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『試合終了のホイッスルは、次の試合開始のホイッスル』。長崎総科大附MF竹田天馬は恩師の言葉を胸にピッチを走り続ける

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長崎総合科学大附高を束ねる新キャプテン、MF竹田天馬

 恩師から得たさまざまなものは、自分の中にしっかりと残っている。高校生活最後の1年も、その教えを胸に全力でピッチを走り続けるだけだ。

「どこのチームの選手よりも、小嶺先生から得たものは大きいと思いますし、『小嶺先生がいなくなったから、総附が弱くなった』とは言われたくないので、またプラスアルファの違う魅力も持った、良いチームにしていきたいと思います」

 長崎総合科学大附高(長崎)を束ねる新キャプテン。MF竹田天馬(2年=FC佐伯S-Play Minami出身)はチームのさらなるレベルアップのため、自らの飛躍を誓っている。

 前橋育英高(群馬)、尚志高(福島)、FC東京U-18(東京)と対峙した2022プーマカップ群馬に参加するため、15時間近い時間を掛けてバスで移動してきた長崎総科大附だが、県大会を優勝し、長崎王者として臨むはずだった九州新人大会が中止となったため、これが久々の対外試合だった。

「やっぱり『試合が一番楽しいな』と思いました。九州大会に向けて動き出したところで、大会がなくなったという話を聞いて、最初はみんな落ち込んでいましたけど、このプーマカップやサニックス杯に出られるということで、モチベーションを上げて頑張っていこうと話していました」という竹田も、2日間でA戦、B戦合わせて7試合を戦った中で、まずは試合の楽しさをチームメイトとともに実感した様子。確かな充実感を漂わせる。

 大会2日目の尚志戦でも、竹田のエネルギッシュなプレーは一際目を惹く。「チームを鼓舞することが一番考えていることで、キツい時に走ったり、攻撃面では時間を作ったり、リズムを作ったり、左右に振ったりするのが特徴だと思います」と自ら話すストロングを遺憾なく発揮。プレースキッカーを務めるセットプレーでアシストも記録するなど、中心選手としての実力をきっちりと披露してみせた。

 今では“走れる選手”というイメージも強いが、もともとはその部分に課題を感じていたそうだ。「この高校に来たのは、自分の中学時代のチームから総附に行った人が結果を残していて、お兄ちゃんも総附なんですけど、どこの高校よりも小嶺先生にはサッカー以外のところでも学べると聞きましたし、走れないことが自分の課題だったので、総附に来れば走れるようになるんじゃないかなと思いました」。

 その選択は正しかった。「小嶺先生からも『キツい時に走れるのが一番強い』と言われていたので、そこは1年から練習でやってきました」と竹田。ウィークポイントを克服しようと努力を重ねた結果、それが逆に自らの強みになる。「彼はキャプテンシーもあって、ピッチでもオフのところでも素晴らしいですね。授業態度も素晴らしいです」と定方敏和監督も認める人間性も、その成長の大きな一因となったことも間違いのないところだ。

 1月の高校選手権では、自らの立ち位置も実感できた。「もうちょっと自分ではできるかなと思ったんですけど、県と全国では全然ピッチや会場の雰囲気も違って、自分の強度も全然低かったので、あまり力を発揮できなかったです」。それゆえに再びあの舞台に戻りたいという想いは強くなっている。

「選手権には一番悔いがあるので、今まではあのピッチに立つことが1つの目標でしたけど、今年は先輩たちが乗り越えられなかったベスト8を絶対に達成したいですし、総附の先輩たちの記録でもあるベスト8を超えることだったり、優勝を目標にしたいと思います」。明確な目標を掲げて、新チームを立ち上げている。

 参考にしているのは、Jリーグ王者のレフティだ。「ポジションは違うんですけど、家長(昭博)選手はボールロストが少なくて、時間を作れますし、手の使い方や身体の入れ方も上手いので、使える部分もあるかなと思って見ています」。1年からトレーニングで意識してきたことで、ボールロストの回数も減ってきたとのこと。確かな成長の手応えも感じてきた。

 印象に残っている小嶺忠敏先生の言葉があるという。「県で優勝した時に喜んでいたら、『こんなことで喜んでいる場合ではない』だったり、『今からが勝負だろう』と言われたりしましたし、一番覚えているのは『試合終了のホイッスルは、次の試合開始のホイッスルである』ということです」。

 献身的にピッチを駆け、チームメイトをその背中と声で牽引する絶対的なキャプテン。周囲も一目置くような人間性を兼ね備えた竹田が聞く試合終了のホイッスルは、いつでも次の試合に向けた準備のホイッスルでもある。

(取材・文 土屋雅史)

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