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『アルディージャとはどういうチームか』。試行錯誤と進歩を重ねる大宮U18が6発圧勝!

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2点目を決めたFW高橋輝に駆け寄る大宮アルディージャU18のベンチメンバー

[10.23 プレミアリーグEAST第8節 大宮U18 6-1 横浜FMユース 埼スタ第2]

 シーズンも終わりが見えてきた10月下旬。この時期になっても、高校年代のチームは確かな変化に順応しながら、十分に成長していくことができる。事実として、オレンジ軍団の若武者たちはそれを体現し始めている。

「僕の仕事は選手を育てること、チームを良くしていくこと、マネジメントすることというのが大きな役割としてあると思うんですけど、自分の中では今年のチームがあと何か月かは関係なくて、良いと思ったことはやるべきですし、うまく行っていない時は、どうすればうまく行くのかというのを考えなくてはいけないですし、常に試行錯誤しながらその時その時で臨機応変にやっていかなくてはいけなくて、絶対こうやったらうまく行くというものがあるのであれば、逆に教えてほしいですよ(笑)」(大宮アルディージャU18・丹野友輔監督)。

 自発的な行動習慣が結果に繋がった大勝劇。23日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第8節、大宮アルディージャU18(埼玉)と横浜F・マリノスユース(神奈川)が激突したゲームは、ホームチームがゴールラッシュ。FW前澤拓城(2年)の先制弾を皮切りに、FW高橋輝(2年)、DF大井勇人(3年)のゴールに加え、エースのFW山崎倫(3年)もハットトリックを達成した大宮U18が、6-1で大きな勝ち点3を獲得している。

 立ち上がりから大宮U18の出足が上回る。前半2分。CKの流れから大井が決定的なシュート。ここは横浜FMユースのGK木村凌也(3年)が好セーブを見せるも、6分には山崎とMF相澤亮太(3年)が連続シュート。10分にも高橋輝が右サイドをドリブルで運び、クロスは前澤に収まらなかったものの、攻守の切り替えも抜群のホームチームが押し込み続ける。

 流れそのままに先制点は12分。「F・マリノスは上手いので、守備で主導権を握りながらとは話していました」という山崎の言葉通り、前からのプレッシャーの圧力もあって、GKのパスミスを前澤がカットすると、無人のゴールへ丁寧に流し込む。悩める2年生ストライカーはこれが今季2ゴール目。大宮U18が1点のリードを奪う。

 畳み掛けるオレンジ軍団。20分。MF阿部来誠(2年)のFKから、DF小澤晴樹(2年)のヘディングは枠の左へ。21分。右から相澤がドリブルで運び、折り返しを叩いた高橋輝のシュートはゴール右へ。22分。スタメン復帰のDF貫真郷(3年)が右クロスを上げ切り、前澤は枠外シュートに抱える頭。24分。左サイドを前澤が切り裂き、阿部のフィニッシュは枠を越えるも、続けざまにチャンスを作ると、31分には左サイドを単騎で突破した高橋輝が豪快な左足シュートをゴールへ突き刺す。2-0。勢いが止まらない。

 横浜FMユースも丁寧なビルドアップにこだわりつつ、サイドを使う意識は十分。36分には中盤でリズムを刻むMF細川楓(2年)のパスから、MF松村晃助(2年)が枠内シュートを打ち込むも、大宮U18のGK海本慶太朗(2年)がファインセーブで回避。大宮の2点リードで前半は終了した。

「相手は凄くハイラインで、ラインコントロールのスピードが速いんですけど、逆にそこで裏返せたらビッグチャンスになるというのは話していました」(丹野監督)。後半8分。左サイドで前を向いた山崎は「前を向いた瞬間に、感覚的に『あれ?これは行けるな』と思いました」と単騎で相手を一気に裏返すと、GKとの1対1も冷静に制して3点目。13分。左から阿部が直接狙ったFKが壁に当たり、こぼれ球にいち早く反応した大井がプッシュして4点目。4-0。大きく点差が開く。

