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[イギョラ杯]静かにたぎらせる熱き情熱の炎。日大藤沢DFアッパ勇輝が携える向上心と成長欲

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日大藤沢高の情熱系ファイター、DFアッパ勇輝

[3.19 イギョラ杯 成立学園高 2-1 日大藤沢高 東京朝鮮高G]

 たとえるなら常に静かな炎をたぎらせているイメージだろうか。ただ、ひとたびスイッチが入ると、その炎を業火に変え、相手を飲み込むだけの迫力をプレーに反映させる力を持っている。

「自分は去年から試合にも出ていますし、代表のようないろいろな経験もさせてもらっていて、そういう面で自分がもっと突き抜けて引っ張れば他の選手も付いてきてくれると思うので、もっともっと守備でも攻撃でも自分が先頭を切って、チームを引っ張っていけたらなと思います」。

 年代別代表も経験しているファイター系センターバック。DFアッパ勇輝(2年=SCH FC出身)のみなぎる闘志が、日大藤沢高(神奈川)にさらなる活力を生み出していく。

 思わずスタンドがどよめいた。成立学園高(東京)と対峙した大会初戦。危機を察知し、CBの位置から右サイドまで飛び出していったアッパは、相手のコントロールが乱れた瞬間を見逃さず、ほとんど地面スレスレのボールに頭から突っ込み、ピンチを逞しく回避する。

「ああいうプレーが自分は得意なので。『足で行ったらファウルを取られるかな』と思いましたし、頭なら絶対にファウルを取られないと考えられたので、頭で行きました」。観衆も驚くファイティングスピリットと、瞬時に頭で行くことが最適だと冷静に思考できる判断力に、ディフェンダーとしての確かな資質を感じさせる。

 ただ、試合自体は終盤に勝ち越しゴールを許し、1-2で敗戦。「個人のパフォーマンスとしては守備では負けたりするシーンもなくて、良い感じだったんですけど、ビルドアップ面ではもっと積極的に縦パスを狙って、攻撃を活性化させられたら良かったなと。もうちょっと自信を持ってプレーできたら良かったかなと思います」と反省点も口に。とりわけビルドアップは自身の課題だと捉えているようだ。

 昨年4月にはU-17日本代表候補合宿に参加。本人も驚く招集だったが、4日間で得た刺激はとにかく大きかった。「プレースピードがもう全然違っていて、判断のスピードにも刺激を受けましたし、普通にキックの技術もまだまだ足りないと思いました。でも、守備では通用したところもあったので、そこは自信を持ってもっと磨きを掛けられたらなと感じました」。

 特に印象に残っているのは、既にJリーグデビューも果たしている同い年のストライカーだったという。「内藤大和選手(ヴァンフォーレ甲府)と対峙した時に、身体が強くて、全然前に入れないですし、ボールを収められて『やりづらかったな』という印象が強いです」。

 また、同じポジションでは今年からプロの道へと足を踏み入れた1つ上の“先輩”のプレーから、小さくないヒントを得た。「自分はそこまでビルドアップが得意ではないので、杉田隼選手(横浜FC)はビルドアップが上手くて、いろいろ考えながらプレーしていて、凄く参考になりました」。一度体感したレベルを再び味わうため、自分自身に対するハードルももちろん高めに設定している。

「代表のような経験は滅多にできないですし、チームではまだ自分しかそういう経験をしていないので、“基準”を自分でもっと上げて、チームを引っ張っていけたらなと思います。自分のハードルが上がっていることはちょっと感じますけど、見られるということはアピールもしやすくなるはずなので、そういうところでどんどんアピールしていきたいですね」。上へ、上へ。視線も高い位置を見据えている。

「身長はそんなに高くないですけど、ヘディングには自信があって、シュートブロックとかスライディングとか、身体を張ったプレーが自分は得意なので、そういう熱いプレーを見せれば、味方も熱くなると思いますし、そういう姿勢で引っ張っていけたらなと思います」。熱さ百点満点の自己分析。その強みをよりブラッシュアップしつつ、臨む高校最後の1年。掲げる目標も明確だ。

「去年はケガをしていて、選手権も予選からまったく出られなくて、悔しい想いをしたので、インターハイでも選手権でも絶対に全国に出て、全国制覇をするためにもっと自分が成長して、チームを引っ張っていけたらなと考えています。個人的にも少しは目立つ存在になったことで、アピールするチャンスも増えて、プロや大学などいろいろなチャンスや可能性はあると思うので、もっともっと目立って、高いレベルでサッカーをやれたらなと思います」。

 情熱の炎は、自分が絶やさない限り燃え続ける。恐れを知らないファイター。アッパの携えた向上心と成長欲に、まだまだとどまるところを見せる気配はない。

(取材・文 土屋雅史)

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