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受け継がれる「伝統の10番」の系譜。川崎F U-18MF大関友翔はポジティブな自信を纏ってプレミアへ向かう

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川崎フロンターレU-18の新10番、MF大関友翔

 田中碧宮代大聖宮城天。そして、五十嵐太陽。同じ背番号を託された男たちが辿ってきている道のりを、意識しないはずがない。ただ、そんな重圧すらも自身の力に変えてしまいそうなエネルギーが、この男には確かにある。

「歴代の先輩を見たら分かると思うんですけど、10番という偉大な番号を背負わせてもらうからには活躍しないといけないと思っていますし、トップ昇格に向けてゴールやアシストという目に見える結果が一番大事だと思うので、そこは意識してやっていきたいです」。

 高円宮杯プレミアリーグへ初昇格を果たした川崎フロンターレU-18のナンバー10。MF大関友翔(2年=FC多摩ジュニアユース出身)が思い描く未来へ向けて、2022年はきっと飛躍の年になるはずだ。

 1月に帯同したトップチームの沖縄キャンプは、多くの収穫と課題を手に入れる貴重な機会となった。「最初は緊張でガクガクだったんですけど、だんだんトップの選手も話してくれたりして、緊張が解けていったら自分のプレーも出せるようになっていきましたね」。自らが所属しているクラブとはいえ、圧倒的な成績でJ1を制した日本一の集団だ。大関が緊張するのも十分に頷ける。

 だが、同時にこのチャンスで何もアクションを起こさないようなタマではない。「オニさんに『自分がトップに上がるために足りないところは何ですか?』と質問したら、『ゴール前に入っていくところや目に見える結果はもっと欲しいよね』という話はされたので、ゴールやアシストという結果はポジション的にも示していかないといけないなと、改めて思っています」。鬼木達監督を『オニさん』と呼ぶあたりにも垣間見えるが、指揮官にしっかり質問をぶつけるあたりに、元来持ち合わせている積極性と向上心が窺える。

 憧れであり、目標にしている“10番”ともしっかりとコミュニケーションを取ってきた。「大島僚太さんとは少し話をさせてもらいました。ボールを持った時の優先順位として、まず背後というところで『背後に出すためにはどうしたらいいですか?』と質問したんですけど、ボールを置く位置だったり、最初に見るところを話したら『それでいいんじゃないか』と言ってもらえて、それは自分の考えていることと同じだったので、自信にもなりましたし、メチャメチャ嬉しかったです」。そう笑った表情に、よみがえってきた興奮を隠し切れないあたりも微笑ましい。

 去年の1年間は、1つ年上の“10番”が見せた変化についても、はっきりと実感していたという。「(五十嵐)太陽くんもトップチームの練習に夏の終わりごろからずっと行っていて、帰ってくるたびに上手くなっていたので、自分も練習に行きたいなと思っていました。太陽くんが日本一のチームに入っていったことで、身近な選手が昇格できるということは自分にもチャンスがあるはずなので、そういった意味では凄くポジティブなことだと思いますし、太陽くんみたいになりたいですね」。そのための今シーズンは、チームとしても初挑戦となるプレミアリーグが主戦場になる。

「もともと1,2年の時もプリンスリーグでレベルも高かったんですけど、もっとレベルも上がってくると思うので、自分の力がどれほど通用するかというのも楽しみですし、『NEXT GENERATION MATCH』を見てもらったことで、自分に対するハードルや評価も少しは上がっていると思うので、そこをもっと塗り替えられるようなプレーをプレミアで見せたいですね。ヤスさん(長橋康弘監督)もずっと口にしているんですけど、残留ではなくて優勝することはチームの目標としていて、そのための準備はできていると感じるので、質の高い練習を続けながら、優勝を掲げてやっていきたいと思います」。

「自分の武器はボールを失わないところで、相手を見てプレーの選択を変えられますし、相手の逆を取るというところには自信を持っています」と自らを評する大関には、U-18の練習にも定期的に顔を見せている中村憲剛FROも「クラシカルなゲームメイカータイプ」と自身のスタイルを重ねつつ、評価を与えている。

 伝統の10番。レジェンドからの期待。トップ昇格の懸かった1年。様々な要素が集まった2022年だが、大関の視線はさらにその先を見据えている。「目標としてトップ昇格とは言っていますけど、上がるだけでは意味がないと思いますし、(田中)碧さんや(三笘)薫さんのようにフロンターレでレギュラーを掴めば、海外に行くチャンスも広がるので、もちろん凄く大変だとは思うんですけど、フロンターレでトップ昇格して、レギュラーを掴むところを目標にやっていきたいです」。

 ポジティブな自信を纏ったフロンターレの新たな希望。大関友翔は自らの進む道を、自らのエネルギーで力強く切り拓く。

(取材・文 土屋雅史)

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