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個性出し合い、対大学3試合で計10得点。U-17日本高校選抜は桐蔭横浜大に惜敗も、成長する4日間に

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2本目15分、U-17日本高校選抜FW福田秀人(米子北高、左端)が右足シュートを決めて同点

[2.20 練習試合 U-17日本高校選抜 2-3 桐蔭横浜大]

 高校2年生の才能たちが個性を発揮し、成長もする4日間に――。U-17日本高校選抜は静岡合宿最終日の20日、関東大学1部リーグの桐蔭横浜大と練習試合(30分×3本)を行った。0-1からFW福田秀人(米子北高2年)とFW澤田佳憲(瀬戸内高2年)のゴールによって逆転。その後再逆転されて2-3で敗れたが、強豪大学相手に好勝負を演じた。

 昨年のインカレ王者・駒澤大、拓殖大、桐蔭横浜大と続いた関東1部の強豪との3試合は4-5、4-6、2-3で3連敗に終わった。だが、22年の高校サッカーの主役候補たちが、切磋琢磨しながら成長する4日間に。指揮を執った蒲原晶昭監督(佐賀東高)は「17の今回の活動の機会を作って頂いて、選手にとっては本当に良かったんじゃないかと思いますよね。だいぶ大きな意義だと思いますよ。大学のチームが本気で相手してくれるので、本当に励みになりましたね」と感謝していた。

 4-4-2システムのU-17高校選抜の先発はGKがデューフエマニエル凛太朗(流通経済大柏高2年)、右SB豊田怜央(桐光学園高2年)、CBが萩原聖也(流通経済大柏高2年)と津久井佳祐(昌平高2年)、左SB都築駿太(流通経済大柏高2年)。中盤は廣井蘭人(帝京長岡高2年)と徳永涼(前橋育英高2年)のダブルボランチで右SH田原瑠衣(大津高2年)、左SH名願斗哉(履正社高2年)、2トップは澤田と小林俊瑛(大津高2年)がコンビを組んだ。

 1本目4分、U-17高校選抜はビルドアップのミスから大ピンチを迎えたが、萩原が素晴らしいタックルを決めて阻止。だが、大学生相手に競り負けるシーンが続き、7分には桐蔭大左SB五十嵐聖己(1年=尚志高)に先制点を押し込まれてしまう。

 駒大戦、拓大戦同様、徳永と廣井や田原を中心にボールを細かく繋いで前進しようとするが、桐蔭大に狙われ、なかなかチャンスに結びつけることができなかった。それでも、9分にはハイプレスで相手のミスを誘い、小林が左足を振り抜くと、10分にも廣井がドリブルシュート。15分にはセカンドボールを拾われてピンチを迎えたが、GKデューフが阻止して1点差のまま食い下がる。

 ただし、桐蔭大から主導権を奪うことができないまま時間が経過。27分には、DFの激しいチェックをいなして前進していた名願がDF2人を振り切って右足を振り抜く。だが、1本目は0-1で終了。押し込まれる中で豊田、萩原、津久井、都築の4バック中心に粘り強い守りを見せたが、過去2試合に比べると攻撃面で苦戦する1本目となった。

 2本目はGK佐藤安悟(帝京長岡高2年)、右SB鈴木大翔(尚志高2年)、CBが萩原と宝納拓斗(佐賀東高2年)、左SB保田成琉(阪南大高2年)。中盤は徳永とMF真田蓮司(東山高2年)のダブルボランチで、右SH高橋隆大(静岡学園高2年)、左SH篠田翼(昌平高2年)、そして小林と福田が2トップを務めた。

 そのU-17高校選抜は開始直後、宝納の対角のロングパスが高橋へ通る。高橋のカットインシュートは枠を外れたが、この1プレーが桐蔭大の守りを難しくさせた。蒲原監督は「1本目は表のところ(でボールを回すこと)が多かった。それを大学生が狙っていて、長いボールもあって表が空くというところで、2本目は長いのを見せたので表も楽になった」と説明する。

 ここまでの2試合は連動したショートパスによるビルドアップで中盤を支配していた。上手く行かない中で受けた助言に選手たちはすぐに対応。蒲原監督は「すぐに行動に移そうとするところもみんな意識が高いと思います」と頷いたように、状況に応じたボールの動かし方に変えたU-17高校選抜は、試合の流れも引き寄せて見せた。

