beacon

目標にしてきた“群馬のチーム”との対峙。米子北GK山田陽介は旧友との再会も糧に選手権の舞台へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

米子北高の守護神、GK山田陽介は旧友との再会も糧に選手権へ

[12.10 プレミアリーグプレーオフ1回戦 米子北高 1-3 桐生一高 エディオンスタジアム広島]

 何よりも自分自身が成長するために、米子の地を選んで3年。かつてのチームメイトたちにその選択の正しさを見せたかった。もちろん結果には満足していないが、同時にようやく彼らとピッチで真剣勝負ができた喜びも湧き上がっていた。「とりあえず勝ちたかったので、それが叶わなかったのは悔しいですけど、こういうレベルの高い舞台で一緒に試合をやれたのは、本当に嬉しい想いがありました」。

 インターハイ準優勝に輝いた米子北高(鳥取)を最後方から支える護り神。GK山田陽介(3年=前橋フットボールクラブ出身)は90分間の貴重な“再会”を経て、高校生活最後となる選手権のステージへ向かっていく。

 小学生時代は強戸キッカーズ、中学生時代は前橋FCと、群馬でサッカーキャリアを築いていった山田。前橋FC時代は、前橋育英高(群馬)のGK渡部堅蔵(3年)やキャプテンのDF桑子流空(3年)、高崎経済大附高(群馬)でプレーする松本内定のDF二ノ宮慈洋(3年)ともプレーしていたが、高校はあえて群馬を飛び出す決断を下す。

「環境的に土のグラウンドだということも聞いていましたし、当時のコーチの方の助言も戴いたことで、『自分を強くしてくれるんじゃないか』と思って、米子北を選んだところはあります」。この日もスタメンで出場していたDF飯島巧貴(3年)、FW佐藤伶(3年)と一緒に山陰の強豪校の門を叩いた。

 3年生になると、ようやくレギュラーの座を獲得。インターハイでは決勝まで勝ち上がり、最後は青森山田高(青森)に屈したものの、全国準優勝を経験。その気合あふれるセービングと、正確な左足の高精度キックでファイナル進出に大きく貢献した山田だったが、ある気持ちをずっと抱えていたという。「群馬のチームを倒すというのを、米子北に入った時から目標としてやってきたんです」。

 その目標を叶える機会が、ようやくやってきた。プレミアリーグプレーオフ1回戦。相手は桐生一高(群馬)。小学生時代からトレセンで一緒にプレーしたことのある選手も揃っている。中でもFW吉田遥汰(3年)は前橋FC時代のチームメイト。お互いのポジションもあって、意識しないはずがない。

 試合前日。奇しくも米子北と桐生一は同じ宿舎だった。「偶然ホテルが一緒で、そこで会って話した時に『負けないぞ』とは言い合っていて、こっちは『ゴールを絶対獲るからな』と言いました」とは吉田。「『明日はオレが決める』って遥汰が言っていましたね」と山田もその時を振り返る。

 結果は1-3の敗戦。「最近の試合でも入りの失点は課題で、そこがなかなか修正できなくて、チーム全体でシュンとなってしまう部分もあったと思うので、そこは修正したいです。いつもは点を獲ってくれる感じがあったんですけど、今日はその決定力もなくて、全体として思い通りに行かない試合でした」。掲げてきた目標は、叶わなかった。

 “旧友”にもゴールを奪われる。前半9分。吉田が左足で枠へ収めたシュート。しっかり反応した山田だったが、手に触れたボールは弾き切れず、ゴールネットへ吸い込まれた。「宣言通りにやられてしまったので、そこは悔しかったですね」。もちろん悔しさはある。だが、吉田を筆頭に昔から知っている仲間と対峙した90分間は、改めてサッカーが繋ぐ絆の大切さを実感する時間になった。

 彼らが突き付けてくれた課題を生かす舞台は、まだ山田にも、米子北にも残されている。「今日の試合を糧にしたいですね。今の課題が分かりましたし、修正できるチャンスをもらったと思っているので、これを良い経験として選手権に生かして、全国でしっかりと自分たちのプレーを見せていきたいです」。

 高校生活最終盤のタイミングで実現した“再会”を大きなパワーに変え、山田は選手権という最高のステージで、改めて自分の成長を多くの人に証明するため、残された日々と全力で向き合っていく。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プレミアリーグ2021特集

TOP