ライバルに負けないように這い上がって行く。帝京長岡高(新潟)のU-17日本代表MF廣井蘭人(2年=長岡JYFC出身)は第100回選手権後、U-17日本高校選抜選考合宿に参加。「(招集されたことは)素直に嬉しかったんですけれども、それ以上に同学年のやつらも(U-)18(の高校選抜合宿)に行っていますし、悔しい気持ちの方が強いですね」と満足していなかった。

　廣井は帝京長岡1年時の9月に公式戦初先発でいきなり先制ゴールを決めると、同年の選手権予選や全国大会で活躍。ゴール前でアイディアと精度を発揮して選手権3位に貢献したレフティーは大会優秀選手に選出され、日本高校選抜に名を連ねた。

　同じく1年生で選出されたFW福田師王(神村学園高)、MF荒井悠汰(昌平高)とともに、2学年上の世代の中でも持ち味を発揮。だが、その後全国大会やU-17日本代表候補で結果を残した福田がU-18日本代表候補へ“個人昇格”して今年もU-18の日本高校選抜に選出されているのに対し、廣井はU-17日本高校選抜候補への選出となった。

　今回、U-17日本高校選抜の選考合宿では、U-18日本高校選抜候補との練習試合2試合が組まれていた。それだけに廣井は「一発叩いて自分を見てもらうくらいの気持ちで行きたい」と宣言。その第1戦、廣井は前線でボールを引き出し、スルーパスでチャンスメークしたが、ボールに触れる回数を増やせず、チームも敗れた。

　だが、ボランチとして出場した第2戦で廣井は躍動。年上の厳しいプレッシャーの中で精度や落ち着き、ゴールへの姿勢をもたらし、内容を好転させる。そして、PAの狭い局面をワンツーで攻略して得意の左足で技ありゴール。怪我を抱える福田は欠場していたが、その前で勝利に貢献してみせた。

　廣井は昨年一年間について、「チームのために走って、守備の部分は一年間積み重ねてきたつもりです」と振り返る。高校1年目は自由に攻撃をさせてもらっていたが、2年時は自覚が出てプレーも変化。「去年は自分がチームを引っ張ろうという思いだったので。自分は(1年生の時、)試合に出ていたので、他の人よりもたくさんのことをやらないといけないですし、中心の選手にならないといけないという気持ちで去年一年間はやっていました」。チームのためにハードワーク。攻撃面で決定的な仕事をする回数はやや減ったかもしれないが、貢献度は大きかった。

　最終学年となる今年は、「チームとしてはもちろん選手権日本一ですけれども、個人としては『怖い選手』。点も取れて、アシストもできて、という存在になりたいです」と言い切る。Jクラブへの練習参加も経験し、「止まってボールを受けたり、パススピード弱かったりすると全部食われちゃうんで、そこの予備動作やパススピードの速さはプロに行って変わったかなと思います」というMFは、学んだことも結果に繋げる考えだ。

　今冬の選手権初戦で福田が所属する神村学園高(鹿児島)と対戦し、3-2。勝利したものの、1ゴール1アシストの福田から「何とも言えないスター性」や「脅威」を感じたという。一方、自身に対しては「ゴール前に入って行って得点を奪う部分はまだまだだった。(3回戦で敗れ、)チームとしても、個人としても凄く不甲斐ない結果」と厳しい評価。悔しい大会から、再スタートした廣井は、向上心旺盛な福田に負けないように自分を磨き、同じステージで戦う選手になる意気込みだ。

「(神村学園とは)もう試合はしたくないんですけれども(苦笑)、福田はどんどん何も言わずともどんどん上に行ってしまうと思うので、自分も負けずに上に這い上がっていきたいなと思っています」。U-17日本高校選抜候補合宿で世代屈指の力を見せたレフティーは、ライバルから刺激を受けながら自分を高めて目指す姿になる。

(取材協力=スフィーダ、『高校サッカー年鑑』)

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(取材・文　吉田太郎)
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