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貫く意志と周囲への感謝を知るレフティ。川崎F U-18MF川口達也は負けられない“古巣対決”に想いを馳せる

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川崎フロンターレU-18のキレキレ系レフティ、MF川口達也

 人生には大きな決断を下さなくてはいけない時が、必ずある。そして、それを自分の信念で貫いた者には、きっとそこから進んでいく道をはっきりと灯す“光”を見る権利が、与えられるのではないだろうか。優しそうな笑顔の裏に、確固たる意志を携えたこの17歳のように。

「プレミアリーグはよりレベルが上がると思いますし、個人的にはFC東京が古巣なので、そこと成長した姿でバチバチやり合えるのは凄く楽しみにしています。絶対負けられないですよね」。

 必殺一撃の左足を備えた川崎フロンターレU-18(神奈川)のキレキレ系アタッカー。MF川口達也(2年=FC東京U-15深川出身)は自分を見守り続けてくれる多くの人への感謝を胸に、プレミアのステージへ飛び出していく。

「試合前は『獲れればいいな』ぐらいでしたけど、毎試合ゴールは狙っていたので、それが良い形で出たと思います。持ってましたね」と笑う川口が輝いたのは、日産スタジアムで開催された2月の『NEXT GENERATION MATCH』。80分間で唯一生まれたゴールを、得意の左足で叩き出す。

「実はその週の紅白戦で大関(友翔)からのパスがちょっと後ろに詰まってしまったことがあって、『もうちょっと早く出せないか』というような会話をしていたんです。試合では実際に大関から良いボールが来たので、完璧でしたね。入った瞬間、ネットがフワッって揺れたので、凄く気持ち良かったです」。スタンドのフロンターレサポーターへ、自身の存在を鮮やかにアピールしてみせた。

 もともとはアドバンススクールからのFC東京育ち。中学時代もU-15深川でプレーしており、チームには強い愛着を抱いていたが、川崎市出身だったこともあって、高校年代での進路を考えていく中で、フロンターレという選択肢も視野に入ってくる。

「深川にいる時にもフロンターレとは試合をしていましたし、ユースの練習を1回見に行った時に『この人たち凄いな』って結構な衝撃を受けたというか、『ここでやったら楽しいだろうな』と思いましたし、『ここに自分が入ったら特徴を生かせるんじゃないかな』って。シンプルに楽しそうなサッカーをしていたので、それに惹かれました」。

 とはいえ、5年間を過ごしたFC東京への想いが小さいはずがなく、周囲も仲の良いチームメイトばかり。「何回か面談があったんですけど、引き留めてもらいました。FC東京のユースの練習に行った時ももちろん『凄いな』と思いましたし、いろいろなコーチと相談して、正直相当迷いました」。中学生の心は揺れる。

 だが、最後は自分で決断した。「『本当にこれでいいのかな?』ってメチャクチャ迷いましたけど、1回のサッカー人生で後悔したくないと思って、フロンターレでサッカーすることを選びました。大きな決断でしたね」。15歳は地元のクラブで、プロを目指す道に身を投じた。

 左足には絶対的な自信を持っている。「左足のキックの精度で言うと、FKは百発百中ぐらいの自信がありますし、結構点も決めてきているんです」。参考にしているのは、日本サッカー史上でも屈指のレフティだ。

「小学校4年生ぐらいの頃に、県大会の前に中村俊輔選手の動画を見て、毎日練習終わりに公園でボールを蹴ったりしていたら、県の準決勝でFKを決めてハットトリックしたことがあって、そこからずっとキックを磨いてきました。セットプレーは他の選手に蹴らせたくないですね(笑)。右利きの吹田(航晟)も結構上手いので、相談しながらやっているんですけど、本当は全部自分が蹴りたいです」。穏やかな口調とはギャップのある、力強い言葉が頼もしい。

 2022年はU-18で過ごすラストイヤー。これからのキャリアへ繋げるための大事な1年を迎え、強い意気込みを感じさせるフレーズが次々と口を衝く。

「この前トップチームと練習試合をして、できるところとできなかったところがあって、自分の短所は今年1年で埋めつつ、もっと長所を突き抜けるぐらい伸ばしていかないと、トップでは通用しないなと感じました。今年は1年間高いレベルのリーグでやれるので、トップに入るために長所をもっと伸ばしていきたいです。それにプレミアは結果を出し続けていけば代表にも呼ばれるようなリーグだと思いますし、年代別代表入りも個人的には大きな目標にしながら、ゴールやアシストに絡むような決定的な仕事をして、チームの勝利に貢献したいです」。

 貫き続けてきた強い意志と、それを尊重してくれる周囲への感謝を知る男。川口達也が振るう左足からは、今年も目が離せない。

(取材・文 土屋雅史)

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