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使命を帯びたプレーメイカーの献身。桐生一MF浅田陽太は最高の仲間たちと最後の1試合へ

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力強いボールカットを見せる桐生一高MF浅田陽太

[12.10 プレミアリーグプレーオフ1回戦 米子北高 1-3 桐生一高 エディオンスタジアム広島]

 チームには小学生の頃から、ずっと一緒にボールを追い掛けてきた仲間も多い。言わば10年近いサッカーキャリアの総決算。簡単に負けていいはずがない。

「試合に出ていないヤツの想いも背負ってやれるのは出ているヤツなので、そういうヤツらの想いも背負って戦うのが自分たちの使命だと思っていて、ピッチで恥ずかしいプレーはできないですし、一生懸命プレーするだけだと思います」。

 クールなテクニシャンからほとばしった闘う気持ち。桐生一高(群馬)のプレーメイカー、MF浅田陽太(3年=前橋ジュニアユース出身)は最後の“90分間”にすべてを懸けて、挑む。

「相手のやり方は試合前に確認していたんですけど、想像を超えてきましたね」。浅田はそう振り返る。プレミアリーグプレーオフ1回戦。中国王者の米子北高(鳥取)と対峙した一戦。長いボールを使う相手の戦い方は想定していたが、その徹底ぶりに面食らったことは間違いない。

「繋いでこないというのは分かっていたんですけど、本当に繋いでこなかったので、相手は全部前に蹴ってきて、自分のボールを拾う仕事は相当キツかったですね」(浅田)。中盤のエリアでも、なかなかボールを落ち着かせるまでには至らないが、カウンターから先制すると、セットプレーで追加点。いきなり2点を先行する展開を引き寄せた。

 浅田は冷静に戦況を見極めていた。「今日は金沢(康太)が結構飛び出していたので、『自分のところにボールが入りづらいかな』と思って、アイツが攻撃に飛び出していってくれている分、守備に回って、身体を張ることは意識していました」。全体のバランスを維持しながら、局面では積極的なプレスで相手の攻撃の芽を潰す。いつも以上に目立つ激しいプレーから、この一戦への想いが滲む。

 結果はインターハイの準優勝チームに3-1の快勝。「(前橋)育英に負けて目指すものは変わりましたけど、ここでプレミアに上がるというのは全員で新チーム立ち上げの時から言ってきたことなので、死に物狂いで育英に負けた悔しさもぶつけていこうという気持ちでした」と語った浅田のハードワークが、90分間に渡って際立った。

 本人も話したように、選手権予選では県決勝で前橋育英高に0-1で敗退。ただ、そこからプリンスリーグ関東の帝京高(東京)戦、東京ヴェルディユース(東京)戦の2試合を経て、チームの一体感は格段に高まったという。

「普段あまり試合に出ていないメンバーが帝京戦は多く出て、その中で1人1人自分の役割をちゃんとまっとうしていましたし、ヴェルディ戦は全員サブ組で出たんですけど、それでも失点しながらも同点に追い付いたんです。なかなか試合に出られなかったアイツらが全力でやってくれていたので、『自分たちもやらなきゃな』という想いになりましたし、その熱が伝わっているので、チームとして良い雰囲気でやれているのかなと思います」。ここに来て掴んでいる手応えは、小さくない。

 この日のメンバーに入ったGK竹田大希(3年)やMF小林凌大(3年)、DF大隅斗聖(3年)をはじめ、MF青木架流(3年)やMF小野人平(3年)も、浅田にとってはまだ小学生だった前橋ジュニア時代からともに戦ってきた盟友たち。「本当に10年ぐらい一緒にやっていて、信頼していますし、プライベートでも仲良くしています」という仲間と臨む最後の1試合。相手は強豪の帝京長岡高(北信越1/新潟)。もう今まで培ってきたすべてをぶつけるだけだ。

「相手もテクニカルなチームで、ドリブルもパスも上手いので、我慢の時間もあると思うんですけど、自分たちのサッカーも少なからずできるはずですし、その時間でうまく点に結び付けられれば勝てると思います。自信はあります」。

 使命を帯びた男は強い。目指すのは目の前の勝利だけ。浅田の決意は、揺るがない。

(取材・文 土屋雅史)
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