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[イギョラ杯]伝統の7番を継承するニューリーダー。京都U-18MF平賀大空は「サンガの歴史に残る1年」を期す

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京都サンガF.C.U-18の「7番でキャプテン」、MF平賀大空

[3.19 イギョラ杯 京都U-18 5-0 東京朝鮮高 東京朝鮮高G]

 チームが育んできた伝統はこの男が引き継いだ。その番号も、その腕章も、重みは誰よりも十分に理解している。自分がやる。誰よりもやる。決意は、揺るがない。

「今年は自分が中心になってやらなくてはいけないと思っていますし、どんな時も自分だけは心が折れてはいけないので、みんなが僕のことを見て、やる気を出してやってくれればいいかなと思います」。

 神戸から古都へと勝負の場を求めて3年目。京都サンガF.C.U-18(京都)の新キャプテン。FW平賀大空(2年=神戸FCジュニアユース出身)はさらに高いところまで飛び立つため、自身とグループの成長を誓っている。

 11番を託されて挑んだ2021年シーズン。サンガ在籍2年目にして初めて迎えたプレミアリーグで開幕スタメンを掴むと、以降も定位置を確保。スピード感あふれるプレーは、チームに大きな推進力をもたらしていく。

 初ゴールが生まれたのは開幕から5試合目となった、ホームの名古屋グランパスU-18(愛知)戦。1点を先制された前半39分。後方からのフィードに絶妙のラインブレイクで抜け出すと、角度のない位置から右足一閃。ボールはサイドネットへ鋭く突き刺さる。右手で力強くガッツポーズを作った平賀。そのスピードと思い切りの良さが印象に残った。

 だが、チームはなかなか上昇することができず、結果的にリーグ創設の2011年から戦い続けてきたプレミアの舞台から降格してしまう。大きな覚悟を持って臨むことになる2022年だったが、平賀は新チーム立ち上げの直後に負傷。もどかしい想いを抱えながら、日々を過ごしていた。

 イギョラ杯初日。京都U-18にとってのオープニングマッチとなった東京朝鮮高(東京)戦も、平賀はベンチスタート。まずはチームメイトの姿をピッチの外から見つめることになる。試合はいきなり開始2分にセットプレーからDF斎藤大雅(2年)のヘディングを、FW島龍之介(2年)がコースを変えて先制すると、以降もペースを握ったままに1-0で後半へと折り返す。

 ハーフタイムが明けると、ピッチサイドにキャプテンマークを巻いた7番が現れる。実に2か月ぶりの実戦。とにかく試合ができることが楽しかった上に、試合終了間際にはチーム5点目となる豪快なゴールを叩き込み、復帰戦を自らの結果で祝ってみせる。

「体力的に動けなくて、納得の行くパフォーマンスはできなかったですけど、復帰の試合にしてはそんなに悪くなかったと思っています。復帰後の初めてのゴールだったので、嬉しかったですね」。浮かんだ笑顔に、確かな充実感が滲んだ。

 キャプテンとしても、チームのまとまりには手応えを感じているようだ。「今年からキャプテンを任されて、チームを引っ張っていく立場になったので、少し不安もあったんですけど、チームメイトも『みんなでやっていこうよ』みたいな感じなので、引っ張りやすいですね。みんなで付いてきてくれる雰囲気なので、今年のチームも凄く仲が良いですし、覇気もかなり出ていて、今日の試合は凄く良かったと思います」。この2年間で苦楽をともにしてきた仲間への信頼も厚い。

 江川慶城。川崎颯太。中野桂太遠山悠希。近年の京都U-18は、“7番”がキャプテンを務めている。今年の平賀も“7番”を背負っているが、ある理由からもともと好きな番号だったという。「もともと7番が好きなんです。ベッカムが好きなので、中学校の時から7番を付けていて、『高校でも付けたいな』と思っていたので、希望して付けることになりました」。伝統を自ら引き受け、今年のチームを牽引する覚悟を定めた。

 今シーズンの目標を問われると、淀みない答えがすぐに帰ってくる。「自分としてはトップチーム昇格が一番の目標で、チームとしては『歴史に残る1年にしたい』と思っています。今年はプリンスリーグを戦うということで、1年で上げるのは凄く難しいと思うんですけど、1年でプレミアに上げて、クラブユースも当然優勝を狙っているので、2つのタイトルを獲りたいですね」。

 伝統の『7番でキャプテン』を継承するニューリーダー。平賀の発するポジティブな覇気は、チームを約束の場所へと帰還させるための大きなエネルギーに、必ずなるはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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