 37分。DF市原吏音(1年)が右に振り分け、FW新井唯吹(3年)は縦へスルーパス。抜け出した山崎は「キックフェイントを入れて、キーパーを外してからというのは結構得意です」という形で5点目。苦しい横浜FMユースも42分にDF石塚心(3年)の左クロスから、途中出場のMF磯ヶ谷佳心(2年)が意地のファインゴールを叩き込んだが、1分後にもDF市原未藍(3年)との連携で左サイドを突破した新井のクロスに、山崎が飛び込んでハットトリック達成の6点目。「相手がどういうふうに守備をしてきているから、こうやって攻撃した方が効果的だよねとか、そういうことをしっかり見極めながら、僕らは一番相手が嫌がることを常に選択して、ゴールを重ねたのかなという感じでしょうか」と丹野監督も語った大宮U18が6-1で大勝。今季リーグ戦初の連勝を手繰り寄せた。

 最高の形で勝利を収めた大宮U18にとって、転機になったのはプレミア再開となった今月3日の“さいたまダービー”。そこまで未勝利だった浦和レッズユース(埼玉)に、後半終了間際の失点で0-1と敗れてしまう。「同じさいたまのライバルチームですし、負けられない戦いだったというところもあって、僕自身がいろいろ準備し過ぎてしまって、いろいろな情報を与えすぎたかなと。選手もそれを一生懸命やってくれてはいるけど、結果が出なかったなあと」(丹野監督)。

 指揮官はかねてから感じていたことを、選手たちへ提案することにする。「選手間でミーティングするのがちょっと少ないなと思っていたので、キャプテンに『自分たちでミーティングをしてみたら』と促しました」。キャプテンのMF高橋愛翔(3年)、副キャプテンの貫と相澤を中心に、青森山田高(青森)に0-1と敗れた直後から選手ミーティングがスタートする。

「良かった点と悪かった点、改善すべき点を話し合って、『もう残り少ないので悔いなくやろう』ということをみんなで話し合っているので、そういった点が試合に出ているのかなと思います」(山崎)「メンバー外の選手や1年生が結構発言してくれるようになっていて、自分自身じゃ気付けない部分も仲間が見て、そこからの視点で伝えて、お互いの価値観を分かり合う意味でも大事な時間なので、そういったコミュニケーションはいつもより増えてきたと思います」(貫)。結果として市立船橋高(千葉)に3-0で快勝すると、この日も6点を奪っての完勝。新たな取り組みは今のところ、ひとまず結果に直結している。

「結局コミュニケーションをお互いに取る機会も増えて、お互いに共有できるからこそモノを言えると。こっちが言ったことだと『聞いてないよ』となることもあるけど、自分たちで決めたことは『それ、オレたちで共有したでしょ。やらなきゃダメじゃん』って言えると思うんですよ。それがやっぱりチームワークなのかなって。そういうことが育成のところは凄く大事で、トップに近いところの年代の選手だけど、トップのやり方にすべての振れ幅を持っていってしまうとダメだなというのは、感じますね」(丹野監督)。

 結果は水物。変化も必ずしも成功に結び付くとは限らない。ただ、何かを変えようとした彼らの中で、何かが変わろうとしていることは間違いなさそうだ。貫が話していた言葉が印象深い。

「今までの3年生の先輩たちは、後輩たちにいろいろなモノを伝えてきてくれたので、今度は自分たちの代も自分たちなりに『アルディージャとはどういうチームか』ということを伝えられればいいかなと。たとえばメンバー外の選手やベンチにいる選手がどう行動するかも、チームが1つになるためには大事で、そういうことを後輩たちに伝えられれば良いなと思います」。

『アルディージャとはどういうチームか』。選手と指揮官も含めたスタッフは、試行錯誤しながら、その答えを日々考え、日々一歩ずつ前に進んでいると信じて、今日の自分と向き合っていく。

(取材・文 土屋雅史)
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