beacon

「今は自分が上手くなりたいという気持ちだけ」。尚志DF市川和弥はポストチェイス・アンリ候補のレフティCB

このエントリーをはてなブックマークに追加

尚志高のレフティセンターバック、DF市川和弥

 最終ラインから得意の左足で打ちこんでいくクサビは、チームの骨格に1本の筋を通していく。1年生ながら高校選手権の登録メンバーに指名されていた実力は、伊達ではない。

「現状はまだレギュラー候補みたいな感じですし、自分はヘディングがまだ弱いと思うので、そこを強化していきたいですし、声を掛けて苦しい時に周りを助けられるようになりたいですね。今は自分が上手くなりたいという気持ちだけです」。

 ひたすらサッカーが上手くなりたいと願うレフティ。令和の怪物チェイス・アンリを生んだ尚志高(福島)に、またもDF市川和弥(1年=ASラランジャ豊川出身)という面白いセンターバックが育ってきている。

 2日目を迎えた2022プーマカップ群馬。1試合目の長崎総合科学大附高(長崎)戦は前半だけの出場となった市川は、2試合目となったFC東京U-18(東京)戦もスタメンでピッチに送り出される。対峙するのはプレミアリーグで戦うチーム。自身の力を測るには格好の相手だ。

「自分は左足に自信を持っていて、プレーの特徴はクサビというところで、そこに取り組めたことは良かったと思うんですけど、対人のところが弱かったので、そこは反省点でした」。後半で連続失点を食らい、結果は0-4の完敗。「後半はちょっとズレが出て対応できなくて、5分間で3失点というところは良くなかったと思います」と市川。フル出場を果たした70分間で、悔しさを突き付けられた。

 とりわけマッチアップすることもあった、フィジカルとテクニックを兼備する相手のストライカーにはハットトリックを許してしまう。「対人では身体で吹き飛ばされるところはなかったので、そこは自信を持って続けていきたいですけど、シュートの振りの速さは感じて、詰めるところの遅さが失点に繋がったので、そこはもっと詰められるように頑張っていきたいです」。この段階で年代トップレベルの力を知れたことを、ポジティブに捉えているようだ。

 同じポジションを務めていた、偉大な先輩の影響はやはり絶大だ。「やっぱりアンリくんは1人で止めてしまったり、中盤に声を掛けて周りを使いながら自分を生かすところが凄かったなと思います。個人的にも『ここは前に行かない方がいい』『こういう時は行った方がいい』みたいに教えてもらいましたし、私生活でも仲良くしてもらった“お兄ちゃん”的存在です」。

 ただ、続けた言葉に強気なメンタルも見え隠れする。「尚志は環境面で恵まれていますし、自分がしっかりやれば成長できる場とは日々思っています。自分の中では高校3年生の頃にアンリくんのように、インターハイや選手権の結果に関係なく注目される選手になりたいと思っています」。掲げた目標も頼もしい。

 憧れている選手を明かす言葉へ、一気に熱量がこもる。「槙野(智章)選手を参考にしています。浦和レッズの頃から良く試合を見ていましたし、活気あるプレーとムードメーカーとしてチームを盛り上げているので、自分もそこは見習っていきたいです」。チームのムードメーカーを自認する市川にとって、その存在は大きな刺激になっているようだ。

 センターバックにはライバルも多い。東北新人大会でも活躍したDF山田一景(2年)やこの日もコンビを組んだDF高瀬大也(1年)と実力者が揃うが、もちろん彼らに負けているつもりは毛頭ない。

「やっぱりアンリくんと(安江海)ラウルくんにはチームをまとめるところだったり、苦しい場面でも個で相手を止めて守るというところは去年で学んだので、それをこれからに生かしていきたいと思います。チームとしてはもちろん全国制覇を目標にしているんですけど、去年はプレミアに上がれなかったので、今年は絶対に上がりたいですし、その中で自分はチームメイトに声を掛け続けて、試合に出たら無失点で勝つことを目標に頑張っていきたいです」。

 いわゆる現代型のレフティセンターバック。成長著しい市川の存在が、さらなる高みを目指すチームを最終ラインから力強く突き上げていく。

(取材・文 土屋雅史)

TOP