beacon

10年ぶりの選手権出場に続き、プリンスリーグ関西復帰!全員攻撃・全員守備の奈良育英が復権へさらなる一歩

このエントリーをはてなブックマークに追加

奈良育英高がプリンスリーグ関西参入を決めた

[11.20 プリンスリーグ関西プレーオフ1回戦 奈良育英高 0-0(PK4-3)京都共栄高 J-GREEN堺]

 22年の高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ関西参入を懸けたプレーオフ1回戦が20日に開催され、奈良育英高(奈良)が0-0からのPK戦の末、京都共栄高(京都)に4-3で勝利。17年以来のプリンスリーグ関西昇格を決めた。奈良育英はまずプリンスリーグ関西2部への参入権を獲得。23日に開催される大阪学院高(大阪)との2回戦で勝てば同1部昇格となる。

 14日の選手権奈良県予選決勝では試合終盤の2発で大逆転し、10年ぶりの全国切符獲得。かつて選手権3位も記録している伝統校・奈良育英が復権へのさらなる一歩だ。試合は前半、京都共栄が押し込む展開に。富山内定のMFガブリエル・エンリケ・ナシメント・ドス・サントス(3年)は不在だったが、個々の技術力高い京都共栄は特にキープ力を示していたFW増田宗(3年)や左の俊足アタッカーMF山口遼馬(2年)を中心にゴール前のシーンを作り出し、決定的なシュートも打ち込んだ。

 だが、奈良育英は就任1年目の梶村卓監督が「(この1年で)本当にタフになったなと。特にゴール前の守備。ゲームを通してそこまでバタバタすることは減ったのかなと思います」というように、押し込まれても焦りを感じさせない守りを見せていた。

 普段からゴール前の攻防や球際、切り替えを重視しているチームは相手の攻撃に一つ一つ対応。大黒柱の左SB千田陽介(3年)をはじめ、空中戦で強さを発揮する岡橋達希(3年)と声でリーダーシップを取る村田恵達(3年)の両CB、選手権予選決勝のヒーローでこの日は守備面で先発起用に応えた右SB瀧陽向(3年)の4バックが最後の局面などでよく踏ん張る。加えて、梶村監督が「昔から奈良育英は全員攻撃・全員守備。全員で、全力でやること」という奈良育英は、SHも精力的にDFラインまで戻ってスペースを埋めるなど全員守備でゴールを許さない。

 一方、攻撃面ではなかなかボールを落ち着かせることができなかった。相手にとって嫌なところを狙ってボールを運び、突破力の高い10番MF岡本大生(3年)の仕掛けでセットプレーを獲得したり、クロスまで持ち込んでチャンスも。だが、攻撃の質を高めることは次戦や選手権への課題となった。

 それでも後半、相手がロングボールを増やす中でも岡橋が強さを発揮するなど最終ラインの守りは安定。GK吉留匠輝(3年)の落ち着いた対応もあって、90分間を無失点で終えた。試合は即PK戦へ突入。先攻・京都共栄の2人目のシュートがポストを叩くが、PK戦要員として投入されていたGK新田海人(2年)が奈良育英2人目のシュートをストップする。

 それでも、奈良育英は相手3人目のシュートをGK吉留が止め返す。その後、3人目から5人目までが決めて勝利。梶村監督は「あんなに良いボールを蹴れるというのは練習してきてくれたなと。GKが止めてくれたのももちろんですけれども、キッカーも気持ち込めて蹴ってくれていたので、それは練習通りだな、練習がしっかり出たかなと」と微笑んでいた。

 選手権予選で優勝を決めた後、梶村監督は選手たちへ向けて「(全国大会に)行って何をするねん。もちろん喜んでもらって良いんですけれども、それで終わったらもったいないよと。せっかく自分たちで掴み取ったんだから。何するの? 何感じるのとなったら、今の生活甘いんちゃうと」引き締めたという。選手たちは切り替えて練習し、日常を変え、また成長した姿をピッチで表現した。
 
 千田は「今日は奈良県決勝よりもよりタフに全員で戦えたという印象です」と語り、岡本も「自分たちのペースはなかなか握れなかったですけれども、最後粘って勝てたというのは成長してきたかなと思います」と頷く。

 今年のチームは千田が「周りみんな言っているのはメリハリがあると。仲は良いんですけれどもサッカーになったらバチバチ要求しあって、というのは全員が思っている」と説明する世代。指揮官からの指摘も受けて「全国に出たい」という気持ちを本気とし、雰囲気から変えて選手権出場果たした。
 
 専修大北上高(岩手)と初戦を戦う選手権へ向けて、千田は「まず10年ぶりに帰ってきて、周囲の人たちが作ってくれたサッカーのできる環境に感謝して、まずはその人たちを喜ばせるような結果、勝利を目指して、その次に自分たちのしたいサッカーをできたら周りの人たちに見せられるようにしていきたい」と力を込めた。この日のプリンスリーグ関西参入決定で後輩たちの日常を変えることにも成功。貪欲にもう1勝を目指し、勝って選手権への弾みもつける。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2021 ▶高校サッカー選手権 地区大会決勝ライブ&アーカイブ配信はこちら

TOP