 また、松木は実際に対峙してきたFC東京の下部組織のイメージについても、こう語っている。「自分自身は中高合わせて、FC東京が一番対戦したくないチームでしたね。代表での仲間が多かったのもそうですし、凄くリスペクトしています。大迫蒼人や(安田)虎士朗、(野澤)零温も知っていますし、梶浦(勇輝)と一緒にやったことはないんですけど、そういう意味で良いイメージは掴めていると思います。今年のプレミアリーグでも前期は引き分けたので、次は絶対勝ちます(笑)」。MF安田虎士朗やFW野澤零温、MF梶浦勇輝と3人のトップ昇格者も春からはチームメイトになるが、良き仲間として、そして良きライバルとして、切磋琢磨していくことも誓っている。

 物怖じしない性格は、北海道から青森へとやってきた中学校1年生の頃から既に備わっていた。「当時から『本当につい最近まで小学生だったのか?』と思わせるぐらい肝が据わっている、そして何でも先頭を切って行動を起こす、そして自分の発言は堂々とするというその佇まい、行動、思考というところに、近年なかなかこういうタイプの選手がいない中で、『これは大物になるな』というような気配はありました」と黒田監督。この日もその指揮官から「資料には身長は180センチとありますけど、178センチぐらいです」と紹介されると、「いえ、179センチです(笑)」と訂正する場面も。自分の意見を、自分の言葉で発することのできるメンタルも非常に頼もしい。

「中学校3年生でも高校生を呼び捨てにしたり、高校1年生であっても3年生を集合させたりだとか、今のこの時代にちょっと珍しい形ではありますけど、それが逆にいろいろな方々の好感を得たところもあります。Jリーグに行っても1年目からふてぶてしく、堂々とやってくれることを期待したいと思いますし、松木玖生だからこそいろいろなことを達成してくれるんじゃないかなと願っています」。松木の6年間を見守ってきた黒田監督は、熱いエールを送っている。

 高校年代屈指のタレントとして、周囲からの圧倒的な注目を集め続けている松木。ようやく進路が決まったことで、本人も安堵した部分は小さくない。「確かにホッとした部分はありますね。次々に同年代の人たちの進路が決まっていく中で、自分もようやく決まって、ここからはさらに上のステージで彼らとやることになりますけど、そこでも負けない気持ちを持ちながらやっていきたいと思います」。

 改めて、ここから先の決意を口にする。「結局は海外に行っても、日本にいても、やるのは自分自身ですし、まずは本当に自分の決めた道を信じて、やっていくことが大切だと考えています。FC東京に加入してからは、まずチームが掲げているJリーグ優勝という目標に向かって、少しでも力になりたいと思います」。

 青森山田の松木玖生から、FC東京の松木玖生へ。日本中がその未来を注視しているニュースターは、青赤のユニフォームとともに、目指せるだけ高い場所まで登り詰める覚悟を、自身に突き付けていく。

(取材・文 土屋雅史)

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