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青森山田MF宇野禅斗が町田内定会見。「町田の地に笑顔や元気を届けられるような選手に」

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町田内定の青森山田高MF宇野禅斗はゼルビーと笑顔で2ショット

 高校年代最高クラスのボランチは、町田でプロサッカー選手に――。青森山田高(青森)のMF宇野禅斗(3年)が9日、青森県青森市内の同校で行われたFC町田ゼルビア入団内定記者会見に出席した。会見には宇野のほか、町田の丸山竜平スカウト部長、青森山田の黒田剛監督、花田惇校長、宇野の父親が出席。宇野は「FC町田ゼルビアというチームで、プロのサッカー人生をスタートできることを凄く嬉しく思っています。たくさんの方に支えてもらって、ここまで来ることができました。その中で自分のプレーを見て、評価していただき、声をかけていただいたことに凄く感謝しています。1人の大人としてサッカー人生を歩んでいく中で、日々努力し続けて、成長できればと思っていますし、町田の地に笑顔や元気を届けられるような選手になりたいので、応援よろしくお願いします」と力強く語っている。

 この日の会見にも参加した町田の丸山スカウト部長は、徹底した現場主義。「去年の選手権、高校選抜、デンソーカップ、サニックス、普段のリーグ戦、インターハイ、和倉といろいろ見させていただきました」と相当な試合数を視察した中で、「黒子の部分で目立たないところはあるけど、現在多くのタレントを誇る青森山田イレブンの、各選手の良さが引き出されているのは、彼の存在があるからだ」と確信し、10月に入って宇野に練習参加を要請する。

 3日間の練習参加で、宇野もチームにポジティブな空気を感じたという。「練習参加する前にも、声を掛けていただいてから試合を拝見することが多かったんですけど、『凄くスピーディーなサッカーをするな』と感じていて、その中で練習参加してみて、監督を含めて選手たちと会話をしながら、『J1に上がるんだ』という強い意志を持っている方がたくさんいて、『凄く熱いクラブなんだな』と感じました」。

 丸山スカウト部長も宇野の練習に溶け込む雰囲気を見て、さらに好印象を抱く。「積極的にボールに絡もうとか、ボールを受けに行こうという姿勢はさすがだなと思いました。練習参加する選手も、限られた日数の中で、できる選手とできない選手がいるのですが、彼は初日の練習から積極的にそういう部分に取り組んでくれていた印象は凄くあります」。双方の想いが合致し、宇野は町田への加入を決意した。

 とりわけ記憶に残ったのはある“大ベテラン”の存在だった。「自分は鄭大世選手が凄く印象的で、普段も凄くフレンドリーに話してくれましたし、サッカーの時でも練習生である自分に対しても厳しく声を掛けてもらったので、なかなかそういう選手はいないのかなと感じました。あとは、『プロはどんなところに行っても自分を出すことが重要。行ったチームで自分を出せなかったら試合には出られないわけで、どれだけ躊躇せずに自分のプレーを出せるかが重要だよ』という話をされたのは印象的でした」。数々の経験を積み重ねてきた鄭大世の言葉が、17歳の高校生には強く響いたようだ。

「自分のストロングポイントはボールを奪えるところと、組み立てるロングボールの質だったり、サイドチェンジだったり、縦パスをガンガン入れられるところだと思います」と口にしたように、プレーの特徴は相手ボールを刈り取れる守備力と、攻撃の起点になれる展開力に加え、チームのバランスを巧みに取れるサッカーIQの高さ。町田で言えば佐野海舟が似たタイプに当たり、本人もそれは十分に自覚している。

「佐野海舟選手は凄く自分と似た選手だとは思います。一緒にやってみて、守備面に関しては自分も負けていないと感じたんですけど、攻撃を組み立てる部分だったり、フィニッシュでゴールを決めている部分を見ると、攻撃面では凄く参考になる部分があるのかなと感じました。負けたくない気持ちはありますし、盗めるものは盗んでいきたいです」。

 佐野にとっては自らの母校でもあり、ファジアーノ岡山への加入が内定した実弟の航大が10番を背負っている米子北高(鳥取)を、インターハイの決勝で破ったのが宇野のプレーする青森山田だという因縁も。今シーズンは不動のレギュラーとして活躍し続けている高江麗央も含めて、若い彼らのポジション争いは今から非常に楽しみだ。

 なお、クラブ応援番組から『サッカー以外の趣味』を問われると、10秒以上黙考してから「……特にないですね。ずっとサッカーばかりやってきたので、サッカーですね。息抜きは……、サッカーの動画ばかり見ているので。人と話すことが好きなので、仲間と話すことは息抜きになるかなと思います」とのこと。サッカーのことであれば、いくらでも話していられるタイプ。ピッチ上の厳しい表情とは対照的に、普段は笑顔の多いおしゃべり好きのナイスガイでもある。

 会見の中でも挙げた自身のベストゲームは、この夏のインターハイ準決勝の静岡学園高(静岡)戦。高校年代最高峰のテクニック集団を相手に、失点だけではなく、被シュートもゼロという4-0の完勝だったが、実は宇野はその1つ前の試合に当たる準々決勝の東山高(京都)戦で、痛恨のミスを犯していた。

 それまでの3試合で、19得点無失点という凄まじい数字を残して勝ち上がり、その日も5点を先行。勝敗も決していた終盤に、宇野のボールロストからチームは大会初失点を献上。そのシーンが宇野はとにかく悔しかった。「あのプレーは自分の未熟さが出てしまったので、しっかり受け止めて、次の準決勝ではチームを統率する選手という自覚を持って、プレーしないといけないかなと思います」。試合後に厳しい表情でこう語った姿が印象深い。

 その反省をぶつけたのが前述の静岡学園戦。宇野は80分間に渡って、ほぼノーミスと言っていい圧巻のパフォーマンスを披露する。失敗を自らの力に変えられる、強い意志をピッチでのプレーに乗せられるメンタルは、間違いなくプロ向きだと言っていいだろう。

 高卒でのプロ入りを決断した理由も、明確だ。「自分は『パリ五輪を目指している』と言っている中で、高卒でプロに行くことが自分にとっては凄く重要だなと感じていて、大学サッカーも凄くレベルが高いと思うんですけど、A代表だったり、海外でプレーしたいという自分の将来を考えた時に、『今だな』というふうに感じて、プロ入りを選びました」。

 17歳の抱く野心は、変革の時を迎えつつあるクラブのそれと、大いに重なる。パリ五輪を視野に捉えた、世代屈指のボランチ。将来性豊かな宇野のプロサッカー選手としての歴史は、町田から積み上げられていく。

(取材・文 土屋雅史)

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