 2分にGK佐藤が至近距離からのシュートを横っ飛びでビッグセーブ。攻撃面では福田と小林が効果的にDF背後を狙い、幅と深みのある攻撃を繰り出した。鈴木と保田の両SBの攻め上がりも交えて攻めると15分、高橋の右CKに鈴木が飛び込み、最後はゴール前の混戦から福田が右足シュート。同点に追い付いた。

 有効だったのは攻撃面だけではない。過去2試合で失点が増えていたため、チームは前日のミーティングから中村真吾コーチ(米子北高)の指導の下で修正したのだという。チーム全体で集中して守り、真田や徳永、DFラインのボール奪取に繋げていた。

 21分には徳永の対角のミドルパスに篠田が反応してゴール前へ。24分には空中戦でも健闘していた宝納が対角のロングパスを通す。右サイドからスプリントした鈴木に通るが、シュートを打ち切ることができない。また、篠田とのワンツーから高橋が放ったシュートなど得点には結びつかなかったが、GK佐藤が終盤にも好セーブを見せて無失点。初勝利のチャンスを十分に残したまま3本目へ繋いだ。

 3本目はGK藤澤芭琉(徳島市立高2年)、右SB豊田、CB津久井、CB宝納、左SB保田、ボランチコンビが真田と廣井、右SH高橋、左SH篠田、そして福田と澤田の2トップでスタートした。そのU-17高校選抜は3分、廣井が相手の右脇を突くと、折り返しを福田が狙う。GKの横を抜けてゴールへ向かったボールを澤田がスライディングシュートで押し込み、勝ち越した。

 だが、桐蔭大は7分にMF遠藤貴成(1年=東福岡高)が同点ゴール。さらに8分には鮮やかな崩しからFW白輪地敬大(2年=桐蔭学園高)が豪快な左足シュートを決めて逆転する。ミスの少ない桐蔭大の前に良い形でボールを奪う回数をなかなか増やせないでいたU-17高校選抜だが、ここから巻き返す。

 10分、相手GK西澤翼(1年=磐田U-18)の好守に阻まれたものの、篠田が強烈な右足ミドル。DFラインからボールを繋いで前進し、廣井のスルーパスで田原が抜け出すシーンもあった。そして、15分に右SB鈴木、左SB都築。右SH田原、左SH名願を投入。名願や都築の突破力を活用しながらゴールに迫り、守備でも真田らが高い位置での奪い返しに成功する。相手PAでボールを奪いかけるようなシーンもあった。

 そして、25分には名願の柔らかい左クロスで福田が抜け出すが、シュートはGKとクロスバーを弾いて外へ。GK藤澤の好守など諦めずに同点、逆転を目指したが、次の1点を奪うことはできず、2-3で敗れた。

 2歳から4歳年上の大学生との充実した3試合だった。「強調しているのは個性のところを全面に出して行こうよと、その個性と個性の組み合わせで今年のオリジナルを作ろうとやっている」という蒲原監督の指導の下、注目タレントたちが個性を発揮。大学生から3試合で計10得点を奪い取り、守備面も最終日へ向けて向上した。

 また、前回の選考合宿から比べて変化が見える点はリーダーが増えたこと。雰囲気が悪くなった時に全体が落ち込んでしまうのではなく、盛り上げる声が自発的に出て来ている。拓大戦の連続失点後には徳永が厳しい言葉でチームを引き締めていたという。蒲原監督は「自分の腹の中を出している選手が出始めているので、チームになっていくのが加速すると思っています。この子たちが頑張ってくれる姿が楽しみ。成長して行ってくれば良い」と語った。

 チームは大事を取って欠場したCB新谷陸斗主将(東山高2年)、MF小池直矢(前橋育英高2年)、MF白井柚希(静岡学園高2年)の3人を加えてまた競争する。高校2年生たちにとって貴重な経験となっているU-17高校選抜の活動。選手たちは同年代の有力選手やコーチ陣から学んだことを持ち帰り、意識高くトレーニングに励む。そして、このチームの最後の活動として予定されている3月の合宿、その先にある各所属チームでの公式戦、そして1年後の選手権での活躍、勝利を目指す。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2021

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