[12.10 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 JFAアカデミー福島U-18 1-0 神村学園高 広島一球]

　一番良いところで活動を終える――。高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2021 プレーオフ(広島)1回戦が10日に行われ、JFAアカデミー福島U-18(東海2/静岡)が神村学園高(九州2/鹿児島)に1-0で競り勝った。JFAアカデミー福島U-18は15年以来となるプレミアリーグ復帰を懸けて12日の2回戦で尚志高(東北1/福島)と戦う。

　かつて3シーズンをプレミアリーグで戦い、日本クラブユース選手権3位も経験しているJFAアカデミー福島U-18だが、残す活動は現在の高校1年生が卒業するまでの2年強。次の新1年生は入学せず、来年度は高校2、3年生のみでの活動となることが決まっている。

　それでも、船越優蔵監督が「元あるところに戻して、ユースチームは今年入れてあと2年ちょっとで閉じるので最後、一番良いところで終わるというのが一番キレイな形なのかなと思っています」というように、残り2年間をプレミアリーグで過ごし、高いレベルの中で成長することが選手たちの目標。この日は卒業を控えた3年生中心に強敵から白星を掴み、プレミア復帰へ王手をかけた。

　今年、インターハイで8強入りしている神村学園は、主将の左SB抜水昂太(3年)が長期離脱中で、負傷を抱えるU-18日本代表候補FW福田師王(2年)も大事を取って出場を見合わせた。だが、序盤、斜めの動きで抜け出すFW山元陸未(3年)を活用する形で相手を押し込む。

　11分、右サイドからのパスを受けたU-17日本代表候補MF大迫塁(2年)がマークをズラして放った右足シュートが左ポストをかすめる。13分には、右SB笠置潤(2年)の縦パスで大迫が上手くDFを引きつけると、山元がDF背後へ抜け出して右足シュート。他にも大迫のラストパスなどからゴールを脅したが、相手GK大畑神唯(3年)に阻まれるなど先制機を活かすことができない。

　JFAアカデミー福島は神村学園にボールを保持されていたものの、しっかりと守りを固め、試合を安定させた。対する神村学園は今治内定MF佐藤璃樹(3年)とゲーム主将のMF畠中健心(3年)がDFラインへ落ちるなどビルドアップに変化を加えるが、思うように相手の守りを崩せなかった。

　逆にJFAアカデミー福島は奪ったボールをサイドへ動かし、迫力のあるFW宮永羚進(3年)と突破口になっていたMF関日向多(2年)のシュートや、水戸内定左SB松田隼風(3年)の鋭い攻撃参加などから相手ゴールへ迫る。

　0-0で迎えた後半15分、神村学園はMF篠原駿太(3年)がPAへ抜け出すが、再びGK大畑の好守に阻まれてしまう。神村学園は有村圭一郎監督が「粘り強く精一杯やろうということでそういうところで一生懸命やってくれたと思います」と振り返ったように、ベストの陣容が組めない中で粘り強く守り、サイドからの崩しでラストパスまで持ち込んだ。それでも、最後の精度を欠いたこともあり、大畑やCB山之内佑成(3年)とCB柴山優汰(3年)の両DF中心に堅いJFAアカデミー福島から1点を奪うことができない。

　一方のJFAアカデミー福島は交代出場組が奮闘。船越監督は「ボクは『サブ』って言葉を使っていなくて、メンバー発表の時は途中から出て来る選手が勝負を決めるんだ、キーになるんだという意味で『キープレーヤー』という言葉で言っています」と説明していたが、MF本保奏希(3年)ら『キープレーヤー』たちがシュートシーンに絡む。そして42分、メンバー決め前日の試合時の表情、プレーが良かったという交代出場FW齋藤晴(2年)が右サイドからラストパス。これを受けた宮永が持ち出してから右足を振り抜く。

　神村学園DFがゴールライン上で懸命にクリアしたが、ボールはラインを越えていたという判定で1-0。神村学園は43分に右CKのクリアを拾った畠中が切り返しから右足で狙うも、JFAアカデミー福島はGK大畑が再び好セーブを見せ、無失点で初戦を突破した。

　我慢比べとなった戦いを制したJFAアカデミー福島の松田は「みんな足が攣りかけていて我慢することがキツかったけれど、気持ちで何とかしたゲームでした」と振り返る。また、2年前のプレーオフ敗退を知る宮永は「アカデミーのユースもなくなるので僕らの代で上げたいという気持ちは常に持っていました」。強豪校を執念の戦いで乗り越え、目標まであと1勝。2回戦も必ず勝って、JFAアカデミー福島を一番高いステージへ押し上げる。

(取材・文　吉田太郎)

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