[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.10 プレミアリーグプレーオフ1回戦 前橋育英高 4-0 仙台育英高 エディオンスタジアム広島]

「プレミアでプレーすることは夢だったので、今回は来年にも繋がる大会ということで、自分がしっかりチームに必要とされていることを最大限に発揮できれば、そのプレミアは見えてくると思うので、今日は結果としても点が獲れたことが良かったと思います」。

　チームにとって悲願とも言うべき、プレミアリーグ昇格の懸かった大事な90分間で、2ゴール1アシストの大暴れ。前橋育英高(群馬)のボランチを託されたMF根津元輝(2年=1FC川越水上公園出身)の自分改革、着々と進行中。

　もともと安定感は十分にあった。同級生のMF徳永涼(2年)と組むドイスボランチは、間違いなくチームの心臓。受けて、捌く。球際に激しく寄せて、ボールを奪う。上州のタイガー軍団でレギュラーを張るだけの力は、しっかりと披露していたと言っていい。

　だが、自分自身はなかなか手応えを掴めずにいた。「最近自分は消極的なプレーが多くて、後ろ目でプレーすることも多かったので、そこを変えてみようかなと思ったんです」。父親の助言もあり、より前へ、前へというプレー選択を増やすことを決意。実際に選手権予選やプリンスリーグ関東では、明らかに以前よりアグレッシブに攻撃へ関わる7番の姿が見られていた。

　仙台育英高(宮城)と対峙したプレミアリーグプレーオフ1回戦。チームにとってとにかく重要な一戦でも、根津は積極性を打ち出し、攻撃の局面に自ら顔を出し続けていく。すると、1点をリードした前半36分に、絶好の追加点機が到来する。

　右からMF小池直矢(2年)が粘って上げ切ったクロス。中央にこぼれたボールへいち早く反応する。「翼さんが触って、自分も触った感じでしたね。ほぼ翼さんのゴールですけど、自分にちょっと当たったという感じです」。10番を背負うMF笠柳翼(3年)と重なりながら、自身の足にも感触のあったシュートがゴールネットを揺らす。笠柳も自らのゴールを主張したものの、公式記録は根津のゴールに。「まあ、自分のゴールですね(笑)」と口にした笑顔に充実感が窺える。

　“正真正銘”のゴールは、前半アディショナルタイムの45+2分。右サイドで前橋育英が奪ったFK。キッカーはDF岩立祥汰(3年)。「前まで結構ニアに自分が入ることが多くて、最近はブロックとかの方に回っていたんですけど、前半終了間際だったので」勝負所と判断して、ニアに飛び込んだ根津の頭にドンピシャのボールが届く。

「ニアに走っていって、ジャンプしたら本当にピンポイントでボールが来たので、当てるだけという感じでした。気持ち良かったです」。完璧なヘディングが貫いたゴールネット。3-0。試合の流れを決定付けるような追加点。7番のボランチが、早くもこの試合2点目を叩き出す。

　これだけでは終わらなかった。後半25分。相手のアタックを凌ぐと、カウンター発動。「相手の矢印が前に向いていた中で、練太郎さんは足が速いので、そこでうまく速いボールを入れたら、ファーストタッチで練太郎さんが良い感じで持っていってくれましたね」という根津のパスから、運んだFW守屋練太郎(3年)のシュートがチームに4点目をもたらす。終わってみれば4-0の完勝。3点に絡む根津の活躍に、山田耕介監督も「元輝はもともといいんですけど、だいぶ自信が付いてきたんじゃないですかね」ときっちり評価を。シーズン終盤に来て、進化の跡を結果という形で刻みつつあることは間違いない。

　ここから待っているのは、すべて負けられない試合。だからこそ、お世話になった3年生と、1試合でも多く戦いたい。

「先輩方も自分たち後輩のために『絶対にプレミアに上げてやる』という想いがある中で、それも選手権にしっかり繋げていこうという気持ちは、チームの中でしっかり統一してやっているところなので、今日は4点獲れたというのも、気持ちが結果として現れたのかなと思っています」。

「3年生と一緒にやれる時間も限られてきましたし、負けたら本当に全部終わりなので、1分1秒でも多く、3年生のみんなと一緒にプレーをして、少しでもいい思い出を作れるように、自分たち2年生が3年生のために、しっかりと持っているモノを100パーセント出し切れるように、自分と戦っていきます」。

　怖さを身に付けつつある17歳の決意が、タイガー軍団の築くべき新たな歴史の扉をこじ開ける。

(取材・文　土屋雅史)

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