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[MOM3695]桐生一FW吉田遥汰(3年)_中学時代のチームメイトから奪った先制弾。主張するストライカーが“自称2ゴール”で躍動!

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元チームメイトの想いも背負って、桐生一高FW吉田遥汰は高校ラストゲームへ

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.10 プレミアリーグプレーオフ1回戦 米子北高 1-3 桐生一高 エディオンスタジアム広島]

 撃ち抜いたのは、中学時代のチームメイトが立ちはだかるゴール。様々な想いを乗せた左足が気付けばシュートを放っていた。「あそこでダイレクトでシュートを打つという選択は、自分の中でもビックリしています。感覚的なものでしたし、『負けたくない』という気持ちでああいうシュートが出たと思うので、それがゴールになって良かったです」。

 桐生一高(群馬)を最前線で牽引するストライカー。FW吉田遥汰(3年=前橋フットボールクラブ出身)が大事な一戦で、きっちり得点という結果を叩き出した。

 広島で開催されるプレミアリーグプレーオフ。既に選手権予選で敗退している桐生一にとっては、負けた瞬間にこのチームでの公式戦も終了となる。1回戦の相手は中国王者であり、インターハイでも準優勝に輝いた米子北高(鳥取)。「相手が強いことは知っていましたけど、いつも通り桐一の強みのパスワークが出せれば、自分たちのゲームになるとわかっていたので、そこは意識していましたね」と口にする吉田も、並々ならぬ気合を入れてピッチへ歩みを進めていく。

 絶対に負けたくない理由があった。米子北のGK山田陽介(3年)とDF飯島巧貴(3年)は、中学時代に前橋FCで3年間をともにした間柄。「中学時代のチームメイトも全員ライバルだと思っているので、そこは絶対負けたくないという気持ちもありました」と話す吉田にとって、山田は小学生時代も前橋ジュニアでチームメイトだったこともあり、これまでも当然その活躍は意識してきた。

 前半9分。いきなり決定的なチャンスが訪れる。カウンター気味のアタックの流れから、MF関根大就(3年)がラストパスを送ると、うまくコースを取った吉田は躊躇なく左足でフィニッシュ。枠へ飛んだボールは山田も触ってはいたが、そのままゴールネットへ到達する。

「まだシュートも1本目でしたし、『チャンスが来たら絶対に打とう』と思っていたので、そこは決められて良かったです。キーパーが中学の時のチームメイトだったこともあって、そこは執念と気持ちでねじ込みましたね」。11番が貴重な先制弾をマークする。

 実は昨日、既に“前哨戦”があったという。「偶然ホテルが一緒で、そこでアイツと会って話した時に『負けないぞ』とは言い合っていて、こっちは『ゴールを絶対獲るからな』と言っていたので、そこは有言実行でゴールが獲れて良かったです」と吉田。“予告ゴール”を決めてしまうあたり、ストライカーの面目躍如といったところだろうか。

 チームにとっての3点目。公式記録にDF倉上忍(3年)の得点と記載されているゴールも、自分が決めていたと主張している。「アレも一応自分のゴールなんですよ。ヘディングですらして、相手が触ったんです。自分がニアに行って触るというのは考えていましたし、今日は2ゴールです(笑)」。自称の“ドッピエッタ”。でも、フォワードであればそのぐらいの心持ちでちょうどいい。

 改めて自分の中で抱えていた感情を、笑顔で明かしてくれた。「自分は中学時代のチームメイトも全員ライバルだと思っているので、そこは『絶対負けたくない』というのもあって、選手権の群馬県予選の決勝で中学時代のチームメイトもいた前橋育英に負けてしまって悔しかったですし、『絶対に前橋FCのチームメイトには負けたくない』という想いはあったので、今日勝てたことは良かったです」。元チームメイトとの“連敗”は回避。そして、この仲間と戦う最後の1試合が、もう2日後に迫っている。

「すべてを出し尽くす気持ちで絶対に勝ちたいです。個人的にも絶対に自分が点を決めて勝ちたいので、その想いはプレーで前面に出していきたいと思いますし、米子北のみんなの気持ちも背負って、絶対にプレミアに上がりたいです」。

 高校生活最後の試合で巡ってきた、周囲に結果で恩返しできる絶好のチャンス。より多くのものを背負うことになった90分間を経て、吉田のゴールに対する感覚は一層研ぎ澄まされているに違いない。

(取材・文 土屋雅史)
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