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[MOM3766]帝京FW齊藤慈斗(2年)_カナリア軍団の絶対的エースは“13年ぶり”を見据えた覚悟の1年を突き進む

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帝京高FW齊藤慈斗はタイムアップの瞬間、大の字になってドローを悔しがる

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[2.5 LIGA KANTO U-18 帝京高 1-1 横浜FCユース 帝京北千住G]

 結局はこの背番号13が、大事なゴールをさらっていってしまう。新チームがスタートしてから、その傾向はより顕著になってきたと言わざるを得ないだろう。「自分たちの代になって、やっぱり覚悟というか、『しっかり選手権にも出ないといけない』という想いがあるので、練習からしっかり意識してできていますし、その結果が好調に繋がっているのかなと思います」。

 13年ぶりに冬の全国を目指す帝京高(東京)のエースストライカー。FW齊藤慈斗(2年=バディーJY出身)の得点感覚は、確かな覚悟を伴うことで一層研ぎ澄まされ始めている。

 準決勝で無念の敗退を強いられた昨年度の選手権予選を終え、新チームとして挑んだ昨年末の横山杯、今年初頭の『NEW BALANCE CUP』(裏選手権)と揃ってファイナルまで勝ち上がった帝京の中で、齊藤はゴールという結果をきっちり残し続けてきた。

 この日のゲームは新設された『LIGA KANTO U-18』で、プレミアリーグ所属の横浜FCユースと対峙するオープニングマッチ。「上のリーグのチームと試合をできる機会はそんなに多くないので、こういう機会を大事にしたいですし、上のレベルのチームや選手とやれることは自分の力試しにもなると思うので、そこで通用するか通用しないかを見極めていきたいです」と語る齊藤に、いきなり先制機が到来する。

 前半9分。ハイボールをキャッチしたGK川瀬隼慎(1年)が鋭いパントキックを右サイドへ打ち込むと、巧みなトラップで前を向いた齊藤はそのまま一気に加速して独走。1対1から打ち切ったシュートはGKのファインセーブに阻まれたものの、何もないところからでも好機を作り出す怖さを、相手のディフェンスラインへ突き付ける。

 以降もなかなか良い攻撃の形が出てこない中でも、「結構前で収めて、周りにもはたきながらできた感じはあったので、良かったと思います」と自身も認める好パフォーマンスを披露。とりわけ「相手のセンターバックが大きくて、足も長いので、取られないところにボールを置くことを意識して、身体の使い方を工夫しながらボールをしっかりキープできたかなと思います」と振り返ったように、タイトに寄せられても巧みにボールをキープし、前線で時間を作り続けたこともあり、後半は一気にペースを奪還する。

 5分には左サイドでやや強引にフィニッシュまで持ち込み、12分にも右からDF梅木怜(1年)が上げたクロスを丁寧に頭で落とし、MF土本瑶留(1年)のシュートを演出すると、輝きを放ったのは31分。中盤でMF松本琉雅(2年)が縦に付けたボールはコントロールし損ねたものの、再び奪い返したボールは土本の足元へ。「パスが来るとは思わなくて、『シュートを打つのかな』と感じたので、こぼれに行こうと思っていた」齊藤に、短く浮かせたパスが届く。

「最初は右にターンしてシュートを打とうとして、トラップが左側に行ってしまったんですけど、ゴールが後ろにあるというのは分かっていたので、振り抜いてシュートを打つだけでした」。トラップは思い通りにできなかったが、すぐさま体勢と思考を立て直し、左足で打ち切るあたりはまるで南米のストライカーのそれ。強引なシュートがゴールネットをきっちり打ち抜き、スコアは振り出しに引き戻される。

 結果は1-1のドロー。だが、終盤の同点弾で追い付いたにも関わらず、齊藤はタイムアップの瞬間、ピッチに大の字になって勝てなかったことを悔しがる。自らのゴールはもちろん、チームの勝利を何よりも希求するメンタルが、そのシーンに色濃く滲んだ。

 高校1年時の12月にはU-15日本代表候補に選出されたが、それからはチームでレギュラーを張り続けているものの、年代別代表とは縁がない。「もちろんもう1回代表に選ばれたい想いはあります。ただ、今の自分は最後の場面で、味方を使うのかシュートを打つのかの判断がまだイマイチなので、そこを上手くできたらいいかなと思います」。課題も認識しつつ、再び日の丸を付けるために、細かい部分のブラッシュアップにも余念がない。

 今年の目標は、選手権での全国出場と「J1のチームでプロになること」。あえて“二兎”を追うことを自分に課すカナリア軍団の絶対的エースが、2022年の高校サッカー界を大いに賑わせる可能性は十分過ぎるほどにある。

(取材・文 土屋雅史)

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