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プレミア初挑戦に燃えるチームのキーマン。桐生一FW諏訪晃大はその実力で周囲の評価を覆す

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桐生一高のテクニック系ドリブラー、FW諏訪晃大

 メンバー全員が3年生というチーム構成で掴んだ国内最高峰のステージ。その後を継ぐ自分たちの実力を疑問視する周囲の声は、嫌でも耳に入ってくる。だからこそ、燃えている。その評価を覆すことができるのもまた、自分たちだけなのだから。

「たぶん周りの人から見て、弱いと思われがちかもしれないですけど、プレミアで一戦一戦勝つことによって力を証明できると思いますし、チームの名前も全国に広がっていくはずなので、勝利を一番に考えてやっていきたいです」。

 プレミアリーグ初挑戦のチームを束ねるキャプテン。桐生一高(群馬)のテクニックに自信を持つアタッカー、FW諏訪晃大(2年=COSPAフットボールクラブ出身)は自分とチームの力を証明するための1年間へと突き進む。

『広島の歓喜』は携帯の画面で見つめていた。帝京長岡高(新潟)相手に2点差を引っ繰り返し、4-3というスコアで大逆転勝利を収めた昨年12月のプレミアリーグプレーオフ。「映像で生中継が送られてきて、それを見ていました。先に3点を決められてヤバいかなと思ったんですけど、4点を決めて勝ってしまって、正直画面越しからでも震えましたし、みんな大騒ぎでした」。諏訪はその時を笑顔で振り返る。

 ただ、昇格を勝ち獲った広島の地にいたのは全員が3年生。1,2年生でメンバー入りした者は1人もいなかった。まさにゼロからのスタートだが、逆に選手たちの一体感は日に日に高まっているという。「自分たちで最初に目標を決める時に、もうみんなが一緒の目標を考えていて、思っていることも一緒だったので、その軸は絶対にブレないですし、なおかつ『結果で見返してやろう』とはみんなが考えていると思います」。やるからには、1つでも多く勝つ。そして、その先に広がっているであろう頂上を目指さない理由はない。

 中学時代は兵庫のCOSPAフットボールクラブでプレーしていた諏訪。関西圏のチームからもオファーは届いていたが、遠征で群馬県のチームと対戦した時に、それを見ていた桐生一のスタッフから練習会への参加を打診される。

「行くかどうかかなり迷いましたけど、行ってみたら雰囲気が凄く良かったですし、その時は若月大和さん(現・湘南ベルマーレ)もいたので、『前線の選手の育成がうまいのかな』とも思ったので、行きたいなと感じました」。群馬の地で勝負することを決断した。

 特徴を尋ねると、すぐさま答えが返ってくる。「スピードとテクニックを生かしたドリブルです。スピードに乗った裏抜けだったり、足元でもらった時の1対1の仕掛けが得意です」。参考にしているのは左サイドなら三笘薫で、右サイドなら相馬勇紀とウスマン・デンベレ。挙がった名前から、何となく諏訪自身のプレースタイルもイメージが湧く。

 課題を尋ねても、やはりすぐに明確な回答を口にする。「仕掛けた後のシュートが課題です。自分はプレーに波があって、毎試合ゴールに絡むことだったり、ゴールを決めることはできていないので、常にチャンスメイクできたり、得点できる選手になりたいです」。自己分析はバッチリ。あとはトレーニングでブラッシュアップしていくだけだ。

 プレミアでの対戦を楽しみにしている選手がいるという。「流経柏で小中一緒のチームメイトだった岡本亮太郎がセンターバックで出ていて、マッチアップすることもあるので、そこには絶対負けたくないという気持ちはあります。プレミアでも初戦の相手が流経柏というのはモチベーション的にも上がりますし、そこは結果でこっちの力を見せ付けたいです」。この諏訪と岡本のマッチアップ、注目せざるを得ない。

 未知の舞台には、もちろん不安も抱えている。「チームの総合力というところで、守備面でも攻撃面でももっとレベルを高くしないといけないですよね。今までやってきたチームよりも強い相手のいる、自分たちが見たことのないステージに行くので、今の何倍、何十倍ぐらい上手くならないと通用しないと思います」。それでも、同時に楽しみな気持ちも抑え切れない。

「自分たちがどれだけそういう相手に通用するのかという期待があって、桐生第一自体が行ったことのないリーグに行くわけですし、自分たちも高校最後の年ということで、桐生第一の歴史に名を残せるような結果を出して、チームにも自分にもプラスだったと言えるような年にしたいです」。

 桐生一にとって歴史的な1年を牽引する、“2人制キャプテン”の1人。諏訪のポジティブな自信と大胆なプレーが、チームに強大なパワーを生み出していくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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