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新生・高川学園が先輩から学んだことを表現し、中国新人制覇。今後は練習で昨年以上の雰囲気作りへ

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高川学園高が3度目の中国新人戦制覇

[3.14 中国高校新人大会決勝 高川学園高 2-1 米子北高]

 第14回中国高校新人大会決勝(広島)が14日に行われ、高川学園高(山口)が“3連覇”を果たした。高川学園は決勝で米子北高(鳥取)と対戦。後半アディショナルタイムにMF井上陸奥(2年)が決勝点を決め、19、21年大会に続き(20年大会は中止)、3回目の優勝を成し遂げている。

 今冬の選手権3位の高川学園とインターハイ準優勝校・米子北によるファイナル。高川学園は前からのプレッシング鋭い米子北の前になかなかパスを繋げず、シュート数は3-10と劣勢だった。

 それでも、江本孝監督は「粘り強さとか最後の局面のところは、この4試合で凄く成長してくれているのかなと思いますし、選手権のあの経験があったから、プレーした子もしていない子もイメージとしてそういう戦いをすればいいんだ、と慌てていない部分があった」と頷く。

 攻撃力をウリにしていた昨年のチームは、苦しい時間帯でも仲間のために全員で踏ん張り、1チャンスをモノにする逞しさも備えていた。それをピッチで、スタンドで感じ取った新チームの選手たちが、粘り強さや最後の局面での我慢強さを発揮。立正大淞南高(島根)、岡山学芸館高(岡山)、米子北というプリンスリーグ中国勢3校と八頭高(鳥取)を破り、頂点に立った。

 前半4分、高川学園は左CKを獲得すると、円陣を組んだ5選手が手を繋いだまま回転して相手のマークを外す“トルメンタ”を披露。その後は注目の1年生エースFW山本吟侍の右足FKや左の突破口、井上のドリブルなどから先制点を目指した。

 一方の米子北は、182cmFW山田楓元(2年)と176cmFW小橋川海斗(2年)へ次々とロングボールを入れ、相手選手やルーズボールへの鋭いアプローチによって、自分たちのペースへ引き込もうとする。そして、左サイドの10番MF中井唯斗(2年)やSB野田徹生主将(2年)がゴール前のシーンを作り出していた。

 それに対して高川学園は、この日も予測力と反応の速さを発揮する岡楓太(2年)と、前半終了間際に見事なタックルを決めた中島颯太(2年)の両CBやMF山本陽主将(2年)中心に無失点で前半の35分間を終了。すると、後半開始30秒過ぎ、セカンドボールを拾った井上のスルーパスでFW梅田彪翔(2年)が抜け出し、右足シュートで先制に成功した。

 米子北は直後の選手交代に伴い、ボランチで先発していたU-17日本高校選抜の福田秀人(2年)を前線へ。その福田の足裏パスから山田が左足を振り抜き、左サイドで主導権を握る中井がマークを外してボールを繋ぐ。また、準決勝2発の小橋川が果敢にシュートを連発。そして17分、野田の左FKをGK前に飛び込んだ小橋川が頭で合わせて同点に追い付いた。

 追い付いた米子北が攻勢に試合を進めたが、中村真吾監督はこの試合について「(ハイプレス、ブロックを敷く部分で)チームとして奪っていなかったのが気になった」と指摘。米子北は今大会が、新チームにとって初めての対外試合だ。奪ったボールを素早く縦、サイドにつける攻撃についても、徹底できていない部分があった。

 逆に高川学園は後半、最前線の山田吟が胸トラップでボールを収めるなど健闘。なかなかシュートまで持ち込むことはできなかったが、それでも岡や中島が後方からチームを鼓舞する中、集中力を切らさずに守り続けた。

 そして後半35+2分、右サイドでボールを拾ったSB藤井蒼斗(1年)が、ベンチの指示通りに落ち着いてグラウンダーのパスを山本吟へ通す。前を向いた山本吟のスルーパスで井上が抜け出し、GKとの1対1から右足シュートを右隅へ突き刺した。

 先制点と同じ形で決勝点。2-1で勝った高川学園の江本監督は試合直後、「この結果に満足することなく、引き締めていくこと」を選手たちに求めたという。「言ったことを素直にどんどん吸収してくれる」(江本監督)世代に、この日課題となったプレスに怯まず繋ぐことや、良かった部分もレベルアップを求めていく。

 1年生ながら選手権予選決勝で先発出場している右SB藤井蒼斗(1年)は、「今回は波の乗り方もあったし、気合というか気持ちで勝てた部分もあるので、実力でしっかりゲームを運べて勝てるようなチームになったら良いなと思います。練習の雰囲気とか去年に比べて全然なので。練習が去年の雰囲気を勝ったら自然と結果も伴ってくると思います」と、練習で昨年以上の雰囲気を作り出すことを掲げる。
 
 まずは、全国8強に入る自力をつけること。そして、昨年以上の基準を持つチームに成長して先輩超えにチャレンジする。新チーム初の公式戦は優勝。県新人戦が中止となり、自分たちがどのくらいできるか分からないまま臨んだ大会で最高の結果を得ることができた。江本監督は「(決勝まで4試合できたことは)財産ですね」と語り、梅田は「思っていた以上にはやれると思いましたし、これからももっと強くなって選手権の舞台で去年の先輩方を超えられるように頑張っていきたい」と意気込んだ。先輩たちに比べて、「力が無い」と自認。浮かれることなく、練習の雰囲気から向上させて「己に勝つ」ことを目指す。

(取材・文 吉田太郎)

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