beacon

[MOM3773]青森山田FW小湊絆(2年)_「玖生さんの10番」を引き継ぐストライカーは、頼れる仲間との“つながり”でゴールの歓喜を引き寄せる

このエントリーをはてなブックマークに追加

青森山田高の新エース、FW小湊絆

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[3.12 TOKINOSUMIKA CHALLENGE第2節 青森山田高 3-1 東山高]

 注目されることは、嫌いではない。偉大過ぎる“前任者”との比較も大歓迎。同じことはできないが、より勝敗へ直結する役割を担うことに、迷いなんてあるはずもない。

「今年は10番を付けさせてもらうことになって、もちろん玖生さんと比較されるのはわかっています。でも、自分はフォワードをやっていて、自分の背中を全員に見てもらえるので、背中で引っ張れるようなプレーをしたいと思っています」。

 全国三冠を勝ち獲った“次の代”の新エース。青森山田高(青森)のしなやかなストライカー、FW小湊絆(2年=横浜FCジュニアユース出身)は自らが思い描いている“10番像”へと少しでも近付くため、とにかくゴールを奪い続ける。

「11月の新人戦以降では初めての試合です。今年は雪が凄くて、選手権以来フルコートでやっていなかったので、いきなり90分って聞いた時に『え?』って思いました(笑)」。4チームの強豪が集まって開催されたTOKINOSUMIKA CHALLENGE。トレーニングもままならない状況で迎えた、新チームにとっては2022年の初戦。いきなりの“90分間”というレギュレーションに驚いたという小湊だが、フル出場を果たしたその90分間の中で、難敵の東山高(京都)相手に持てる能力を遺憾なく発揮する。

 前半34分。右サイドでMF奈良岡健心(2年)がボールを持つと、一瞬でイメージを共有する。「相手のセンターバックの間にスペースが空いていたので、『背後に流してもらえれば、自分の足の速さなら行けるな』と思って、要求したらポンと裏に抜けたので」、そのままGKとの1対1も確実に状況を見極め、丁寧にボールをゴールネットへ流し込む。

「後ろからスライディングに来る足は見えていたんですけど、そこは気にしないようにして、上手く流し込めました。キーパーの詰め方も上手かったので、ちょっと危なかったです」。確かにGKには当たっていたものの、シュートスピードに執念が乗って奪った得点。この新チームでの2022年ファーストゴールは、やはりストライカーがさらっていく。

 その後は2度のゴールチャンスを逃したものの、後半21分には独力での突破が追加点機を引き寄せる。「相手と相手の間が空いたら『左足でも打とうかな』と思っていたんですけど、なかなか空かなかったので」、エリア内へ切れ込むとマーカーはたまらずファウル。主審はPKを指示する。

 もちろんキッカーは自分で務める。「選手権で玖生さんが決めた時も同じキーパーで、あの時はキックに触られていて結構危なかったので。それも思い出しながら上手く目線で駆け引きして決められました」。方向は読まれたものの、スピードとコースで上回る。意地のドッピエッタ。エースの仕事、完遂。3-1での勝利に結果で貢献した小湊の存在感が、際立った。

 この日は79番を付けていたが、公式戦では“10番”を託されることが決まっている。チームの三冠獲得に大きく貢献した松木玖生というビッグスターの後継者であるという側面は、もちろん意識しないはずがない。

「玖生さんはピッチの中でも外でも堂々としていて、本当にずっと『カッコいいな』と思っていたので、その10番に少しでも近付けるように、真似するというわけではないですけど、自分なりの“10番像”を描きながら、やっていければいいかなと思っています」。玖生さんは、玖生さん。自分は、自分。この1年間で青森山田の10番を、さらに価値のあるものに高めてみせる。

 今年のチームに、“三冠”をピッチで体感した選手は限られている。だからこそ、偉大な先輩たちを間近で見てきた小湊の果たすべき役割は、決して小さくない。「自分が結果を残して、チームを少しでも楽にさせるという部分もそうですけど、『絆がやっているから、自分もやらないとな』と言われるように、ピッチ内外での自分の取り組みや練習からの姿勢も含めて、行動や言動を意識しながらやっていきたいと思います」。

 本人も「メチャメチャ気に入っています」と話すのは、『絆=つな』と読む名前。その由来も明かしてくれた。「『人と人とのつながりを大切にしてほしい』という意味での“つな”で、そのつながりの中で、絆が生まれるという意味で付けられたと聞きました」。

 自分が点を獲るという決意は揺るがないが、必要以上に気負うつもりもない。頼れる仲間との“つながり”が、自分もチームもきっと高みへと導いてくれる。小湊がゴールという成果で生み出す仲間との歓喜が増えれば増えるほど、2022年の青森山田もそのたびに強さを纏っていくことに疑いの余地はない。

(取材・文 土屋雅史)

TOP